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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ひきこさん

作者: 雪兎
掲載日:2010/03/07

 ズズッ……ズズッ……

 ある日、歩いていると足を引きずるような音が聞こえた。

 その音が気になったために私が振り向くと……


 最近、学校付近で妙な事件が起きるようになった。

 私の通う学校の生徒たちが行方不明になると言う事件だ。

 その事件のせいで、一人が好きな私が他の人との下校を強要され、ストレスが溜まるばかり。

 しかも私と一緒に帰っているのは……

「ねぇねぇ~優姫ゆうきってどういう男子が好きなの~?」

 一見、フレンドリーに見えるが、クラス一のいじめっ子、あずさ

 なぜ私が梓と一緒に帰る事になったのかは……単純に家が近いから。

 本当はこんなヤツと一緒に帰りたくない。

 だけど断ったら、先生達から白い目で見られ、梓たちのグループにいじめられるのが目に見えている。

 そんな面倒なことには巻き込まれたくない。

 どうせ、下校で関わるのも二十分ほどだ。

 我慢できないほどの時間でもない。

 応答も適当に流していけば問題はない。

「学校の男子ではいないわ。あいつらみんな、バカっぽくて嫌」

「そうよねぇ~アタシもいないわ~」

 バカっぽいの中に自分が入っていると言うことは考えもしないんだろうな。

 心の中であざ笑っていることにも気付けない、そんなうわべだけの付き合いしかしていない人と付き合いを持とうとも思わない。

 付き合うなら一生信頼の置ける人がいい。

「そういえばさ~最近、妃姫子ひきこの奴見ないよね~」

「妃姫子?」

 そんな名前の人、クラスにいただろうか。

「優姫、知らないの~?少し美人だからってセンコー達から贔屓されてさ~むかついたから少しからかってやったのよ」

 ……その妃姫子って人、ご愁傷様。

 まぁ私には関係のないことだ。

「こういう噂知ってる?最近の行方不明事件、妃姫子の奴がやっているって」

「……知らない」

 虐められたあげく、勝手に犯人にされるのか。

 世の中はひどい話ばかりだな。

「あ、じゃあアタシはここで。明日の朝もよろしくね~」

 こうしてストレスにしかならない二十分は終わった。


 次の日の朝、梓は待ち合わせの場所にいた。

「おっそ~い」

「時間通りだけど……」

「早く行こーよ」

 朝からよくこのテンションでやっていけるな。

 今朝のストレスでしかない二十分は梓の愚痴を聞き流している内に終わった。


 今日も私の周りでは何も起きずに半日が過ぎた。

 昼食を取ろうかと通学カバンの中から弁当箱を取り出そうとしたら突然声をかけられた。

 誰だと思い振り向くと、クラスの担任だった。

 筋骨隆々としていていかにも筋肉バカと言う言葉が似合う人だ。

「よぉ、優姫、ちょっといいか?」

「……?先生、私は何もしてませんよ?」

「そういうことじゃない。ちょっとお前に用事があるんだよ」

 そう言って先生は私の答えなど聞かずに教室を出て行ってしまった。

 まったく、人の大切な時間を奪うなよ。

 弁当箱をカバンの中にしまって、先生のあとを追った。


「お前、クラスで中立的立場にいるよな?」

 職員室に連れてこられてまず初めにこんなことを言われた。

 てか、生徒本人にそんなこと言う先生がまだいたんだな。

 絶滅危惧種に登録すべきじゃないのか?

「まぁ。めんどくさいのは嫌いですから。用って何ですか?急にクラスの虐めの仲裁をしろって言われても無理ですよ」

「いや、そんなことじゃない。と言うか虐めがあるのかっ?」

「よく知りませんが」

「……まぁ今はその話じゃない。妃姫子って知っているか?」

「……名前くらいは」

 昨日、梓から聞いたから。

「妃姫子にさ、プリントを届けてもらいたいんだよ」

「……なんで私に?」

「梓たちのグループは絶対にめんどくさがるだろ?他の奴らも積極的な奴はいないからな。中立的なお前ならと思ってな」

 つまり面倒なことは中立的立場な私に押し付けておけばいいということですね。

 めんどくさいことは嫌だと最初に言ったはずなんだが。

「……まぁいいですよ。住所とかおしえてくれれば行きますよ」

「ありがとうッ。アイツの住所は……」

 メモを取って私に渡してくれた。

 それにしても汚い字だ。

「じゃあ、お昼がまだなんで」

「おうっ。引き止めて悪かったな」

 そう思うなら以後、引き止めないでもらいたい。


「……というわけで今日は他の人と帰ってもらえる?」

「えぇ~」

 妃姫子さんと言うクラスメイトにプリントを届けることを伝えるとそんな声が梓の口から漏れた。

「そんなこと言われてもあっち方向の人、知らないし~……そうだっ。アタシも一緒に行くっ」

 いじめっ子がいじめられっ子のところに行くのはまずいのでは、と思ったが口にはしない。

「じゃあ一緒に行こう」

 面倒なことはちゃっちゃと片付けることが望ましい。

 二人で並んで妃姫子さんの家に向かうことにした。


 意外にも学校の近くに家があり、数分歩くだけで『森』と書いてある表札がある家についた。

「ここが妃姫子んちか~贅沢だなぁ」

 そんな感想を漏らす梓。

 すぐに思ったことが口に漏れるなぁ。

 この人には秘密を言わないようにしよう。

 用を済ませるためにインターホンに手を伸ばすとピンポーンと音が鳴った。

 少し間が空いてからドアが開かれた。

 体中に包帯を巻いているらしく、パジャマの袖から包帯がちらりと見えた。

 頭にも包帯を巻いていて片目を覆っていると言うひどい姿だった。

「どちらさ……っっ!!」

「やっほー元気だったぁ?」

 私の後ろに梓の姿を見つけた途端に彼女は勢いよくドアを閉めた。

「ちょっ……」

 プリントを渡しそびれてしまった。

 これでは用事が済ませられない。

「ひんどいなぁ~アタシを見ただけで隠れるなんてさぁ」

 それはアンタの虐めが原因でしょ。

 アンタのせいで用事が終わらないじゃない。

 私がもう一度インターホンを押すとインターホンから声が聞こえてきた。

『…………て』

「え?」

『帰ってください……』

「そんなこと言われてもプリントが……」

『ポストに入れてくれればいいから帰ってっ!』

 彼女の叫びが聞こえてからブツっとインターホンが切れてしまった。

「アイツもこう言ってるんだし帰ろうよ~」

 ……本人にそう言われたんだから仕方がない。

 ポストに担任から預かった大量のプリントを突っ込んで帰ることにした。


「また明日ね~」

 ストレスの二十分を乗り切り、自分の家の方に帰ろうと足を進めると

「きゃあっ」

 梓が行った方から悲鳴が聞こえてきた。

「……なんだろ……?」

 私の好奇心がめんどくささに勝ったため、振り返って悲鳴のした方に足を動かした。

「どうかしまし……っ!」

 そこにいたのは尻もちをついている梓。

 そして梓が向く方には白い着物のような物を着て俯いている背の高い人。

 そんな悲鳴のあげるようなことがこの状況であるのだろうか。

 梓の向かいにいる人の手には包丁などの武器類があるわけでもない。

 突然突き飛ばされたのだろうか。

 そんなことを考えていると、顔を上げたその人と目が合った。

「っ!」

 私も思わず悲鳴を上げそうになったが口を手で押さえて声は漏れなかった。

 その人の顔はあまりにも醜く、口は耳の辺りまで裂け、鬼のようなつり上がった目をしていた。

「や……たすけ……」

 私に気付かずに梓は後ずさりするが、そんな梓の足をその人は掴んだ。

 そしてキャリーバッグでも引くように梓を引きずった。

「痛いッ!痛いッ!」

 痛がる梓を気にする様子もなく、私の方まで梓を引きずってくる。

 引きずられたことにより梓の身体には小さな傷ができていた。

 そして彼女は私に気付いた。

「助けてッ。何でもするからッ」

 私の耳にはそんな声が届いたが頭が回らなかった。

 あの恐ろしい顔。

 人間とは思えないあの顔に近づけと。

 アンタと私はそんな深い関係じゃない。

 手を出すとこっちに被害が及ぶ恐れがある。

「嫌ッ。タスケ……ッ」

 私は梓の悲鳴を聞かないようにし、化物と梓が行く方とは逆の方に足を進めた。

 アレは、私には関係ない……


 次の日、学校では梓の話題で持ちきりだった。

 学校の女番長的な存在が失踪したのだ。

 朝のホームルームが始まる前、私は担任に呼び出され色々聞かれた。

 もちろん答えは決まっている。

「知りません。むしろ私の方が被害者です」

 あんなものを見せられたのだから。

 クラスで私のせいでいなくなったと言われたのだから。

「そう……だな。俺がお前にプリントを届けるように言ったからだよな」

 勝手に解釈してくれてありがたい。

 クラスの声を無視するのには慣れている。

 耳を閉ざして一日を乗り切ればいいのだ。


 今日は一人で帰る。

 今まで帰っていた人は化物に引きずられていったからだ。

「そういえば……」

 梓はどこに連れて行かれたのだろうか。

 少し気になったので、昨日梓が引きずられていった現場に行くと、薄っすら血の跡が残っていた。

 なぜだか身体が勝手に動く気がした。

 血の跡を追いかけてこれから何が起きるかもわからないまま。


 血の跡を追いかけていくと昨日行った、『森』の表札がある家にたどり着いた。

「まさか……ね」

 噂が本当になったのか。

 はたまた偶然か。

 どちらかわからなかったが指が自然にインターホンを押していた。

 少し間が空いてから中から人が出てきた。

 昨日会った包帯少女、妃姫子さん。

 私の姿を見るとビクリと身体を振るわせたがこっちに尋ねてきた。

「どうか……しました……?」

「いや……」

 なんといえばいいのか……

 血の跡を追ったらここにたどり着いたとは言えない。

「先生に頼まれてさ。妃姫子さんの友達になってやれって。だからおせっかいながら遊びに来たの」

 自分でもよく、こんな嘘がスラスラと出てきたものだと感心した。

「とも……だち……?」

「そう、友達」

 友達と言う言葉を信じてくれたのか、家の中に入ることを許可してくれた。

 家の中は外観どおり、広くキレイなものだった。

「リビングは……こっち」

「じゃあリビングでお話しようか」

 コクリと頷き、二人並んでリビングに入る。

「飲み物持ってくるから……待ってて」

 彼女はそう言ってキッチンの方に消えていった。

 その隙を見計らって、リビングを軽く詮索してみた。

 追いかけていた血の跡はここにはない。

 リビングには引きずられていないと言うことかな。

 いや、彼女がやったと言う証拠もない。

 私の気のせいだといいんだけど……

「お待たせ……」

「あ、ありがとう」

 愛想笑いを浮かべて差し出されたコップを受け取る。

 学校であったことを私が話して、妃姫子さんのことを私が聞く。

 そんなことをしていると一時間ほど経ってしまった。

「そういえば妃姫子さんのご両親は?」

「……仕事中」

「そっか。寂しいね」

「……そうでもない」

 両親と上手くいってないのかな。

 まぁ、あまり首を突っ込まない方がいいだろう。

「あ、ちょっとトイレ借りていいかな」

「……二階に上がった突き当たりにある」

「ありがとう」

 リビングに妃姫子さんを残して二階に行った。

 彼女の言ったとおり、突き当たりにトイレがあり、そこで用を済ませた。

 リビングに戻ろうとしたとき、何故か寒気を感じた。

 寒気の原因が気になり、辺りを見回してみると、二階の部屋の一つだけ、異様な雰囲気の部屋があった。

 何かと思ってその部屋の扉に手をかけて、扉を開けた。

「……ッ!!」

 まず部屋を開けると異臭がした。

 何の匂いだかわからなかった。

 部屋の中に入ってみると異臭の原因がわかった。

 その部屋は真っ赤に染まっていて、ところどころに真っ赤に染まっている塊が置いてあった。

「な、なにこれ……」

「……見ましたね……」

「っ!!」

 部屋にばかり集中していたために背後の気配に気付けなかった。

 振り向くと俯いた妃姫子さんがいた。

「アナタとは友達になれると思ったのに……」

 彼女は包帯を外しながら顔を上げた。

「きゃあっ!」

 彼女のその顔には見覚えがあった。

 昨日、梓を引きずっていった化物の顔だ。

「や……嫌……」

 後ずさりして部屋に入るが、すぐに壁にぶつかってしまう。

 右にも肉塊、左にも肉塊。

 私は本能的に察した。

 私もこれからこうなってしまうのだと。

「いやーーっ!」

 彼女は私の悲鳴を無視して足を掴んで引きずる。

 フローリングだったために痛くはなかった。

 しかし、引きずったまま階段を下り始め、階段の角に頭をぶつけて意識が薄れていった。

「な……なんで……」

 薄れる意識の中で尋ねたが、彼女は化物の顔をこちらに向けるだけで答えてくれなかった。

 そして玄関を出て、昨日聞いた音が耳元で聞こえてくる。

 ズズッ……ズズッ……ズズッ……

久々の怪談更新です~

豆知識は~……必要でしょうか?w

一応需要があることを信じて……w


ひきこさんの本名は話で出てきたとおり『森妃姫子』さんです。

元は人間であったが、虐めと両親の虐待が原因で妖怪化したというパターンがメインだそうですね。

なぜ、「森妃姫子」なのか。それは姓名を逆にすると「ひきこ、もり」。引きこもりに対する偏見がそうなったという説があるそうです。

対処法は……

・「私の顔は醜いか」と尋ねられたら「引っ張るぞ!」と三回叫ぶ。

・鏡を見せる。

・いじめられっ子は襲われない。

・いじめっ子だった人と同じ名前の人は襲われない(具体的な名前は不明)

だそうです。

引きずった後は部屋にコレクションするという説と決まった場所に放置するという説があります。

豆知識はこんな感じですかね~


……これは怪談なのかな?

ただの殺人事件のような……w

一応虐め、虐待から生まれてしまったかわいそうな妖怪ってことでw

ではまた、ネタを送っていただければありがたいと思います~

次回作をお楽しみにw

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― 新着の感想 ―
[一言] 「ひきこさん」、読ませていただきました。 これまでの「テケテケ」や「口裂け女」と違い、殺害の動機が明確な分恐ろしいですね……。 殺害方法も凄惨で、期待以上の作品に仕上がってました。 また、…
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