32話「それから」
それから、私はユラネと再会を果たして、無事に学校まで戻ることができた。
幸いにも、ムクロガミにぶん殴られたせいでお腹が腫れた以外は、目立った外傷はなかった。なので保健室に行って、スバル先生には『暗殺者の奇襲のときに転んで、全身を住民達に踏まれまくって傷だらけになった』と嘘をついておいた。
疑われるようなことにはならなかったので、私はもう怪我をした一般生徒として日常生活に戻ることができるだろう。
ユラネも同様で、私と一緒に行動していることになっていたので、奇襲時のアリバイはできている。
あとは、私とコネミが二人きりのときだったことを変に指摘されない限りは、問題ないだろう。まあ、これに関しては杞憂なのだろうが。
コネミは言っていた通りに、一度公園に戻った後に、あとでふらふらとゆっくり戻ってきた。
一応、ずっとアゲコと行動していることにはなっているが、私を追いかけるときにレアスキルを発動している様を誰かに目撃されている可能性があるので、そこを指摘される可能性はある。
そのときは、興味本位で追いかけたけど見つからなかったということにすれば、厳重注意で済むだろう。
そしてアゲコ。聞いた話によると、あのあと本当に警察に連れて行かれて、事情聴取を受けることになってしまったようで、帰ってくる頃にはやつれた顔になっていた。
だが、事情聴取を受けているときに必死にアゲコが自身の行いを伝え続けたのと、現場にいた住民達がアゲコの弁護してくれたことで、何とか事なきを得た。
ムクロガミという一目置かれた人物を殺害した暗殺者を、逃走させるに至るまで追い詰めたという意味では、立派なことを果たしたと言えるだろう。
目撃者は多数いるので、時期に街のほうでもアゲコは注目されるはずだ。いずれは街の期待の星になってしまったりして……。
私の天敵になる可能性が高いので、計画の邪魔になるという意味では、正直あまり考えたくはない。
というわけで、結局最後まで暗殺者が私であることはバレなかった。
世間では、テロ首謀者を殺害した者と今回のムクロガミの暗殺を行った者が同一人物なのではないかとか。テロ首謀者は悪でムクロガミは善なので、ローブを着ているだけで中身はまったくの別物だとか。平行線で終わるような、建設的でない議論ばかりが行われるようになった。
ローブを着た種族も性別も不明な者ということで、ミステリアなんて呼び名が付いたり……。
この調子では、いつまで経っても正体が私であることにたどり着くことは不可能だろう。
とは言え、こんなド派手な行動を起こし続けていれば、いつかボロを出して失敗につながると思うので、これからはより慎重に動く必要がある。気を引き締めなければならない。
そういえばムクロガミについてだが、奴は国や世界に多大なる貢献をしていたらしいので、国の儀式として葬儀が行われることが、その後魔王の手によって即決された。
当の魔王も、ムクロガミの殺害について、『ムクロガミの生前の活躍を高く評価すると共に、暗殺者を絶対に許しはしない』と言った旨の声明を出した。
国の代表が殺害されたのだから、その影響は一国程度では留まらない。警備体制などもどんどん厳しくなっていくだろう。
魔王の影響力は計り知れないが、今回の事件を機にむしろ増していくかもしれない。
これからも復讐を続けていく以上は、決して目を背けることはできない。どんどん力をつけて頑張ろうと思う。
さて、あとは今回の事件の学校への影響についてだが、とくに休校になったりすることはなく、通常通りに授業は行われるようだ。
というのも、今回直接被害を受けたのはムクロガミのみで、誰一人として生徒は巻き込まれていない。
混乱が起きた際にぶつかって怪我をしたとか、転んで怪我をしたとか、間接的に軽い怪我をした生徒がいるくらいで、大きな被害はなかった。
ただ、中にはムクロガミの暗殺の目撃によってトラウマを植え付けられた生徒もいるかもしれないので、学校のほうで一律にカウンセリングなどが実施される予定だ。
最後に、私の身に起きた変化について。
計画が終わって、物事が一段落したときにある変化が起きた。
それは私の人心の芽生え。すなわち、自らの手で他人の命を奪ったことに対する罪悪感と恐怖だった。
私は暗殺者にはとことん向いていないらしく、罪を犯してしまったことに胸が引き裂かれそうになるほどの苦しみを覚えた。
ムクロガミの死に顔や、ムクロガミ自身が遺言として私に放った『死ぬのはとても怖い』という言葉が、頭から焼き付いて離れなくなってしまった。
それらがトラウマとして心に刻まれ続けているせいで、私は少しでも暇な時間ができると、その度にトラウマが掘り起こされるようになった。
体の震えに過呼吸、あふれそうになる涙。もう私は二度とまともには生きられないのだと、自覚させられた。
それでも、私は復讐を続ける。私の残りの人生を全部かけてでも、私は両親の命を奪った兵士と魔王を、この手で屠る。
それが私が自らに与えた使命だ。絶対に成し遂げてみせる。私はそう誓った。
それに一応、ユラネやコネミが私を支えてくれているおかげで、少しだけ心は楽になっている。
もし彼女達がいなければ、私は一人で発狂してもがき苦しんで自供でもしていたかもしれない。本当に、感謝してもしきれない。二人の応援に応えるためにも、私は復讐を続けようと思う。
さあ、頑張ろう。
謎の音声のことだってあるし、復讐のチャンスだって待っていればいつか必ず訪れる。
目的を成し遂げるためにも、用意された学園生活を楽しみながら、力をつけていこう。
私は、そんなことを考えながら、目をつむって眠りについた。
これにて一章完結です。
元々この作品は応募用に書き始めた作品なので、続きを書くかどうかは未定です。
他に書きたい作品がなくなったときにまた書くかもしれません。そのときはどうかよろしくお願いいたします。




