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String link  作者: 初瀬姫
String link・Ⅵ
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殺人事件の捜査中、殺人事件? が起こったお屋敷。


「で、あたちに何かようか……」

「見てよ見てよ、レンッ。〝絵〟が動いて喋ってるよっ」

 見てるよ。見てるからわかるよ。だからテンション高くなるな。

「すごいなぁ。絵が動いて喋るなんて。どういう仕掛けなんだろう?」

 今日日きょうび、アニメーションというものがある。そう珍しくないかと……、全然すごくないな。

「ねぇ? キミも幽霊なのっ?」

「――……」

「幽霊?」

「あたち、あなたきやい」

「え?」

「――……」

 ドリアングレイの少女さんは、澄ました表情を浮かべて姉貴のことを冷たい視線で流し見ている。

「え? え? え?」

「――……」

「ボク?」

 耳遠いの? 面と向かって言われたよ。ドリアングレイの少女さんとやらは、姉貴のことが嫌いなんだとさ。

「い~~っだっ」

「なっ、何だよ、その態度っ」

「ふんっ、なのよさ」

「感じワルッ」

 ケンカすんなよ。するなら俺がこの場を離れて、二人っきりになってから存分にやってくれ。

「おにぃちゃん、あたちに何かごよお?」

 とても純真無垢な笑みを浮かべるドリアングレイの少女。お前、腹黒い感じがする。

「何だい、キミッ。うちのレンはキミのような得体の知れないにご用なんて無いよっ」

 まあ、腹黒かろうが関係ないか。聞くもん訊いてさっさと次だ。

「二十四年前の未解決事件の資料を探しているんだ。どこにあるか知らない?」

「レンッ!?」

「ん? 何?」

 今、このドリアングレイの少女と話してんだけど?

「キミがこんな得体の知れないと話ちゃダメだっ」

「――……。で、キミ、何か知ってる?」

「レンッ!? 話ちゃダメだって言っただろっ!?」

「――……。知っていたら教えてほしいんだけど?」

「得体が知れないって言っただろっ、レンッ」

 どっちもどっちだけど、得体が知れないという点なら俺にとってはお前だな。

 幽霊とか物の怪の類=はた迷惑。ドリアングレイの少女=情報筋からすると難儀な奴。得体の知れない=姉貴。俺の中の方程式ではこう結論が導かれる。

「すまん、姉貴」

「ボクの言うことを聞いてくれるんだね」

「ちょっと向こう行っててくれない?」

 もしかしたら怖い思いするかもしれないから、トイレにでも行って出すもん出して来たらいい。

「ピンチになったら悲鳴を上げて。間に合ったら助けるから」

「レンッ!?」

「それか、ちょっと話する間は黙るか。どっち?」

 ちゃっちゃと聞きたいこと訊いて相手しなければ早いんだよ。

「ぐぬぬぬ」

 ぐぬぬぬ、じゃねぇよ。どんなけ張り合おうとしてんだよ。そもそもはお前がドリアングレイの少女の話を遮ったのが発端なんだから。

「もう好きにしなよっ」

「あなたなんかに言われなくたって、あたちはおにぃちゃんと好きにするわよさ」

「あのねっ。レンのことお兄ちゃんなんて馴れ馴れしく呼ぶなよっ。ボクの弟なんだぞっ」

「あたちがどう呼ぼうとあたちの勝手なのよさ」

「そんな勝手はボクが許さないぞっ」

「あなたなんかの許可なんか知らないなのよさ。べーっだ」

「こんのぉっ! もう怒ったぞっ!」

「あなたが怒ったって怖くないのよさ」

 ……第三者目線で眺めていると、絵にケンカ売ってる相当痛い姉貴やつにしか見えん。何だろう……とても他人になりたい。

「てか、そろそろやめてくれるかな?」

 話が進まない。ゲームも進まない。序盤の序盤――イベントは勝手に起こるが――こんなこっちゃゲームクリアが程遠いわ。

「だって、レン。このが」

「やめなさい。いい加減にしないと怒るよ?」

「…………はい」

 渋々としおらしくする姉貴。納得していない、といった様子だ。いちいち真に受けて相手せんでよろしいわ。

「で、話をまた戻しますが、知っていたら教えてくれるかな?」

「どうしようかちら。タダじゃイヤなのよさ」

 情報筋通り難儀そうな奴っぽいな。

「どうしたら教えてくれる?」

「あたちと遊んでほしいのよさ」

 まーた時間を取られそうなこと言いよる。

「かくれんぼ。あたちを見つけられたら考えてもいいかちら」

 あなた絵でしょ。どうやってやんの?

 するとドリアングレイの少女さんとやらが絵か消えた。瞬間移動?

「このお屋敷のいたるところに白い絵があるのよさ。あたちはその白い絵を移動するのよさ」

 等間隔にある白い絵――さっきまでドリアングレイの少女がいた白い絵の隣の絵に、ドリアングレイの少女が画かれていた。

「じゃ、見つけに来てよのさあああああぁぁぁぁぁ……」

 ……はぁ?

 こだましながら声が段々と小さくなっていく。ドリアングレイの少女が俺たちから遠く離れながら絵を移動していったようだ。

 取り残された俺たちの周りは嵐以外の音が無くなる。

 待てい。これ、永久に見つけられないパターンだろ。絵の中を移動するとか、かくれんぼに関して言えばチートすぎ。近づけば自由に遠くへ移動できるなんてよ。

「相も変わらず無茶であります、ドリアングレイの少女は」

「難儀っすよね」

「わたしやわたしには関係ないわね」

 おい、鳥。こんがり丸焼きにされてぇか?

「お客様、どうするでありますか?」

「ハッキリ言うっすが、ドリアングレイの少女とかくれんぼして見つけれた者はいないっす」

 ですよねー。

「さて、警備室はどっちへ行けばいいですか?」

「「え?」」

 え? じゃありません。調理場の隣しか聞いていないの、俺。どう行けばいいか教えてもらっていない。

「レン、あの娘を見つけないの?」

「あいつ、〝知ってる〟とは言ってない。〝教える〟ともな」

「たしかに」

「全員とは言わないけど、ある程度訊いた後で見つければいい」

 情報が集まらなかったの話だけどね。そもそもチートちゃんを見つけようなんてめんどくさいし。

「なるほど」

 もうちっと頭を使いなさいな、姉貴。

「さあ、教えてください、ワンワン隊長」

「このまま廊下をまっすぐ突き当たりを曲がればすぐそこでありあます」

「ありがとう。見回り頑張って」

「ご健闘を祈るであります」

「祈るっす」

「まあ、頑張りなさいな」

 お前はスーパーの精肉コーナーに陳列されないよう、もしくは晩御飯の一皿にならないように頑張れ。

 で、親切な犬と猿――鳥? えっとそんな奴はいない――とその場で別れる。

「行くか、姉貴」

「うん」

 そう言って警備室へ歩き出すと、

「もうー。ちゃんってやってなのよさ、おにぃちゃん」

 あ、ドリアングレイの少女。

「全部聞いていたのよさ」

「あ、そう」

 わざわざ向こうからやってくるんだな。遭遇したくないのに、ホントこのお屋敷は何もしなくてもイベント発生するね。

「あたちと遊んでくれるんでしょ」

「――……」

「約束守ってくれなきゃダメなのよさ」

「――……」

「何言ってるんだい。レンは約束するなんて言ってないぞ」

 うん、言ってない。けど……。

「うるちゃいわね。あなたには関係のないことかちら」

「何をっ、って、レン?」

 姉貴が話しをややこしくしそうなので止める。けど、あのさ、ドリアングレイの少女さん。

「ちょっと一つ言っていい?」

「何かちら?」

「ドリアングレイの少女、見っけ」

「はうっ!? なのよさっ」

「レン、頭良い」

 いや、かくれんぼなのにわざわざ出向いてくるなんてアホだろ。

「ひ、卑怯なのよさっ」

 何を言い出すんだね、この娘さんは。

「卑怯なんかじゃないよ。キミが勝手に来たんだから。さあ、教えてもらおうか? キミが知っていればの話だけど」

「ううぅ~~~~っ」

 ドリアングレイの少女が悔しそうな表情を浮かべた。

 有利になると途端に強気に出る姉貴。俺は何もやってないけど、お前も何もやっていない。

「ぐわあぁあぁぁぁぁぁぁあっ!?」

 何? 唐突な叫びが廊下の先から聞こえた。今度はクマか? それともワニか? ともあれろくなイベントじゃなさそうだ。

「大変!? 〝げんさんが死んだのよさ〟!?」

 そう言ったドリアングレイの少女は絵から消える。

 はあ? 死んだ? そもそも誰よ、源さんって?

「ど、どうする、レン」

「行くか」

「えぇぇ? 本気?」

「いや、行き先で悲鳴だもん。仕方ないじゃん」

 俺たちが行こうとしていた警備室の方向で悲鳴。回避できないイベントだと俺は思っているよ、もう。

 ――渋々と姉貴はコクリと頷く。そして俺たちは走って廊下を進んだ。

 廊下の先の突き当たりを左に曲がり、入り口先から見えた厨房の調理室とその隣である警備室を通り超えると、人? だかりと、赤いペンキをぶちまけたように飛び散った赤い液体が廊下に広がっていた。

「血……血だよね、これ……」

 姉貴が生臭い臭いに顔をしかめながら恐怖に慄く。

 ――……。

 先ほど出会ったワンワン隊長たちと色は違えど同じ制服を着たねずみ、猪、蜥蜴とかげ、蛇、羊、馬、虎、牛、うさぎと、服は見えるのに素肌が見えない透明人間が数人。

 その人? たちが囲む中心に、長いコック帽を被り、引き裂かれて真っ赤な血に染まった料理人服を身に纏った人の死体っぽいモノ。透明人間だから誰が誰だかわかんない。

「料理長!?」

「しっかりしてください、料理長!?」

「死んじまうなんてダメですよ、料理長!?」

「まだ下ごしらえの真っ最中ですよ!?」

 ――……。

 短いコック帽を被った数人の透明人間料理人が叫んでいる。

「みなさん、死体に近寄らないで」

「近づいたらダメですよ」

 動物の警備隊が現場に近づかないように周りに言い聞かせた。

「何事?」

「あら、源さん?」

「死んだと思われる」

「えー!? 今日の晩御飯どうするのー!?」

 四人のメイドも駆けつけた。

「どうやら〝殺された〟ようなんだな」

 黒い軍服制服の牛が黒いメイド、もといトモミさんに答える。

「そう。殺人事件ね」

 と、トモミは神妙に呟く。透明人間以外の周りの者たちの表情が強張った。

 いやいや、おかしい。ツッコミ待ちなの、キミら?

 都合よく雷が落ち、窓がピカピカと光る。不自然な演出、と思わせるような殺人現場? で、俺は下らないことで頭を悩ませる破目になった。


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