Stay Alive Say.8. 病気.(7)
Stay Alive Say.8. 病気.(7)
私、白沢昭真は今から死ぬ。
今日までかろうじてつかんでいた、その細くてか弱い生命線が今、切れようとしていた。
その夜はあらゆる考えにとらわれ、どうしても眠ることができなかった。
両親からの金銭支援が切られた今、これから私はどうなってしまうのだろう?
一層知らなかったら、少しは気楽になれたのかもしれない。
けれど、私は長い闘病生活の中で、金がない者がどんな扱いを受けるのか、誰よりも近いところで見守れなければならなかった。
どうしてあの時は、自分は彼らとは違うと思ったんだろう?
そんな愚かさを後悔しながらも、ただひたさら目の前の恐怖を消すために祈っていた。
医者は神だ。
少なくとも、他に頼る場所のない患者たちにおいては、救いと癒しをもたらすという点で、ここ、病院から医者とは神に限りなく近い存在かもしれない。
そして、彼ら医者は、そうした患者たちの信頼に応えるため、心を尽くして患者を世話し、まるで神がほどこす慈悲のごとく慈しみ深い微笑で、患者が安心できるよう最善を尽くす。
しかし、私たちは時にとても大事なことを見落として生きている。
彼らが親切にするのは、あくまでも患者に限る。
そう、あくまでも彼ら医者は、患者にだけ親切にすればいいのだ。
そんなこと、何が重要かと言うかもしれない。
自分が痛いとき、助けを受けられれば、それで十分じゃないかと、そう言うかもしれない。
だって、私たちは、痛い人を患者だと勘違いして生きてきたのだから。
確かに、痛いということもまた、その条件のうち一つであることは否定できない。
だけど、病院、いわゆる医療業も結局は業であり、事業の一環である。
腹が減る人に金をもらい、食事を売る食堂のように、病気の人から金をもらい医療サービスを提供する事業であり商売、それがこの時代の病院であり、医者の本質だった。
金がなくても、患者として治療を受けられる世界?
そんな夢物語は、70年前、月とともに幕を降ろしている。
だからこそこの時代、病院は患者に変わらず親切だが、金のない者はもぉ患者ではない。
ネズミと同じだ。
それをハムスターと呼ぶなら、私たちはそれを愛玩動物と呼び、愛情と愛を注ぎながら世話するけれど、
それを野ネズミと呼べば、私たちはそれを汚いと嫌悪し、伝染病防止や食糧保護などの名目の下に、それらを一匹でも多く駆除するために全力を尽くす。
そして、それがハムスターか野ネズミか決められるという点において、やはり医者は神だ。
その時突然と、頭の中に今日の朝冷淡に立ち去る医者の後ろ姿が思い浮かぶとともに、今の私が彼らにとっての何かを改めて思い知らされた。
全身に悪寒が走った。
そういえば、今月の最後の治療は二日後だった。
そしてその頃に、来月の病院費もまた振り込まれる。
つまり、両親からの金銭支援が途切れた今、私が追い出されるのは二日後だという意味だった。
でも病院である以上、私をただ道端に捨てるはずもなかったけれど、
それでもなお、彼らの対応は目に浮かんだ。
まず私を親のところへ送ろうとするけれど、
そもそも私はすでに両親から見捨てられた身。
両親が私を探しに来ることなどあるはずがない。
そもそも海外へと行方をくらましたはずの両親に連絡が届くかさえも未知数だった。
なら、病院側は自動的に私を施設などのところへと送ろうとするだろう。
そして、多分、これはもうすでに決定事項のはずだった。
この時代は徹底的な個人主義と資本主義の時代で、
慈善団体のようなものは、歴史の教科書にしか登場しない遠い夢物語に過ぎなかった。
だから、当然なことに施設で親切に私の病院費を支払ってくれるはずがなかった。
いや、もしかしたらそれ以前の問題かもしれない。
私は病院の医療機器なしでは、一日だって生きていられない。
今この瞬間でさえ、管を通した外部装置を通してかろうじて命をつないでいる状態だった。
だから、私が送られるのは施設などではなく、葬儀場かもしれなかった。
もしかしたら、家族がいない分、そうした手続きさえ飛ばされ、手早く火葬された後、処分されるかもしれないことだった。
結局、遅かれ早かれ二日後には私の命は終わるということであった。
私はまるで超能力者にでもなったかのように、鮮明に未来を見通すことができた。
そうか、そうなんだろうな……。
あまりにも明らかな未来だったので、理解するまでそれほど長い時間は必要じゃなかった。
それでも、そう簡単には受け入れられなくて、走馬灯のように流れる過ぎた時間の中で、ひたすら自らに問い続けた。
私は一体何をそこまで間違えたのだろう?
何をそうも間違えて、こんな目に遭わなきゃならない?
ふと、世界中が憎らしかった。
自らが果てしなくしがなく、哀れに感じられて、そんな自分に怒り同情することを繰り返した。
また、突然自分を捨てた両親が恨めしかったし、また憎たらしく思えた。
だけど、やがて押し寄せてくる罪悪感に、怒りも恨みもその場で挫折した。
一体、私に何の資格があって、彼らを恨めるというんだ?
私という存在が、一体今までどれだけ両親を苦しめていたのかを分かってはいながら、そんなことを抜かすのか!
たかが30代前半の両親なんだ。
孤児院から育てられ、ほかに頼るところもない両親だったんだ。
そんな両親が、言葉さえできない息子なんかのため、10年間休む暇もなく受け続けなければならなかったはずの苦痛とストレス。
それが繰り返され、積み重なる無惨たらしさ。
私では到底測り切れない。
きっとそれを理解すると言いながら、慰めの言葉をかけることさえ、私にはおこがましいことであろう。
心から愛した子を投げ出したくなるほど追い詰められた親の心情を、その痛みを……。
私なんかが分かるはずがない。
ふと幼い頃、転んだ私を優しく抱きしめてくれた母の姿が思い浮かんだ。
どうして今そういうことを思い出したのかは分からなかったけど、この瞬間、私の中は楽しかった頃の思い出であふれていた。
共にはしゃぎ笑いながら川辺で水遊びを楽しんでいた家族の姿から始め、父の手を握り幼稚園から帰る道の上で見つけた夕焼けの思い出や。
遅い夜、星空の下でブランコに乗った私の背中を押してくれた母の姿まで。
振り返ってみたら、楽しいことばかりだった。
それを思い浮かべていると、思わず心の奥深くから微笑みがこぼれてきて、温かくて切ない気分になった。
お二人ともとてもよく笑う人だったんだ。
私たちはあんなにも幸せだったんだ。
どうして忘れていられたのだろう?
その瞬間、あの春の日、花びらを赤く染めながら、桜の下へ埋まっていくあの冷たい景色を思い出した。
その中のどこかで、かすかにひびが入るような音を聞いたような気がした。
ああ……そうか。
流れるように次に思い出したのは、慌ただしく手術室へと運ばれながら見上げたかすかな病院の天井だった。
虚空にはっきりとひびが入るのが見えた。
そのひびはどんどんと崩れ大きくなり、どうしようもなく広がり始めた。
全部、私のせいだったんだ……
私が全部壊してしまったんだ……
何から何まで全部、私のせいで…!
私さえいなければ……
あのとき、私が痛くさえなかったければ……
みんな、みんな!幸せになれたんだろ?!
笑って生きられたんだろ!!
生まれて初めに海を見た日、両親の手を握り、初めて海に足を入れた瞬間を思い出した。
あれも…!
父の肩に登り、秋に染まった楓を撫でた時を思い出した。
あれも!
母と一緒に雪だるま家族を作りながら遊んだ姿を思い出した。
あれも!!
そうやって記憶をたどりながらたどり着いたそこには、父と母が私を優しく抱きしめてくれた瞬間が待っていた。
あまりにも優しく温かくて、なぜか泣きそうになったことを覚えている。
だけど、やがてそれさえひびに飲み込まれ、バラバラに壊れてしまった。
あれも!!これも全部!!!
私じゃなかったら!
他の誰かだったら!!
誰も苦しむことなく、幸せに暮らせたんだろ!!
何から何まで全部、私のせいで壊れてしまったのだろ…
なんで今までそんな簡単なことさえも分からなかったの?
いや、違うよね。
そうだろう、昭真?
お前は全部知っていたんだろ。
そうなんだろ?
全部分かっていたくせに、知らんふりしてきたんだろ!
知らんふりしながら、背けたかっただけじゃないか!
明芽が訪ねてくれる日常に安堵して、それだけで楽しくて、無責任に知らんふり。
私はただの被害者です、何も悪くありません!
そう、自分からを言い聞かせながら正当化しては、ただその幸福を何の代価もなしに楽しみたかっただけじゃないか!!
結局、お前は自分だけ大切だろうな…!
だから、その背後で父が、母が!
どれだけ苦しかったか、全部知っていながらも平気で目をそらし、知らんふりしてこられたんだろう!!!
そうなんだろう?!!!
何が 「 世界中が憎らしかった」だ。
何が「自らが果てしなくしがなく、哀れに感じられて」だよ……
全部お前のせいだろうが!!
死ね!
死ね!
死んじまえ!!!
お前なんか死んじまえよ!!!
なんでもっと早く死ななかったんだよ?!なあ?!!!!
お前さえ早く死んでいたら……誰も……
...
.....
なあ、昭真、頼みがある。
泣いてくれ……
今はもう何もいらないから、泣かせてくれ……
お願いだから、泣かせてよ……
涙の祈った。
どれほど切なく願おうとしても、どれだけ切迫したとしても、結局できることとは願うだけの枯れ果てた祈りだけ。
壊れた身体からは、涙は流れない。
なら、このか弱い祈りにはなんの意味があるのだろう?
どれだけ懇願に祈っても、ただ祈るだけの願いに神は耳をささない。
いつだって奇跡を与えられるのは、自らの足で動き挑戦する者たちだけだ。
祈りだけじゃ、何も変わりゃしない。
ならば、一体私はどうすれば報われるというんだ?
動くことさえ、挑むことさえ許されない私は、一体、どうやったら救われるというんだ?
その答えを得られないまま、その日はただただそうやって終わらない祈りを続けた。
それが叶うはずのない祈りだということは、知っている。
それでも……
ただそれだけが許されていた。
その夜は、祈るたびにうるさくなってゆく心臓の音に邪魔され、どうしても眠ることができなかった。
そうやって長い夜を明かしたにもかかわらず、哀惜にも時間は容赦なく流れすぎ、あっという間に二日が過ぎてしまった。
....
₍₍⚞(˶˃ ꒳ ˂˶)⚟⁾⁾
皆さんお元気でしょうか?
今週も本当にお疲れ様でした!
どうかこのメッセージを見る頃には、無事にお家にお着きになり、ごゆっくりお休みになることを心から願っています。
私は 3 日間長かったしゃっくりから解放され、今日はとてもリラックスしています。 皆さんも一週間の辛いことから解放され、気持ちの良い週末になりますように心から願っています。
いつもありがとうございます。
(⌒ ̫⌒)/




