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もしも学校給食栄養士が異世界に転生したら〜剣も魔法もランクDけど、最強チート献立で国家再生〜  作者: studio tomo


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2話 うさみみと、テーマパークじゃない世界

……なんかの、テーマパークじゃないよね。


しいなは、周囲をもう一度ゆっくり見回した。

森は深く、整備された様子もない。

作り物にしては、雑音が多すぎる。

鳥の声、葉擦れの音、湿った土の匂い。


五感が、全部「本物だ」と言っている。


白衣の前をそっと開き、内ポケットを確認する。


ペン。メモ帳。

折りたたまれた献立表。


それから――

小さな、電卓。


無意識に持ち歩いていたものだ。

分量計算、給食費、栄養価。

癖みたいなもの。


電源は、入る。

数字も表示される。


「……まあ、太陽はあるしね」


夢にしては、律儀すぎる。


今日は忙しくて、まともに食べられなかった。

味見しかできなかったせいか、

空腹も、少しだけ感じる。


この感じも、やけに現実的だった。


「……」


ふう、と息を吐いたところで、

視線の先に、例のうさぎがいることを思い出す。


「……ねえ」


「なんだ?」


笑顔でこちらを見つめてくる。

律儀すぎて、逆に怪しい。

言葉は通じるらしい。


「とりあえず……私、どうしたらいい?」


ふーぴょんは、少し考えてから言った。


「うん。もう夜だし、

 ここにいたらモンスターに食われるよ」


「モ、モモモ……モンスター」


反射的に、眉が寄る。


「熊とか、猪とか?」


「それは知らんけど、この辺だと、

 ゴブリンが一番厄介かな」


「……ゴブリン」


一瞬、頭の中で映像が走る。


「……で、って。

 あの、女の子を攫ったり、

 蹂躙したりする、あれ?」


「そう。それは分かるんだ」


「……こわ」


歴史は好きだ。

ファンタジー系のライトノベルはあまり読まないけど、

アニメとかで、断片的に知識はある。


――って。

(……何考えてるんだ、私)


現実逃避にもほどがある。


「……君は、いい子?」


唐突な質問に、

ふーぴょんは一瞬きょとんとしてから、胸を張った。


「うん、もちろん!」


「……即答だね」


「僕らはね、

 森の守り獣って呼ばれてるんだ」


守り獣。

その言葉に、少しだけ引っかかる。


「……じゃあ、君の家って……?」


「いいよ。ついて来なよ」


軽い口調で、

ふーぴょんは森の奥を指さした。


「ここで死なれたら、困るし」


「……困る?」


「血の臭いでさ、

 ネクロマンサー来たら困るんだよ」


「……ネクロ……マンサー?」


ひえーーー。

本当に、何なの。ここ。


背中に、じわっと冷たいものが走る。


「……ちょっといい?」


しいなは、半信半疑のまま、

そっと手を伸ばした。


「ごめんなさい」


そう前置きしてから、

ふーぴょんの頭の横にある“それ”を、つまもうとする。


「痛てててっ!!」


「え?」


「なにするんだよ!」


ふーぴょんが、慌てて飛びのく。


「……本物の、耳」


カチューシャじゃない。

思わず、指先を見る。


確かに、柔らかい。

モフモフしている。

でも、ちゃんと温かくて、

ちゃんと――生きている感触だった。


「……あ」


一瞬で、理解した。


テーマパーク説は、

完全に消えた。


「……」


しいなは、少しだけ迷って、

それから、ふーぴょんの後ろ姿を見る。


他に、選択肢はない。


「……分かった。

 でも、変なことしたら逃げるからね」


「えー、ひどいなあ」


頭で組んだ腕を解き、

軽く手を振りながら、

ふーぴょんは歩き出す。


その背中を見つめながら、

しいなは、白衣の裾を整えた。


恐る恐る。

でも、確実に。


――知らない世界へ、足を踏み出す。


森の奥へ向かって。


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