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21話「情報集め」

「ふむ……」


 私はそのある場所。図書室へと来ていた。


 なぜこのような場所を訪れたかというと、情報が得られる場所がここくらいしかないからだ。


 基本的に学園の外には出られないので、外からの情報はあまり流れてこない。


 もし流れてくるとしても噂話ばかりなので、場を和ませるには十分だが信用するには値しない。


 だがこの図書室では、毎日のように複数の会社の新聞が届くようになっているので、唯一学園の外からの情報を得ることができる。


 新聞以外にも、功績を残した人物について書かれた本もあるので、ムクロガミがどんな人物なのか知ることくらいは容易である。


 まあ、いきなり入室してきて政治や歴史について調べ始めるのも怪しいと思ったので、今は中高生に人気な恋愛小説を読みながら時間を潰している。


(一つ残念なことがあるとすれば、私の趣味嗜好にラブコメが合わないことだけど……)


 私が好きなジャンルは強いて言えば旅物語だ。


 街だったり国だったり、世界を旅するファンタジーな作品が好きなので、冒険に重きを置くことがほとんどない恋愛系は、あまり肌に合わないのだ。


 カモフラージュをするためには本の貸し借りは必須なので、あとで別の本を持ってくるとしよう。


(さて、読むか……)


 今度は小説を一度閉じて、新聞を手に取る。


 数日前のものや今日届いたばかりの新聞を、パラパラとめくりながら読んでいく。


 不必要な情報には目もくれずに、祭りに関係する出来事ばかりに主に焦点を当てた。


「あ、あった……」


 私は、お祭り当日の流れについて書かれているものを見つけた。


 当日の流れとしては、まずはムクロガミ代表が挨拶を行なって、開会の宣言をする。


 それから、この国に貢献した者が多数前に出てきて、表彰される。


 次に、魔王がこの国へと直々に充てたメッセージを、代わりにムクロガミが読み上げる。どうやら、魔王はすべての国に違う文章を送っているようだ。几帳面な奴め。


 最後に、閉会の言葉をムクロガミが述べて、魔王生誕祭は終了を告げる。以上が魔王生誕祭当日の式の流れとなる。


(もしムクロガミに奇襲をかけるなら、開会、もしくは閉会の言葉を述べている最中に仕掛けるべきだろうな……)


 魔王軍で活躍したのだから、実力は当然並の兵士以上のはずだ。


 普通に私が戦っても、相手のほうが手数も経験も上なのだから確実に負けてしまう。なので、一瞬の隙を突いて奇襲をかける必要がある。


 そのタイミングに最も相応しいのは、やはり言葉を述べている瞬間だ。


 文章を思い浮かべて喋るという行為に脳の労力を割いているので、されるかどうかも分からない暗殺については、考える暇もないだろう。そこを突くべきか……。


 とは言え、護衛の兵士だっているだろうし、必要以上に市民を巻き込みたくはないし、課題は山積みだ。


 この問題を片付けた上で奇襲に臨まなければならないので、この一週間のうちに結論を出す必要がある。一旦この話は置いておこう。


(次に、ムクロガミという人物そのものについて……)


 私は一旦新聞を畳んで、今度は本を開き始める。


 本のタイトルは『人間界の領土獲得までの歴史』。タイトルの通り、人間界が魔王軍に乗っ取られる前のことについて書かれている。


 人間界の様子や魔界の様子。両陣営の対立の様子などが描かれていて、そのあとに魔王軍が人間界を乗っ取るまでの流れが詳細に説明される。


 何を理由に領土獲得に乗り出したのか。どういった計画を立てたのか。そしてどのような人物が活躍したのか……。


 領土獲得において名を上げた人物は、人物像と共に説明がなされるのだが、そこにムクロガミの名は確かにあった。


(ムクロガミ……)


 フルネームはムクロガミ・クロカード。年齢は四百四十三歳で、人間で言えば30代後半にあたるらしい。


 種族は魔族。黒髪に二本のツノが生えていて、本人の好みなのか私服はタキシード服に統一している。


 現在はこの国の代表として、オトナシ家の王城を拠点としながら様々な活動に注力している。


 領土獲得においては、クロカード班の分隊長として人間界のほとんどの国に乗り込み、指揮を取った。


 先陣を切るのはお手のもののようで、自ら敵陣に突っ込んでは、囲んできた兵士を皆殺しにして制圧を完了させる。それを繰り返して、侵攻を圧倒的な速度で終わらせていったそうだ。


(多数のレアスキルを所持していて、魔王様からも高い信頼を得ている……。案の定、厄介だな……)


 改めて殺さなければならない相手だと認識したはいいものの、いざ復讐をするとなるとなかなか手強い相手だった。


 今の私が覚悟だけ決めても、それだけで倒せるほど相手は甘くはなかった。


(この説明に誇張が含まれていないのであれば、レジェンドスキル一つでは太刀打ちできない可能性がある……)


 レジェンドスキルは必殺技のようなものだ。


 レアスキルよりも格段に威力や効果の高いものにはなるが、それ一つだけで勝てるとは到底思えない。


 オトナシ流という、レアスキルに匹敵する力を引き出せる独自の型もあるが、今のままではとても通用しない。


 となれば、やることは一つだった。


(ひたすら訓練かな……)


 私は、今読んでいた本と、適当な旅物語が書かれた本。それといくつかの本を借りて、図書室を出た。


 そのまま私は、職員室まで歩く。目の前にある扉をノックをして入室し、担任であるニーハ先生を呼んだ。


「はい、どうされました? ナキネさん」


 私は先生を直接見ずに、目を逸らしながらお願いをする。


 直接見ないのは、お叱りを受けたときのトラウマの名残である。未だにちょっと気まずい。


「体育館を開けていただくことは可能ですか? 技の練習がしたいのですが……」


 先生が返す。


「べつに構いませんが……かなり急ですね? ナキネさんはスキル関連の授業の成績は優秀ですし……。何か獲得したいスキルでもあるのでしょうか?」

「はい。使えるようになったら便利だと思ったスキルをさっき図書室で見つけたので、早速試したくて……。あとは、剣術の練習なども……」

「そうですか。何かに興味を持って実践するのは素晴らしいことですね! 監督責任があるので私も体育館に同席しますが、それでも構いませんか?」

「はい、ありがとうございます……!」


 私は深々と礼をした。


 先生が体育館用の鍵を持ってきたので、私達は体育館へと向かった。




「──では、ずっと横で見ているので、自由に鍛錬を行なってください。何か分からないことがあったら、そのときは気軽に声をかけてくださいね」

「はい、分かりました」


 私は体育館倉庫から木刀を一本手に取って、オトナシ流の構えを取る。


「オトナシ流『珠音討ち』」


 斜め下から斜め上へと、相手へと打ちつけるように木刀を振り上げる。

 空気を切り裂く音だけが、周りへと響いた。


(当然、幻影は出ない……か……)


 オトナシ流を真に扱えるようになったとき、すべての技は発動した際に幻影を発するようになる。


 珠音討ちなら、打ちつけた箇所に水紋の幻影が生まれる。水溜まりに水滴がぽつりと滴るときのように、美しい波紋の広がりを見せるようになる。


 もちろん。たった一週間、教えも受けずに鍛錬し続けるだけで、真の力を引き出せるようになるとは思えない。


 だが、努力を重ねれば技の威力は増すし、技量そのものも増す。ひたすら練度を上げて、計画の成功率を上げておかなければならない。


 私は、オトナシ流の技をしばらく練習した。




 それともう一つ、オトナシ流以外にもしておかなければならないことがある。それは復讐に役立つスキルの獲得だ。


 基礎スキルと呼ばれる、通常スキルの中でも最も簡単なスキルに関してはすでに獲得済みなのだが、復讐をするにあたってはそれだけでは足りない。


 たとえば、『感知低下』というスキル。これは、自身の存在感を一時的に多少低下させることができるスキルなのだが、奇襲をかけるのであれば絶対に必要になるだろう。


 このように、私は復讐に役立つスキルをまだ持っていないので、オトナシ流の鍛錬と並行して獲得する必要があるのだ。


 基本的に、スキルの獲得条件などは本に記されていることが多い。通常スキル程度であれば、大抵のものが本に記されている。獲得できるかどうかは別としてだが。


 私は図書室からいくつかの本を拝借した。その本こそが、通常スキルの獲得条件が記された本だった。私は、本を見て必要になりそうなスキルを探していく。


 ちなみに、レアスキルやレジェンドスキルに関しては、獲得条件や扱い方が容易ではなく、獲得者も少ないので、本に記されていないことがほとんどである。


 自分しか持っていないであろうスキルの獲得条件を、おいそれと口から漏らす間抜けはいない。


 スキルを持っていること自体が希少な価値になってしまうので、自身の格を下げないためにも、獲得条件という情報を提供するわけにはいかないのだ。


 あとは単に、獲得者自体がなぜ条件を満たしたのかを認知していない場合もある。


 私の場合は、謎の音声が脳内に流れてきたおかげでスキルの獲得を認識できたので、元の生活を奪われてから一年が経ったという時間的状況と照らし合わせて、『荒れ狂い』や『闇堕ち』、『暴走信者』の獲得条件を『殺意を一定の期間常に持続し続ける』ことだと見抜けた。


 しかし、私以外の生物は謎の音声が脳内に流れてくることがないので、スキルを獲得できたかどうかをくまなく確認した上で、さらにその獲得条件を推測する必要があるのだ。


 そのため、獲得してしばらく経ってからレアスキルやレジェンドスキルが扱えることに気が付いて、獲得条件を見抜くことができずに一生を終えるパターンがどうしても発生してしまう。


 レアスキルやレジェンドスキルについてろくに情報が集まらないのはそのためである。


 ユラネやコネミ、ヌイといったレアスキル所持者の中にも、自身の持つレアスキルの獲得条件が分かっていない人物は確実にいるだろう。


(となると、やっぱり謎の音声の存在が気になってくるよね……)


 スキルを獲得したときに脳内に語りかけてくるこの音声の正体は何なのか、実に気になるところだ。実はユニークスキルとか? いや、それはないか……。


 私は、そんなことを考えているうちに、必要だと思ったスキルをあらかじめ見つけ終えた。


 あとは、スキルを獲得するために奮闘するだけ。私は、ひたすら復讐のためにスキル獲得へと尽力した。

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