96 ウエスタン城は、お気に入りのようです
侯爵の領地屋敷は、ほぼお城のようです。
ベス嬢とウエスタン城の中を見て回った。案内は家令のチェロスさんだ。メイド長のスザンヌさんと私の専属メイドのジュリちゃん、ウホン、ジュリ、そしてベス嬢の専属メイド兼警護のオートマトン初号機も一緒だ。
まず、先ほど騎士叙任式を行った1階大広間だ。ここは、バーティ会場であるとともに、各種式典を行う場所で、2階から降りてくる大階段が左右にある、いかにも王侯貴族が集う雰囲気の場所だ。撤去没収されたシャンデリアも今はきちんと吹き抜けの天井からぶら下がっている。1階奥には、来客と面談する応接室が3つと、麾下の貴族たちと会議を行う大会議室が1つある。来賓用の遊戯室や音楽室それと小食堂もあり、まあ、無駄に広い感じがする。あ、小食堂といっても20人は座れる長いダイニングテーブルがセットされており、地下の大食堂よりは少し小さい程度らしい。最初にこのお城に来た時には、なんか金ぴか成金主義の好みそうな作りだったが、壁や床に張られていた金箔や金メッキはすべてはがされ、茶色を基調としたシックなつくりとされていた。バックヤードも、それなりの部材できちんと造作され直しており、表側だけ豪華、うらはボロ家という極端な差はなくなっている。いくらバックヤードといっても、そこで働く使用人の心まで貧しくしたくなんかないもんね。あ、裏庭に面したところには、地下の大浴場とは別に露天風呂を作って貰った。本当は、温泉も欲しかったのだが、それは今度ゆっくり掘ってみることにしよう。
地下は2階あり、地下1階は倉庫や食堂、厨房、大浴場、娯楽室などのプライベートルームだ。あ、トレーニングルームと100畳ほどの道場もある。ちなみに、剣道の試合をする場合の広さは100平方mなので、約30畳となるので、この道場の広さなら十分すぎる位だ。なんて素敵な施設なんだ。
地下2階は、武器庫や留置場、それに留置場に例の部屋だ。例の秘密の隠し金庫部屋もあるが、結界を張って誰も開けられないようにしているので、地下2階は見ることもないだろう。
1階を見終わったので、2階に上がってみる。2階は、貴賓室が5部屋と当主執務室が廊下の南側にあり、北側は、会議室や事務室が並んでいる。貴賓室からは、表庭に面したベランダに出られるようになっていて、とんでもなく広い表庭が一望できた。無駄に部屋が大きいのは、什器類が入っていないからかもしれないが、私の執務室にあるミーティングデスクだけで40脚の椅子って、こんな広い部屋で、一人で事務を執るんですかね。
3階は、階段を上がった先の角部屋が私達の部屋になり、大きさは40畳くらい、もちろん、控えの間やバス、トイレ、クローゼット付きだが、クローゼット専用部屋は別にあるので、今着ている服を収納するのに使うのだろう。簡単な給湯セットもあるが、基本、メイドがサービスをするので、この部屋の給湯器を使うことはあまりないかも知れない。ベッドは、大きなキングサイズの天蓋付きのベッドなのだが、ベス嬢、顔を赤くして何を想像しているのですか?あと、ベス嬢専用の部屋が隣にあり、クイーンサイズのベッドと執務机や裁縫机などが設置されている。もちろん、十分すぎるクローゼットやバス・トイレ付なのは当たり前だ。そのほか、子供部屋だろうか、似たような広さの部屋がたくさん並んでおり、こんなに子供は作らないだろうと思ったら、チェロスさんが、この部屋は、子供部屋だけではなく愛人や第2夫人用にも使うものだと教えてくれた。あ、本当にいらないからね。あと、日常使いの厨房と食堂それと娯楽室があるけど、これって必要ですかね。
4階は、使用人たちの使うスペースということだが、執事部屋やメイド部屋があるが、家令のチェロスさんは結婚されているので、敷地内にある集合住宅に奥さんと一緒に住んでいるそうだ。もちろん、使用人専用の厨房や食堂、大浴場もあるが、いったいお風呂がいくつあるんですかね。
ベス嬢が、尖塔の上に登ってみたいというので、6階までグルグル回りながら登って行ったが、見晴らしのよさに満足したみたいだ。まあ、高いところは私も好きだからいいけど、まあ、平素は登らないだろうね。
敷地内には、使用人用の集合住宅と、騎士団用の単身寮や家族領が裏手に並んでおり、第2城門から入ったすぐのところには、今は無人の騎士団本部がある。オートマトン兵が事務仕事ができるかどうか分からないが、初号機を見てみると、何でもできそうなので、クロウズさんに試しに使ってもらうことにしよう。
チェロスさんから、什器や雑貨類が圧倒的に足りないので、これからかなりの出費がかかるかも知れないと言われたが、領内でお金を使うのも、貴族の務めなので、華美にならない程度でそろえてもらうようにお願いした。買い物と聞いて、スザンヌさんが気合を込めているのは何故ですか。
外に出て、厩舎に行ってみると、20頭ほどの馬が飼育されていた。グレイ達が乗ってきた馬が10頭増えるし、あと手間はかからないがゴーレム馬が8体いるので、一気に厩舎が手狭になってしまった。仕方がないので、既存の厩の隣に、新しい厩舎を土魔法で作ってみる。あれ、ゴーレム馬用の方が立派になってしまったかもしれない。あと、馬の蹄鉄を打つ鍛冶工房や飼料用のサイロなど、もうほとんど牧場のような厩舎で、20人以上の馬丁が働いていた。まあ、グレイ達の乗ってきた馬は、騎士団本部裏手にある騎士専用の厩舎に入るだろうけど、いまは馬丁もいないので、この厩で世話をしていかなければならないだろうね。
厩舎の隣には馬車用の納屋があり、8人乗り用の大型から2人乗りのランナバウトまで7輌も置かれていた。皆、竜と互い剣の家紋がドアに描かれており、ウエスタン侯爵家と一目で分かるようになっている。
城内に戻って、使用人達を大広間に集めてもらった。私から一言挨拶をする予定だ。ばらばらと集まってもらったが、何故か皆若い感じがする。聞くと、もと働いていた人たちの子供たちが就職してきたらしいのだ。もともといた使用人のほとんどは、いったん解雇されたが、再就職先も決まった後で、お城で再募集が始まったので、もう間に合わなかったらしいのだ。私の挨拶が始まった。
「皆さん、前にお会いした方もいるでしょうが、当城の主となりますフレデリック・フォン・ランカスター・ウエスタンです。私が初代となりますが、子々孫々まで、ウエスタン侯爵家が繁栄できるよう励むつもりです。宜しくお願いします。」
ここで一礼したところ、皆がざわめいた。貴族は、平民に頭を下げないし、まして使用人に頭を下げるなど前代未聞のことなのだろう。
「私は、見た通り、今年8歳になる若輩者です。このお城のことも、市内の情勢もわからない事ばかりです。でも皆さんと一緒に、このお城を王国中に自慢できるお城にしたいと考えています。あ、でも決して煌びやかとか豪勢にするわけではありません訳ではありません。私は、このお城を訪れる人が気持ちよく過ごせるお城にしたいと思っています。」
「最初に、常に清潔なお城に心がけてください。外から帰ってきたら必ず石鹸で手洗いをお願いします。クリーンの魔法を使える人は、それでも結構ですが、外から悪い病気を持ち込まないようにお願いします。また、見えるところではなく、見えないところこそ綺麗にするように心がけてください。」
「次に、楽しく働きやすいお城になるよう心がけてください。そのための挨拶を幾つか決めます。おはようございます。こんにちわ。こんばんわ。いただきます。ごちそうさまでした。おやすみなさい。これらの挨拶は、ここで生活するための基本です。挨拶は心の架け橋です。ぜひ徹底をお願いします。」
「あのう、いただきますとか、ごちそうさまでしたと言うのは何なのでしょうか?」
「はい、これは食事の前後に言う言葉で、食事をすると言うことは、生きているものの命をいただき、農家の人達の苦労の成果をいただき、作ってくれた人の手間と思いをいただくと言うことです。この気持ちを感謝を込めて『いただきます。』と言うのです。『ごちそうさまでした。』は、作ってくれた人に対する感謝の気持ちです。自分で作ったとしても、素材や調味料は誰かが作ってくれたのですから、おかしくありません。」
「最後に、安全、安心なお城を作り上げましょう。安全とは、危険のない状態もことです。誰でもが、安全に責任があります。気づいた危険を決して放置することなく、必ず報告し是正しましょう。その積み重ねが安全なお城を作り上げて、そういう安全なお城に住むことが安心を生むのです。以上が、私の挨拶とお願いになります。」
最後に、今日集まってくれた人達全員にご祝儀として金貨1枚の入った紙包をチェロスさんに配って貰って挨拶を終えた。
次話は、明日、6:00に投稿予定です。




