表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしも学校給食栄養士が異世界に転生したら〜剣も魔法もランクDけど、最強チート献立で国家再生〜  作者: studio tomo


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/29

14話 ダンジョンと、食べられるもの

 村の外れにある低層ダンジョンは、石畳でできた入り口を持ち、

 内部から流れ出る空気はひんやりとしていた。


 「……こわいんだけど」

 「大丈夫、ついてきて」


 最初に現れたのはゴブリンだった。

 この世界に来たばかりの頃、襲われると聞かされていた

 魔物であり、当時は確か、ふーぴょん一人では倒せなかった相手だ。


 「ケケケケ……」


 にやにやと笑うその姿に、背筋がぞっとして、私は思わず二歩、後ずさった。

 だが、その不安は一瞬で消える。


 ふーぴょんの風魔法と、しろっぷの飛び蹴りが同時に決まり、

 連携だけであっさりとゴブリンは倒されていた。


 動きは早く、静かで、息も乱れていない。

 続くスライムや、ねずみのようなラドット、骨の標本のようなスケルト、

 海老に似たモンスターのシリプ、人参のお化けのようなキラト、

 キノコの魔物エリギが、迷いなく倒されていく。


 10階を超え、中層に入ると、ダンジョンは森のような様相に変わっていた。


 オークが突然姿を現した瞬間、シーナは思わず声を上げる。


 「危ない、後ろ!」


 二人は自然に位置を変え、阿吽の呼吸で連携し、オークを倒した。


 シーナ自身は直接戦わないが、一度だけ、はっきりと声を出す。


 「……左」 それだけで、十分だった。


 切り傷には、神殿で教わってきた回復魔法を使い、軽くヒールをかけて治す。


 途中、ふーぴょんが振り返る。


 「腹減ったよ、シーナ。この先のセーフポイントでご飯作ってくれない?」

 「いいけど……安全なの?」

 「よく分かんないけど、セーフポイントは魔物出ないんだよね」


 セーフポイントに到着すると、しろっぷがバックパックから調理道具を取り出した。


 「頼むね、シーナ。美味しいの、期待してるわよ」


 そう言って、ドロップアイテムの食材をいくつか並べる。

 オーク肉、シリプ肉、キラト、エリギそしてスライムの素材。


 「オーク肉は分かるけど……どうしろっていうの」

 「うん、任せるよ」

 「ちょっと疲れたから、少し寝かせて」


 二人は仲良く頭を寄せて、仮眠を取り始めた。


 「……やっぱり、疲れるのね。さて、やるか」


 シーナは小さく息を吐く。


 「……料理をしよう」


 魔法で新鮮な水も出せるし、火も起こせる。

 アイテムボックスには、バターも牛乳、ぶどう酒もある。

 私もすっかり、この世界に馴染んでしまったな、と苦笑する。


 「そうだ……この海老みたいなシリプを使って、エビクリームライスにしよう。

  あとはスライムのコラーゲンとぶどう酒を使って、ぶどうゼリーも作れる」


 みじん切りにしたキラトをバターで炒め、塩を加える。

 アイテムボックスから出した米と、みじんのキラト、

 オーク肉で取ったスープを鍋に入れて炊き上げる。


 シリプはボイルし、村で作ったぶどう酒を軽く振っておく。


 しろっぷが用意してくれた鍋に油とバターを入れて火をつけ、溶けたところに

 ふるった麦粉を加え、弱火でよく混ぜながらじっくりと加熱する。

 なめらかなルーになるまで火を入れ、牛乳を数回に分けて加えてホワイトルーを作る。


 別の鍋で油を熱し、オーク肉、角切りのキラトを順に炒め、

 オーク肉のスープと残りの牛乳、茹でてカットしたシリプを加える。

 そこにホワイトルーを合わせ、調味を整えて完成だ。


 「ふーぴょん、しろっぷ。できたよ」


 二人は目を覚まし、鼻をくんくんさせる。


 「うん……おいしそうな匂い」


 キラト入りのライスを椀に盛り、シリプ、エリギ、キラトの

 入ったクリームシチューをかけ、ふーぴょんの香草を散らして出来上がり。


 ふーぴょんが一口、運ぶ。


 「うまーーーーい!」


 しろっぷも頷きながら言う。


 「おいしい……シリプの旨みがしっかり溶け込んだクリームが、ごはんによく合ってる」

 「シリプ、ぷりぷりしてて臭みもない。最高だね」

 「エリギのコリコリ感が、いいアクセントになってる」

 「うまくできた?」

 「重すぎないのに、満足感がすごい」

 「また食べたくなる一皿ね」


 「ゼリーも最高! スライムのコラーゲンがぶどう酒と合わさって、ぷるんぷるん」

 「名前は?」

 「……ブドウゼリー」


 二人はすっかり自分でステータスを確認

 HPもMPも回復していた。


 「よし、片づけは僕らに任せて。シーナは少し休んでて」


 その後もダンジョンは順調に進んでいく。

 二人の成長は、とんでもない。

 ――これ、いわゆるチートってやつじゃないの。


――――――――――


 ダンジョン最下層、ボス部屋の前。


 傷ついた冒険者たちが、次々と引き返してくる。


 「おい、やべーぞ。ここのボス、ここらのダンジョンのレベルじゃない」

 「三人で行くのか?」

 「無謀だぞ。グリフォンだ」


 本来なら、逃げるべき相手かもしれない。

 だが二人は声をそろえた。


 「シーナを置いていくわけにはいかない。一緒に行こう」


 扉が開く。

 冷えた空気が、さらに張り詰める。


 その緊張感だけで分かる。

 明らかに、これまで相手にしてきたモンスターとは次元が違う。


 静寂の中、羽音が空気を裂いた。


 影が跳ね、次の瞬間、頭上から圧が叩きつけられる。

 グリフォンは旋回しながら高度を変え、爪と風圧だけで間合いを破壊してきた。


 「速い……!」


 ふーぴょんが剣を構え直すより早く、突風が地面をえぐる。

 踏み込んだ足が浮き、体勢が崩れかけた。


 「右、来る!」


 シーナの声に反応し、ふーぴょんが剣を振り上げる。


 「――風よ、集え。流れを断ち、翼を縛れ!」


 低く詠唱し、剣身に風を纏わせる。

 刃に沿って流れた風が盾となり衝撃を受け流すが、その重さに腕が痺れた。


 グリフォンは地に降りない。

 上昇し、急降下し、また旋回する。

 完全に空を支配していた。


 「しろっぷ、距離を!」


 しろっぷは深く息を吸い、足元に手をつく。


 「――水よ、形を持て。集まりて、相手に地を与えよ」


 水が湧き上がり、膜となって足を包む。

 滑るように踏み込み、跳ぶ。

 水を纏った拳を振るうが、相手は空へ逃げた。


 「当たらない……!」


 「上、二時!」


 衝撃。風の刃が地面を走り、二人の間を裂く。


 息が荒くなる。

 視界の端が揺れる。


 ――このままじゃ、削り負ける。


 二人は視線を交わす。


 「……もう一回。今度は確実に落とす」

 「うん。縛る」


 「上、真上。今!」


 シーナの声が、迷いなく落ちた。


 「――風よ、集え。流れを断ち、翼を縛れ!」


 渦を巻く風が翼を絡め取り、軌道を乱す。


 「――水よ、従え。絡み、繋ぎ、逃がすな!」


 水が鎖のように伸び、翼と胴を縛り上げる。


 「今、一緒に!」


 「――ともに歩め、風と水。重なれ!」


 合体魔法。

 圧縮された風が水を押し、魔力が一点に収束する。


 轟音と閃光。

 グリフォンの巨体が、地面に叩きつけられた。


 土煙が晴れたとき、そこに動く影はなかった。


 「……倒したわね」


 二人は顔を見合わせ、ゆっくりとうなずく。


 連携によって討伐を成し遂げ、静寂の中にドロップと肉が残された。


 「やったわね」

 「うん」

 「こわかったー」


 ドロップした肉を見つめ、シーナは静かに言った。


 「……これも、食べられるわね」


 外では、村の灯りが揺れていた。

 ダンジョンは、怖い場所ではなく、

 ――食べられる場所なのかもしれないと、シーナは思っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ