Stay Alive Say.10. 病気.(9)
Stay Alive Say.10. 病気.(9)
足音が消えるとともに訪れた静寂は、まるで心臓を鋭利な刃物で擦り下ろすかのような、身の毛がよだつ感覚を孕んでいた。
そして、目が合った瞬間、静寂は瞬く間に私を深淵へと引きずり下ろした。
いやだ……!
死にたくない……!
悔しさや無念が恐怖と交わり、涙が流れそうになったけれど、壊れた肉身はそれすら許してはくれなかった。
そして、その瞬間、死神が扉を叩いた!
トクッ トクッ、ドゥルルッ!
心臓を直接殴るような重いノックの音と同時に、開かれる扉の音へ、息が止まりそうになった。
いや、もうとっくの前に恐怖のおかげで息は止まっていた。
しかし、それでも扉を開けて入ってくるそれが私のもとへと近づいてくるその足音は、恐怖や緊張感にはまだより高い段階があることを示してくれた。
彼は無心に近づいてきて、私の目の前で立ち止まり、一度沈黙した。
呼吸困難によって耳が遠くなり、脈拍のバイタルが激しく波打った。
しかし、死神はお構いなしに私の耳元へと落ち着いた口調で囁き始めた。
「白沢昭真さんですよね?私は今日、マクドウェル先生の代わりにこれからのことを伝えするため参りました、春咲雪陽彦と申します」
冷たく無味乾燥な男性の声。
それは普段の担当医の声ではなかった。
しかし、ある意味それが当たり前かもしれない。
死刑を宣告するのは判事だけど、その執行を下すのは警察、その中でも末端職の人であるように。
今から追い出そうとする者がどう暴れるかもさえ分からない状況に、大偉い方たちが直接現場に乗り出すはずがない。
汚いことは、権力という大義名分の下で他人にやらせればいい。
だから彼らは、彼らの代わりに私に死を与える代理人を送った。
そして彼は、今死神としてその役割を着実に果たしていた。
「調べた結果、現在昭真さんにおいては医療費の負担が大きい状況であることは理解しております、しかし、病院の方針上、治療費をお支払いいただけない場合、規定により追加入院や治療を継続することが難しくなる可能性があります」
彼は自らの役割を果たそうとするかのように言葉を続けたけれど、残念にも目の前まで迫っている死の前では、もはやどんな言葉も私には届きやしなかった。
彼が何を言おうが、私は……
ただ......ただ......!
生きたかった......!
死にたくなかった......!
こんな体だけど、いつか急に死んでしまうかもしれないこんな体だけど、死にたくはなかった。
まだやってみなかったことたちが、見たこともないものたちが山ほどあった。
何よりも、まだ明芽にお別れを言っていない。
明芽....
幼い頃からずっと一緒で、こんな体になってからもそばに来てくれる唯一な人。
叶うはずのない想いだとゆうことを誰よりもよく知っている、伝えてはいけない想いだとゆうことも分かっている。
抱くすべてが、私にはあまりにも勿体ないもので、それを望むことさえ手に余る欲だということを誰よりもよく知っている。
だからこそ、今まで精一杯自分の心を押し殺してきた。
だから、今抱いているこの感情は、恋人になりたいという出過ぎた恋心でも、一生そばにいたいという贅沢な望みでもない。
私はただ、彼女の声をもう一度聞きたい。
時々訪ねて聞かせてくれる彼女のささやかな物語が好きだった。
彼女の声から時折にじみ出る寂しさに胸が詰まるようになるときもあったけれど、それでも軽く振り払って立ち上がっては、強く生きようとする彼女の声に引かれて、私もまた生きようと誓えた。
だから、まだ……。
まだ死にたくない。
死にたくはなかった。
それがどれほど贅沢でわがままな願いか、今はもう分かっている。
それでも、私は……!
まだ生きていたい。
生きて、たった一瞬だけでもいいから、もう一度彼女に出会って、私の本当の気持ちを……。
最後の別れを言いたい。
生きていたいけど、また昔のように彼女のそばを歩んでいきたかったけど、もうあの場所には戻れないと知っているから……。
私は彼女にちゃんと最後の挨拶がしたい。
今までありがとうだと、もうさようならだとちゃんと伝えたい。
それでいい。
もうそれでいいから。
これ以上欲張らないから……。
もう少しだけ、もう少しだけでいいから私に時間をください。
全部終わりにするから……。
もう一度だけ、彼女を待たせてください……。
私はまだ彼女に何も……何も伝えていないのに……。
「 しかし、病院の方針上、治療費をお支払いいただけない場合、規定により追加入院や治療を継続することが難しくなる可能性があります..... しかし、偶然か運命か、本来ならありえない話だけど……、まあ、混乱を避けるために単刀直入に言います、私の本社、ホワイトペーパーから昭真さんの病院費である30万円を代わりにお支払いしました」
私が混乱する隙もなく、男性は私の手の甲に注射針を突きつけた。
一般的な薬物注射用とは明らかに異なり、中身が見えない機械式の注射器。
「ただし、これは今月限りの取引、次はいない、本来ならありえない話、例外中の例外、すでに満席はとっくの前に超え、あなたにもあの子にも戻るはずもない機会、だから、もしあなたがこれからも生きたいと願うなら、その意思があるとするなら、今度は自分の手でそのチャンスを掴んでみてください」
男性はそこまで言っては、私の手の甲に注射器の中身を注射した。
すると手の甲の中で何かの機械が定着したかのように、皮膚の中でひし形の青いほのかな光が漂い始めた。
「それでは、昭真さん、もしあなたがこの機会を活かすことができたなら、また来月お会いしましょう、幸運を祈ります」
そう言った男性が注射器を抜くと、手の甲の中で機械のようなものが作動し始めたかのように、青いひし形の中から真っ白な円形の光が輝き始めた。
そして同時に、突然頭の中が膨大な光で染められ始めた。
「看護師の真似は疲れる……」
男性がため息とともに再び口を開けたとき、もはや以前のような丁寧さは見つけられなかった。
その声は冷たくて厳重だったけれど、どこかすごく疲れているようにも感じられた。
私が状況を理解するにも前に、男性は言葉を繋いた。
「あの子が突如私のところに来たときは冷や汗をかくしかなかった、まさか今になって再び会うことになるとは思わなかったからな……」
男性は私の精神が完全に吹き飛ぶ前に最後に何かを呟いたように見えたけれど、このときの私には恐怖と混乱、そして何より突然頭の中がどこかへと吹き飛ばされるような感覚のせいで、どうしてもそれを聞き取ることができなかった。
「白沢昭真、まだお前があの子にとってどんな存在であるのか、どんな意味を持つ者であるのかは、あえて聞かないでおこう、だけど、お前に本当にあの子をあそこまで動かせるほどの何かがあるとするなら、お前はこの一か月でそれを証明しなければならない、だから、もし生き残りたいのなら、お前に本当にそういう価値があるとするなら、今度は自分の力で生き残ってみろ、応援はしないまま、待つことにしよう……」
彼の言葉が終わると共に、私の精神は膨大な光に溶け、次元の彼方へとの旅を始めた。
そしてその瞬間、遠い彼方から月を背にしてオーロラに染まる世界を見下ろしていた謎めいた男性は、何かを感じ取ったかのように顔を上げて何かを見つめた。
そのプリズムのような虹色の瞳は、まるで松明のように七色の白炎で揺らめいていた。
「つ...に...んだ、....界...大....提。」
彼は何かを言おうとしたが、激しいノイズによってその意味を知ることはできなかった。
-Say.2.病気.END.
-Next say.新しい世界.
-To be continued....
(๑ - ̫ • )♡♬
皆さん、今週もお会いできて嬉しいです。 皆さんお元気でしたか? 私はいつものように皆さんの平和と安寧を望みます。
今週を最後に、Stay Aliveの2回目のエピソードが幕を閉じました。
果たしてこれから、昭真にどんな物語が待っているのか、皆さん楽しみにしていてください。
前置きはここまでにして、皆さん今週もお越しいただきありがとうございました。 どうぞリラックスして幸せな週末をお過ごしください。今週も本当にお疲れ様でした。 私は今日も短い文で皆さんの週末に少しでも楽しさを加えることができることを願いながら文を残します。
♥︎⸜( ˙ ˘ ˙)⸝♡




