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もしも学校給食栄養士が異世界に転生したら〜剣も魔法もランクDけど、最強チート献立で国家再生〜  作者: studio tomo


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8話 後編 呪われた少女と、衛生管理

「……料理を作ろう」


シーナがそう口にしたとき、

それは決意というより、

呼吸のように自然な言葉だった。


考えるより先に、体が動く。

今、この村でできること。

今、この世界で、確実に人を守れる方法。


買い出しには、ふーぴょんとラピが同行した。

向かったのは、市場だけではない。

村外れの、ヤシの木が群生する一角だった。


「この実から、油が取れる」

「きっと油があれば、せっけんが作れる」


ラピは、不思議そうに顔で私を見た

「せっけん?」

「そう、せっけんはね。汚れや菌を落とすものだよ。」

時間があまりない早速材料を集め作業に移らないと


「今日は、すぐ使える液状にしよう」


戻るとすぐ、作業に取りかかる。

スマホで調べるわけにはいかない

学生の時、卒論でやった内容だから

何度も試している。

勉強していてよかった。

きっと大丈夫。自分に言い聞かせる。


ヤシの実から採った油を鍋に入れる。


ふーぴょんが

「これうまいの?」


これは料理じゃないの科学だよ

「かがく??」


適量の灰汁水。

木灰を水に溶かし、上澄みだけを使う。

「これは、強すぎると危ない」

「薄く、少しずつ」


シーナは慎重に混ぜた。

火は弱く。沸かさない。

ただ、温める。

油が白く濁り、

ゆっくりと、とろみを帯びていく。


「うまくできたかな?」

「香草は入れずに、無香料にしよう」

「食器にも、顔にも、使えるようにする」


鍋から下ろし、粗熱を取る。

木匙でかき混ぜながら、

ラピにも一緒にやってもらった。


「ぬるぬるするけど……」

「流すと、すっとする」


「それで、いいよ」

せっけんを冷まして木の器に移す。

余った分は用意してた木枠に移す

あとでこけいのせっけんになる


顔をちかずけるふーぴょんに

「ふーぴょん食べちゃダメだよ」

「うん、においをね」

そんなやりとりの中、羊獣人の女性が声をかけてきた。

ふわふわの毛を編み込んだかわいらしい羊獣人の女性


「メリッサといいます。何か手伝えることがあれば……」


シーナが、彼女の手を取る。


「ありがとう、実は2人で100食は

 少し自信なかったの。手伝って」


「じゃあ、さっそくできたせっけんで」

「みんな一緒に、手を洗いましょう」


シーナが歌を歌いながらみんなが合わせる


 おねがい かめさん

 こうらを あらおう

 てのひら くるくる

 あわを たてて


 おねがい かめさん

 せなかも わすれず

 てのこう なでなで

 よごれ さよなら


 おねがい かめさん

 あしもと すいすい

 ゆびの あいだを

 ひとつずつ


 おねがい かめさん

 つめの さきまで

 ちいさな いのちを

 まもるため


 みずで ながして

 かわかして

 ……さあ

 りょうりを つくろう


 メリッサもラピもその歌に乗って楽しそうに手を洗う

 メリッサが自分の手を見つめた。


 「……今までこんな丁寧に手を洗ったことはないわ」


 「さあ!料理をつくろう」


 大鍋の前に立つ。

 シーナ、ふーぴょん、ラピ、メリッサ。


 山盛りの玉ねぎとじゃがいも。

 人参。セロリ。かぶ。にんにく。

 買い出したものをみんなで運んだ


 包丁で皮をむき、

 いちょう切りにする。

 ピーラーがない分、時間はかかる。

 メリッサがここで目を見張る実力を発揮

 してくれる。めちゃくちゃ早い

  

 「メリッサすごいね!助かるよ」


 大鍋にヤシ油とにんにくを鍋に入れた後、

 火を入れてゆっくり温める。

 香りが立ったところで、

 お肉屋さんが一口大に切ってくれた、オーク肉。

 根菜を入れ、焦がさず炒める。

 水を注ぎ、月桂樹をひらひらりいれる。


 浮いてくる灰色が買ったアクを、丁寧にすくう。

 黄金に輝く旨味は、すくわず残す。


 最後に、かぶ。溶けやすいので煮過ぎない。

 塩と香草で仕上げをする。

 別鍋でゆでたかぶの葉を、仕上げに散らす。

 

 「味見をしよう」

 最初に口をつけたのは、ふーぴょんだった。


 「……うまい」


 少し考えてから、言葉を足す。


「野菜と肉の味が、ちゃんとスープに出てる」

「まるで、直接体に入ってくる感じだ」

「肉も柔らかくて臭みもすくない」


 その言葉とスープの香りに、村人たちが集まってくる。


「何か食わせてくれるらしい」


 狐獣人のホクスが、

 腕を組んだまま、少し離れた場所で舌打ちした。


 「……ふん、うせ、見せかけだろ」

 わざと聞こえる大きな声だった。


 「あたなもどうぞ」

 シーナが優しく木椀を差し出す。

 「こんなもの食えんのかね」

 だが、次の瞬間。風向きが変わり、

 香りが、はっきりとホクス鼻を突いた。

 ごくり、思わず口に運ぶ

 野菜の甘み。肉と野菜煮込まれたスープの、奥行き。

 ホクスは、言葉を続けようとして――止まった。

 「……」


 誰かが差し出した木椀を、

 無言で受け取る。


 一口。


 その瞬間、狐の耳が、ぴくりと動いた。


 「……これは」


 もう一口。


 「……うまいな」


 自分でも驚いたように、ホクスは目を細めた。


「おい、うまいぞ」

「身体に染み渡る、こんなの初めてだ」


 その声に、周囲がざわつく。


「俺も」「……わたしも」


 椀が、次々と差し出される。


 さらに香りに引かれ、

 声に引かれ、人が集まってくる。


 鍋を囲む輪が、

 自然に広がっていった。


 ホクスは、空になった椀を見つめ、

 小さく息を吐いた。


「……うまかった。」


 村人が多く集まり木椀をからにした。

 シーナは、鍋の前に立った。


「聞いてください」

 料理への満足感が

 彼女に対する視線を誘導しやすくしている


「今、この村で起きているのは、

 呪いじゃありません」


「食中毒です」


ざわめき。

ホクスが大きな声で叫ぶ

「しょくちゅうどく、聞いたことないぞ

 そんな毒!」

村人たちがうなずく


「食中毒は、食中毒を起こすもととなる細菌が

 ついた食べ物を食べることによって

 げりや腹痛、発熱、はきけなどの症状のことなの」


「菌は、目に見えません」

「手につきます」

「食材や水にも、残ります」


「だから、手を洗う」

「水と料理には、火を通す」

「出来上がった料理には汚い手で触れない」


「それだけで、防げます」


村人は疑心暗鬼だが、その言葉はシーナの料理と


ともに『栄養』となっていく。


翌日。腹痛は止まり始めた。

次の日。畑に出る人が増えた。

 


隔離小屋の鍵が外される。

しろっぷは、光に目を細めながら外に出た。

「ありがとう」

「あなたは、悪くないのよ」

シーナがやさしく声をかける

ふーぴょんとラピ、メリッサが満面の笑みで迎える


そこに狐獣人のホクスが来る。

ふーぴょんがしろっぷの前に立ちはだかる


ホクスは拍子抜けするくらいに小さな声で

 「……悪かった」

 「呪いにしたほうが、楽だった」

 「俺は、村の商人だ」

 「続くものが、商いになる」

 「そのせっけんを俺に売らせてくれ、じゃない」

 「広めさせてくれ」


否定する声はなかった。


 「これから俺はあんたたちの仲間だ

  なんでも言ってくれ。しっかり償うよ」


こうして、

しろっぷ、ホクス、メリッサは仲間になった。


せっけんは、ホクスが

責任を持って生産し広めてくれる。


手洗いは、メリッサが村にこれからも

広めてくれる。


ただ呪いは、解かれたのではない。

暮らしが、変わったのだ。


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