Broefing
愉快な遠足の始まりだ
「どうやら貴様は運勢だけでなく記憶力も残念なことになっていたようだな!まさか男と女を間違えるとは!」
「くっ…………」
豪快に笑うバードマンを睨む。シゲちゃん………もといアビゲイルに聞いた話によれば『『嵐獣旅団』』は全員がコールサインやプレイヤーネームに動物をもじった名前をつけているのが特徴の、『教会』勢力最大規模のクランだそうだ。このバードマンも、ゲーム内トップクラスの実力者らしい。
そんな相手の期限を損ねるわけにもいかないし、実際シゲちゃんもずっと僕が彼女を男だと思い込んでいたことを初めて知ってショックを受けていたので文句を言うに言えない。
「………それは一旦置いておいて、ここはどこなんだ?」
そんなすごい人物が出てきている場所だいやな予感がする。そのいやな予感は、バードマンが笑みを浮かべたところで革新的なものに変わった。
「喜べ初心者小僧、ここは…………」
その言葉を聞いた時、僕は決意した。もし、仮に神様が実在して、運命とかで僕らの人生の道行を決めてるのだとしたら、
「現在開拓中のマップの端。対デウスの最前線だ。」
一発ぶん殴るどころかこのアサルトライフルを口に突っ込んで斉射して、絶対にその顔面をひき肉に変えてやると。
「シャーマン!今戻ったぞ!」
「あら?随分と早かったじゃない。もう終わったの?っと、連れてきたのね。」
一番大きなテントに通され、扉を開けた先の作戦指令室にいたのは、すらっとした長髪の美丈夫といえるようなアバターだった。教会のカラーである赤ベースの軍服とは違い、彼が身につけているのは実践的な迷彩服。その質感などが僕の身に纏っている物と違って見えるが、カラーリングは同じだ。
「紹介するぞ。そこの奴が今回雇ったギルド所属の傭兵クラン 『芋砂契約会社』通称『PSC』のリーダー、『シャーマンポテト』だ。」
「よろしくね、新人ちゃん。」
バードマンの紹紹介、優雅な動作で手を振るシャーマンポテト。作戦ルームには他にも何人かのプレイヤー、そしてNPCが居た。それを確認したバードマンは、その手につけていた腕時計の用デバイスを起動して、
「これより作戦第三段階へと移行する前の最後のブリーフィングを行う!ベースキャンプ内の第三、第四段階待機組のごくつぶし共は全員ホログラフィックデバイスを起動するかモニターの前に集まれ!今すぐにだ!」
怒声が轟いた。即座にこのルームのオペレーター達、特に教会所属の者たちが素早く動き出し、モニターに映る戦場の様子などが切り替わる。
「では、このギルド、教会両陣営による合同作戦 その第三段階へ移行する!この作戦の目標は、くそったれのデウスに制圧されたフノワ基地の奪還、そしてここを制圧しているくそったれの大型デウス『ブリアオウス』の討伐にある!」
中央の電子テーブルをシャーマンポテトが捜査すると、そこに立体ホログラムが展開される。塀に峡谷地帯の崖を利用した防衛拠点。その中央の、破壊された砲台の上に、巨大な鋼鉄の機体が鎮座している。
「喜べ、第三段階にアサインされた貴様らは貧乏くじを引いた!天然の要塞であるこの崖を利用した基地内部に装甲車両で突入し、内部の小型デウス共を殲滅!奪われた指揮系統を復活させるのが目的だ!」
立体ホログラムが侵入経路の詳細を示す。機関砲を装備した複数人を運搬可能な装甲車両。でも………
「無論、これらの戦力だけでは敵防衛線の突破は不可能だ。よってシャーマンポテト率いる砲撃部隊による支援砲撃を行い、敵戦力の数を減らす。おまけに突入までの護衛もつけてやる!うちからはコールサイン、W4ヴォルフガングのウルフ小隊、 W5アンゲルズのタートル小隊、そして副団長であるW2シロナガスコーヒーのホエール小隊、3つの小隊が護衛に着く、」
「PSCからもアビゲイルとフルアーマイタケの二人を出すわ。教会と違って小隊は組んでないけど実力は折り紙つきよ。」
「内部の情報は逐一報告するよう心がけろ、ではブリーフィングは以上だ。急ぎ作戦の準備をしろ!第四段階であるブリアオウス討伐戦に参加するものはこれから居残りでデウスの分析だ!」
なんだかメンバーの個性が濃いPSCと、動物に数字の描かれたエンブレムが特徴的なワイルドハントの面々が表示される。が、なぜにコーヒー?クジラじゃないのか?
「新人!貴様はちょうどトレーラーに空きがあったW4、W5が主導する部隊に入れ。初期装備のアサルトライフルなんぞここでは鉄屑以外の価値はない!無反動砲を支給するから装備しておけ!」
「それじゃあコウ君、また後でね!」
アビゲイルも走り去って行く。
「了解。」
「返事はサー・イエッサーだ馬鹿者!」
「サー・イエッサー!」
……………そんなこと、今まで言ってなかっただろ
バードマン、及びワイルドハンドの元ネタは言わずもがなあの部隊です。