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76 神の啓示があるようです

久しぶりの神様登場です。

 シスターから色々な話を聞いてから、たまには神様にお祈りでもしようかと、正面の礼拝堂に入っていった。今まで礼拝堂というと崇高な雰囲気を醸し出すためにステンドガラスやフレスコ画で飾り立てられ、ものすごい数の蝋燭が立っているシャンデリアなどがぶら下がっていたものだが、ここは気持ちが良いほど、何もなかった。確かに、正面には、元の世界の教会にあるような十字架に磔つけられている救世主の像が祭られているが、それだけだった。あとは、何もなかった。もちろん、パイプオルガンもなければ、聖歌隊が並ぶひな壇もない。祭壇も、簡単な木の台があるだけ。大きな机もなくって、聖書は、手に持って読み上げるのだろうか。薄暗いなと思ったら、窓が極端に少なく、当然、窓にガラスなどはめられていない。雨戸がつっかえ棒で少し、開けられているだけだった。


 粗末な祭壇に向かって、膝まづき、『創造神テスラ様』に対してお祈りをする。目を瞑っているのに、周囲が白い光に包まれていくのが感じられる。目を開けても白い世界なのは分かっているので、瞑ったままにしている。


   『もう、本当に久しぶりだね。3年ぶりくらいかな。1年に1回位は教会に来なよ。』


   「お久しぶりです。あのう、少し聞きたいことがあるんですが。」


   『いいよ、答えられることならね。』


   「今から2000年前くらいに、『イスズ様』という救世主がおられたと聞いたのですが。」


   『うん、いたよ。かわいそうに。神の子がすべての王といったせいで、時の権力者に罪人と一緒に磔の刑に処せられちゃった。』


   「それって、もしかして?」


   『うん、そうだよ。君の元の世界での『イエス・キリスト』さ。彼、かわいそうだから、この世界に転生させたんだけど、この世界でも受け入れられずに磔になってしまったんだ。もう、あまりにも優しすぎるからだね。』


   「彼は、今は?」


   『もちろん、私たちと一緒にいるよ。だって、神に昇格したんだもの。』


   「それは良かった。それと、レベルやステータスについて聞きたいんですけど。」


   『あ、説明しなかった。この世界には、レベルとステータスに上限があってね、レベルもステータスも『99』が上限なんだ。でも、たまに限界を超える逸材もいてね、それでレベル以外の上限を『999』まで上げられることがあるんだ。いわゆる『限界突破』ね。これって、10万人に1人いるかどうかっていうレアスキルなんだ。あ、もう、3人は知っているよね。』


   ゾリゲンさんに、シュリンガーさん、それとバイオフォンさんのことだろう。


   『もちろん、君はレベル以外の上限なんかないよ。頑張れば100万超えも可能だから。でも、それじゃあ息を吹きかけるだけでドラゴンが死んじゃうけどね。あ、魔物は固有の上限があるから一概に限界が幾つって言えないけどね。』


   「それと、すでに使えるのにスキル表示がないのは?」


   『あ、それ。そこを気にする。いいじゃない、使えるんだから。まあ、説明すると、全部表示する設定が面倒だからかな。どうしても確認したかったら、そのスキル名を唱えてから鑑定してご覧。そのスキルの詳細情報がわかるから。あ、それって君だけだよ。』


   「それと、この世界で最強者って誰ですか?」


   『現在の段階だと、そうだな。魔王かな。今、魔王と戦ったら、間違いなく死ぬからね。世界最強になるためには、7人の剣聖と戦って勝つことが必要かな。君の周囲にいる2人も含めてね。まだ1人にしか勝ってないしね。あ、時間かな。それじゃあ1年後にね。バイチー。』


 訳の分からない言葉を残して、神の啓示は終わった。目をゆっくり開けると、さっきの汚い祭壇の前だった。7人の剣聖と勝負して勝つこと、これが私の最強への道標なのだろう。まだ1人にしか勝ってないということは、あの近衛騎士団長のダルシアさんは除外していいのだろう。まあ、勝手に剣聖を名乗ったみたいだしね。


 教会の事務室に戻ってから、シスターに大金貨1枚を寄付した。


   「神の御加護を。」


 あ、もう貰っています。孤児院は、外から見ただけだが、元気な子供たちの声が聞こえてきた。でも、皆痩せていて、栄養状態はあまりよくないみたいだ。ジムさんの話では、この教会と孤児院をつぶせと言っている方もいるみたいだが、スラム街の孤児院はここだけなので、ここがなくなると、大勢の子供たちが死んでしまうだろうとのことだった。うん、これはベンジャミンさんと要相談だね。


 この市は、無駄に広いようで、いたるところに開発が手つかずの森が散在している。住民の数と市域の広さがマッチしていないのだろう。外壁にしたって、あれを補修していくだけで莫大な予算が必要となるだろう。うーん、必要な人達に必要な予算が渡るようにするためには、もっと効率の良い市政運営をしていかなければ。あ、それって7歳の坊やが考えることじゃあないよね。




 結局、私が王都に戻ったのは、7月も終わりかかった頃だった。帰ると同時に、王城に参内することとなった。戦勝報告のためだ。でも、それって、とっくにブロンコ辺境伯から報告が上がっていたんじゃないですか?


 私から、特に報告すべき特段の理由もないんですけど。しかし、父上がニコニコしながら一緒に登城しているので、きっと何かいいことがあるんだろう。


 王城では、まっすぐ国王陛下の執務室に向かった。謁見の間でも会議室でもなく執務室だ。何だろう。いいことがある気がしない。別の任務が言い渡されたら、腹痛と言って、トイレに逃げて、そのまま窓からどこかへ行ってしまえばいいかな。そんな馬鹿なことを考えていたら、あっという間に執務室に到着してしまった。


   「臣フレデリック・フォン・ウエスタン、お呼びにより参上いたしました。」


   「まあ、固くなるな。そこに座れ。」


 今日は、ソファセットが片付けられてなく、そのまま座ることにした。ザイン宰相は、後ろの事務机で何か書類仕事をしている。父上は私の隣に座って、ニコニコしている。父上、確実に太ったでしょう。ソファのクッションがボヨンボヨンしていますよ。


   「これを受け取れ。」


 封蝋がされている巻紙を受け取った。開いてみると、将来にわたり、『向こう10年間、国庫負担金を免除する。』と書かれている。うん、これはありがたい。ありがたいけど、今だって免除されているし、それをちょっと延長するだけなんてけち臭いなと思う。思ったけど、黙っていることにした。黙っている。何も言わずに詔書を読んでいる。何も言わない。じーっ!


   「な、なんじゃ。不満か。3年のところを大奮発して10年に延長したのじゃ。もっと喜ぶと思ったがの。」


 あ、3年だったんだ。本当、けち臭いな。まあ、いいけど。


   「有難き幸せ。身に余る光栄です。それで、今回の恩賞はこれだけでしょうか?」


   「ギクッ!そ、それだけな訳があるか、のう、ザイン宰相。」


   「え、私ですか?恩賞ですよね。十分じゃないんですか?」


   「はあ、そうですか。この前いただいた侯爵領も収入は見込めずに持ち出しばかりだし、今まで払っていなかった国庫負担金の猶予期間を延長されても、それほどとは思えないんですけど。」


   「ザ、サイン宰相。な、何かないか?」


   「何かと言われましても。ウエスタン卿、何が望みだ。」


   「はい、人をください。内政に明るいものを20人と騎士団長候補者あと、騎士団員を30名ほど。いかがでしょうか?」


 私は、金銭よりも人を望んだ。今、ウエスタン領で最も必要なのは、優秀な人材だ。ここは、王室の権威と優秀な国家公務員をぜひ斡旋して貰いたいものだ。そうだ、宰相にお願いして、王都の騎士団の採用試験の際にぜひ、当ウエスタン領騎士団の採用試験も併設して貰うようお願いしよう。もちろん、どちらに行くかは受験者の希望を優先するが、王都騎士団を落選した人材でも優秀な者がいるかも知れない。ぜひ、それはお願いしよう。


 そう、お願いしたが、一点、確認されたことがある。それは採用基準だ。そんなことは決まっている。私よりも強いことだ。あの、ヴァイオフォンさんと剣を交えて勝てないまでも、いい勝負ができるような人材が欲しい。こんな7歳の子供など歯牙にもかけないほどの強さがあれば、ぜひ我が騎士団に来てもらいたいものだ。


   「ウエスタン卿、それは本心で言っているのか?」


   「もちろんです。国王陛下。私のような若輩者、強者を求めて何がおかしいでしょうか?」


   「お主、もっと世間を見てまいれ。」


 何を言っているんだろう。解せぬ。

 フレデリック君より強い者を探し出すのは大変です。

 次話は、明日6:00に投稿予定です。

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