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~さぼてん~

今日もいつもの帰り道。

友達と別れてあの角を曲がる。

道路の向こう側に見える。

たくさんの花が店頭に並ぶ花屋。

その中に一際輝く

僕の大好きな女性。


嫌なことがあってイライラしていた。

あの日も今日と同じ

この道を歩いていた。

ふと顔を上げると

花に話しかけ

にっこりと微笑む彼女が見えた。

僕はその姿に見入ってしまった。

気がつくとイライラなんか

なくなってた。


僕より多分5歳位年上の彼女。

でも年上なんか感じさせない

可愛らしい笑顔。


僕は彼女に近づきたくて

母親の誕生日にと

あの花屋へ行く。

店に近づくたびに

胸の鼓動が激しくなる。

外から店の中を覗くと

彼女が僕に気がついて

あの笑顔で挨拶をした。

僕は母親へのプレゼントだと言うと

彼女は『予算は?』と尋ねた。

正直僕の財布には100円玉が5枚。

無理ですね。

そう言った僕に彼女はまた微笑む。

小さなハート型のサボテンが植えてある鉢を

店の奥から持ってきて

ピンクのリボンで飾る。

『素敵なプレゼントよ』

そう言って僕の手から100円をつまんで

鉢植えを僕の掌に乗せた。

母親の誕生日にと買ったはずなのに

何だか彼女から僕が貰ったみたいで

嬉しかった。

やっぱり僕のサボテンにしよう。

100円のサボテンが

何物にも変えられない物になる。

僕は彼女からそのことを教わった。


最近あの花屋に

彼女の姿がない。

やめてしまったんだろうか。


今日は卒業式。

僕は勇気をふりしぼり

花屋へ行くことにした。

店に入ると

年配のおばさんが一人

花束を作っていた。

僕はおばさんに彼女のことを尋ねた。


「彼女は今、新婚旅行中だよ。」


彼女は結婚してしまった。

彼女は他の男性のものになってしまった。

僕はまだ彼女に何もしていないのに。

そんな時間さえ僕には与えられなかった。

今の僕には何も出来ないけど。

僕はおばさんにサボテンを頼んだ。

ピンクのリボンで飾ってもらった。

100円をおばさんに渡し、

彼女に渡してもらうよう頼んだ。

僕からの結婚のお祝い。


店を出て家に帰ると

すぐに自分の部屋へ駆け上がった。

窓際においてある

あの日のサボテン。

苦しくて辛くて。

そんな気持ちが

どんどん込み上げてくる。

僕はサボテンを手にとって

歯を食いしばって泣いた。


でもこれが恋。

彼女への恋心は色んなことを

僕に教えてくれた。


僕はサボテンに向かって言った。


「結婚おめでとう。お幸せに・・・。」






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