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~数学を好きになった訳~

今日も軽快な音が教卓から鳴り響く。

黒板には沢山の数式。

窓側の一番前の席は

日差しが良く当たって

斜め前に立っているあの人が

更に輝いて見える。


白いYシャツの袖を少しまくり

そこからのぞく太く長い指が

とても魅力的。

叶わぬ恋。

手の届かない彼。

私と彼は

生徒と教師。


彼との出会いは

2年前の夏。

産休に入る数学教師の代理で

彼がクラスにやってきた。

少したれ目で細長い二重の目。

すらっとした立ち姿。

あどけない笑い顔。

すべてが私の中に

溶け込んできた。


それから私は数学を

一生懸命勉強した。

3年生になって

理数系を選択した。

彼の中に私の存在を刻みたかった。

少しでも他の生徒より

数学のできる生徒としてでもいい。

どんな形でもいいから

彼に近づきたい。


卒業式まであと3ヵ月。

授業中、問題を解いてると

彼が窓際にやってきて

窓の外をじっと見ていた。

私は彼に言った。

「このテストで100点取ったらデートして」

口から出るのは冗談交じりの言葉。

心の中は本気一色。

「100点とれたらな」

彼も冗談交じりの言葉。

きっと心の中も冗談一色。

結果は100点。

でも100点と聞いて

何だか少し寂しくなった。

あんなこと

言わなければよかったって。

叶わぬ恋だと思い知らされたようで

胸が苦しい。


卒業式まであと3日。

ほとんど授業がない毎日。

彼がこの教室に来ることはもうない。

きっと彼と話すことももうない。

教師と生徒。

私はなんて無謀な恋をしてしまったんだろう。

結果なんて初めから分かっていたのに。


今日は卒業式。

みんなと写真をとったり

最後の時間を教室で過ごす。

みんなに「元気でねっ」て

そう言って

一人で教室を出た。

靴を履き替えて校門を出た。

少し先に彼がいるのが見えた。

私は嬉しくて哀しくなる。

これで本当に最後なんだ。

彼の近くまで来て

ありがとうございました。

そう言って頭を下げた。

顔を上げた私の前に

彼は1枚の紙を出した。

100点の私の答案用紙。


「100点取ったらデートする話、まだ有効かな?」


真面目な顔で

彼は言った。

泣いた顔で

私は笑った。


今日は卒業式。

私と彼は生徒と教師。


彼は少し照れたような真面目な顔で言った。


「今日、校門を出たら君はもう生徒じゃないんだよ。」


今、この瞬間から

教師と生徒は

彼氏と彼女。

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