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もしも学校給食栄養士が異世界に転生したら〜剣も魔法もランクDけど、最強チート献立で国家再生〜  作者: studio tomo


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25話 炊き続ける理由と、名を伏せた手

 炊き出しは、三日目に入っていた。

 夜明け前に火を入れ、夜に火を落とす。

 その繰り返しが、 途切れなく続いている。


 釜の数は増え、列は長くなり、

 人の顔色は少しずつ変わっているのを感じる。


 初日は暴動までいかずとも大きな混乱もあった。

 二日目は、混乱からそして疲労。

 三日目には、怒鳴り声は減り、 代わりに、黙って椀を差し出す手が増えた。


 手は荒れ、 足は重く、 夜になると、

 全身が鉛のようだった。


 「今日も、どうにか足りたね」


 ラピがそう言って笑う。 その笑顔が、 少しだけ無理をしているのが分かる。

 「無理はしてるね、ラピは明日は休んで」

 「大丈夫シーナの加護おかげで、倒れてない私もみんなも」

 それが、すべてだった。


 温かい食事が続いている。 それだけで、人は思った以上に持ちこたえる。

 栄養が、確かに身体を支えていた。


 四日目の広場には、まだ非常時特有のざわめきが残っている。

 列は自然にでき、 声は低い。人々は待つことを覚え始めていた。

 毎日いてくれるシーナたちへの信頼が生まれている

 ようやく張られたテントの中でシーナは包丁を握っている。

 大根を刻み、 鍋へ送る。 動きは早いが、 雑ではない。


 その横で、 ひとりの青年が、 黙々と野菜を洗っていた。

 彼から放たれるオーラ、違和感はほんの一瞬だった。

 記憶がよみがえる。

 

 あの日の夕暮れの宿の一階食堂。

 掴まれた手。 一緒に走った路地。


 ――あの時。


 シーナは視線を向けたまま、低く声を出した。


 「あなた…… あの時の人、だよね」


 帽子を深くかぶった青年の手が止まる。洗っていた野菜は置かないまま、

 視線だけがこちらを向いた。


 「私が教会から、要らぬ嫌疑をかけられた時、助けてくれた人」


 一拍。


 「……たしか、 ユーリさん」


 青年は否定しなかった。小さく息を吐く。


 「どうも」


 それだけだった。

 シーナは包丁を置かずに言う。


 「ありがとう」

 「あの時、

 助けてくれて」


 「ああ」


 「今も、

 こうして手伝ってくれてる」


 ユーリは首を振った。


 「俺は、

 何もできてない」

 「……すまない」


 その言葉に、

 シーナは眉をひそめた。


 「何もできてない?」

 「ここに立ってるじゃない」


 ユーリはそれ以上言わず、 洗い物に戻る。


 ――何か抱えている。  そう感じた。


 それからシーナは、 手が空くたびに、

 彼の様子を見るようになった。


 切り物を任されたと聞き、 覗いてみると、

 包丁の扱いはひどく慎重で、ぎこちない。


 「それじゃ、手を切るわよ」

 声をかける。


 「こう。 猫の手で押さえて」

 「料理、初めて?」


 「……ああ」


 「でしょうね」

 言われた通りに動かす。


 「剣は?」 「使える」


 「なら同じよ」

 「力じゃなくて、軸を保つの」

 親指と人差し指で刃元を支え、

 材料を固定し、刃全体で引く。


 剣の話を出した途端、 動きが変わった。


 「……すごいわね」

 「呑み込み、 早い」


 その後も仕込みは続いた。


 「火の前、 慣れてないでしょ」

 「腰が引けてる」

 「……そうか?」


 「相手に一撃、  入れるつもりで」

 言われた通りに混ぜると、 動きが見違える。


 「うまい!センスあるわよ」


 一週間が過ぎた夜。 打ち合わせを終え、

 シーナは瓦礫を片付けている

 ユーリに声をかけた。


 「休憩よ」  水を差し出す。


 「ありがとう」


 「いつから手伝ってるの?」


 「二日目から」


 「ご家族は無事なの?」


 「ああ」


 少しの沈黙。


 「……ここは、 あんたの故郷じゃないだろ」


 悪気のない声だった。


 「そうよ」


 「それでも、 よくやってるな」


 その一言で、 胸の奥が跳ねた。


 「どういう意味?」

 「そんな言い方、しないで」


 自分でも分かるほど、声が強かった。


 今までの睡眠不足。 背中に溜まった責任。

 全部が、 そこで噴き出しかけていた。


 ……違う。 責めたいわけじゃない。


 言いたかったのは、そんなことじゃない。


 自分が恥ずかしくてそのまま 背を向けた。


 十日目。

 疲労は、確実に溜まっていた。


 それでも、 倒れる者はいない。


 「……おかしいな」

  ユーリが呟いた。  

 「こんなに動いてるのに倒れる者はいない。」  

 「戦場であれば多くのものが疲弊している」

 「食べてるからよ、シーナの料理を」  


 メリッサが釜から目を離さずに言う。  

 「彼女の料理は特別なの疲労や回復の効果もあるのよ、

  村では常識になっているけど」

「あなたも食べたでしょ?」

 「はい、盛ったから食べて、今日はすいとんよ」

 「 美味しい。初めてこんなおいしい汁を飲むのは」 

 「体の力が、みなぎってくる」 

 「あの噂は本当だったんだな」  

 「あの噂?」  

 「呪いを解いた栄養士、戦わずに人を救う聖女。」  

 「意外にそうかもね、王様も食べたら考え変わるんじゃない」  


 二週間が過ぎた頃、  

 シーナの炊き出しのその大いなる効果あれど、限定的だ   

 シーナの地域以外からも炊き出しを求めるものが後を絶たない  

 しかし城や神殿は動かなった 。

 これではみんなを救えていないそう感じる。 

 ユーリが焚き火のそばで、黙って手を洗っていた。  

 「……ここまで続くとは」  


 ぽつりと漏れた声は、誰に向けたものでもない。  

 シーナは、決断した。  

 「城に、話をしに行く、ふーぴょん、しろっぷついてきて」  

 「うん」  誰も止めなかった。  

 止められる理由が、なかった。  


 「でも果たして我々の声など聞き入れてくれるもんかな」  

  カジドランがいう

 「城には入れるかも危ういぞ」  

 「なら俺も行く」  

  ユーリが手を上がる

 「ユーリあなたも?」  


 あれは少しギクシャクはしたものの、あの後も黙々と炊き出しを手伝ってくれてる


 「でも危ないわよ」   

 「ここは俺もの街だから」  

 「わかったわ、無茶はしないでね」

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