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~100点の答案用紙~

俺のとりえは明朗快活な性格と

数学の知識。

職業は高校の数学教師。

人生の目標は

くいのないように生きること。


産休に入る教師の代わりに

担当クラスが一つ増えた。

2年生のクラスだった。

俺のフリーな時間が一つ減る。

かなり憂鬱だ。

扉を開けて教卓に立ち

とりあえず全員を見渡す。

一人の女子生徒がじっと俺を見ている。

授業中ずっと。

次の日も。

次の日も。

いつの間にか俺は

授業のない日も

彼女の姿を探していた。


生徒たちが3年生になった。

彼女を理数系のクラスで見つけた。

もちろん教えるのは俺。

窓際の一番前の席に

彼女が座っている。

太陽の光が彼女全体を照らし

一層俺の意識を惹きつけた。

彼女の存在が

俺の中で増幅する。

しかし心のどこかで抑制をする。

俺と彼女は

教師と生徒なのだから。


3年生が卒業するまで

あと3ヶ月。

今日は彼女のクラスで模試試験。

お堅い試験ではないからと説明をし

問題を解かせる。

生徒の様子を見て回る振りをして

彼女のいる窓際に立つ。

太陽が眩しくて

窓からの風はこんなに気持ちいいのに

俺の心の中は嵐のような海風が騒ぎ立てる。

不意に彼女が顔を上げて言った。

「このテストで100点取ったらデートして」

嬉しさの余りに

彼女の言葉に息が詰まった。

彼女の言葉はきっと冗談。

そんなこと分かっている。

「100点とれたらな」

俺も冗談げに言った。

心の中は本気一色。

胸が高鳴る彼女の答案用紙。

結果は100点。

彼女とデートをする場面を想像した。

これくらいは許してくれるだろう?


卒業式まであと3日。

彼女のクラスで授業をすることはもうない。

授業だけが彼女との接点。

彼女の残りの高校生活に

もう

俺が関わることはない。

教師と生徒。

愛してはいけない人を愛してしまったなんて

悲劇のヒロインになるつもりなどないけれど

教師と生徒の恋がタブーなんて

一体誰が決めたんだ?

100点の彼女の答案用紙を前に

胸が張り裂けそうで

今すぐにでも彼女に会いに

あの教室へ行きたい。


今日は卒業式。

俺は精一杯考えた。

人生の目標は

くいのないように生きること。

結果がどうであれ

まわりから非難されても

くいの残ることはしたくない。

卒業式が終わり

俺は校門を出た。

この道は彼女の帰り道。

待っていれば彼女はここを通るはず。

1時間くらい待っただろうか。

もしかしたら今日はこの道を通らないのか。

心は焦る。

学校のほうをもう一度見る。

遠くから愛する女性が歩いてくるのが見える。

彼女も俺に気づいた。

近くまできた彼女は俺に

ありがとうございました。

そう言って頭を下げた。

俺はポケットから

彼女の100点の答案用紙を出し

彼女の前にそれを差し出した。


「100点取ったらデートする話、まだ有効かな?」


真面目な顔で

俺は言った。

泣いた顔で

彼女は笑った。


彼女は言った。

でも私たちは教師と生徒なのだと。


俺は少し照れたような真面目な顔で言った。

「今日、校門を出たら君はもう生徒じゃないんだよ。」


彼女は泣いた。

泣いてはっきりと言った。


「私も先生がずっと好きでした。」


今この瞬間から

君は俺の愛する

俺の彼女。





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