67 7歳って成人扱いのようです
今回は戦闘?回になります。7歳の子に何を期待しているんでしょうか。
私は、今月で7歳3か月だ。日本では、小学2年生ですよ。そんな子に国土防衛を任せるなんて。第二次大戦時の少年兵だって、もっと大きかったような気がするんですが。
「父上、私の具体的任務は?」
「うむ、集結しつつある旧ダメンズ派の反乱軍を撃破、ブロンコ市の防衛完遂じゃな。」
父上、簡単に言いますが、ご自分でやったらいかがですか?まあ、やりますけど。宰相から命令書を受領すると、そのまま、国王陛下執務室に案内された。国王陛下と、王妃陛下、シンシア様とブルーム様、イグノリア第二王子の5人が揃っていた。王家が執務室に揃うなんて珍しいこともあるなと思ったら、今回の討伐遠征、かなり危険な任務の様で、出征の無事を祈るとともに激励お茶会を開いていただくようだ。でも、なんで執務室なの。そういえば、国王陛下以下、全員騎士服を着ている。なんか、非常事態宣言下のお茶会みたいですね。
「フレデリック、この場だけでよいのじゃが、作戦があれば教えてくれんか?ブルームが心配して泣きべそをかいておるんじゃ。」
そういえば、ブルーム殿下、お目目が真っ赤ですよ。
「作戦と言うほどのことはありませんが、明日中には単身ブロンコ市内に入り、旧ダメンズ侯爵派の反乱軍を迎撃、殲滅するつもりです。その後、反転、山岳国境を越えてくるツーリ王国の侵略軍を撃退する予定ですが、作戦名は『ガンガン行こうぜ』作戦です。」
「変わった作戦名じゃな。武運を祈っておるぞ。これ、ブルーム、泣くな。イグノリアが怖がっているではないか。」
イグノリア王子の扱いが幼児並なのは置いておいて、国王陛下も今回のことは心配しているんだろうね。皆さんの不安そうなお顔をみていると、『必ず帰ってきますからね。』とお約束してしまっていた。
ランカスター邸に戻ると、スザンヌさんに鎧、兜と最近仕立ててもらったチェーンメイル、つまり鎖帷子を準備してもらう。途中、母上のところに寄ったら、何も言わずにギュッと抱きしめてくれた。腕がかすかに震えている。残念な母でも、今回の戦闘の危険さは十分に理解しているようだ。
装備を整えて中庭にでたら、ゾリゲン団長とルッツさんが遠征部隊をそろえていた。遠征部隊の隊長は、ルッツさん、隊員は精鋭30騎だ。王都からブロンコ市まで700キロ、馬を替えて最大速度で走っても、7日はかかってしまう。まして、途中、反乱軍もいるのだ。10日はかかるとみて間違いないだろう。しかも、敵の規模は不明とはいえ、騎士崩れとゴロツキどもの集団だ。100や200ではきかないだろう。それを30騎で撃破なんて、作戦どころではなく無謀な挑戦にしか過ぎない。まあ、この部隊が実際の戦闘になってしまったら負け戦確定なんだけど。
「ルッツさん達は、急ぐことなく、のんびりと来てください。そうですね、ブロンコ領とウエスタン領の領境の街に15日後に来てください。決して馬をつぶさないようにね。皆さんが到着した時には、もう終わっていると思いますから。」
「坊ちゃん、何を言っているんですかい。坊ちゃん一人で何をするつもりですか?」
「私、一人じゃないよ。ホワイトとシュナちゃんもいるし。」
ジュリちゃんが、完全装備のホワイトとバスケットに入れたシュナちゃんを連れてきた。ホワイトは、頭、首、背中を特製チェーンメイルで覆い、その上から鞍を付けている。シュナちゃんは、バスケットの中で丸くなって寝ている。かわいい。バスケットは、鞍の後ろに結わえ付けられている。
ホワイトにまたがり、皆に手を振って、
「じゃあ、行ってくるね、」
そのまま、上空へ浮遊する。約150m上空でいったん停止する。うん、目標は50キロ先の上空だ。ホワイトの前に『ゲート』が現れる。その先の景色が『ゲート』を通じて見える。ホワイトごと、『ゲート』を通過する。もう眼下は田園地帯だ。取り敢えず、あと2回やって、ネオ・ディオール市上空に転移する。フレイズさんに会って、状況を聞くつもりだ。フレイズさん、行政庁で執務中だったが、私の完全戦闘装備を見てびっくりしていた。ウエスタン領内の状況を聞くと、すでに情報は入手済みで、ウエスタン領西部と南部の元ダメンズ侯爵の寄子だった貴族たちのうち、廃爵されて領地を取り上げられた貴族たちが決起したらしいとのことだった。その数、800騎。そのほか、ダメンズ侯爵の後ろ盾で甘い汁を吸っていた無頼集団が1200名、総数2000名の大部隊がブロンコ市に向けて進行中とのことだった。
聞くと、かなりまずい状況だ。宰相からの情報では、ブロンコ辺境伯麾下の部隊は、騎士300、兵士600と言っていた。もともと峻険な山岳地帯が国境線だったため、いかにツーリ王国が強兵と言えど、それ程の大量の軍馬が押し寄せることなど想定していないし、山岳戦をしながら応援部隊を待てば十分に対処できるはずだったのだ。しかし、今は、応援どころではなく、背面からも内応した反乱軍が攻めてきているのだ。さすが前後2面を守るのは困難と言えるだろう。
ツーリ王国の侵略軍の規模は知らないが、まずは、背面の反乱軍を何とかしなければならないだろう。私は、フレイズさんに、この辺で石油の湧いているところがないか聞いた。フレイズさん、石油は知らなかったが黒くて臭い水が湧き出ている泉のことは知っていて、この街から南に30キロ位のところの谷に湧き出ているらしいとのことだった。私は、フレイズ市中の酒屋さんや油屋さんから樽を集めてもらって、かなりの数の樽を『ストレージ』にしまい込んだ。もちろん、油を詰め込むためだ。
ホワイトとシュナちゃんをフレイズさんに預けて、南に向け飛翔していく。フレイズさんの言っていた谷はすぐに分かった。遠くからでも、石油独特の匂いがしている。私は、臭くて目が痛くなるのを我慢して、谷底に降りると、泥と混じっている原油を精製しながら、引火性の高いナフサ成分のみを樽に詰め込んでいく。蓋をしたら、その蓋に硫黄と黄燐で発火薬を塗り込んでいく。こういう時、錬金術は超便利だ。すべての樽の仕込みが終わったら、『ストレージ』に収納して準備完了。一旦ネオ・ディオール市に戻って、今日はホテルに宿泊することにした。
翌日、ウエスタン領に向け、『空間転移』を繰り返し、お昼前にはウエスタン領とブロンコ領の領境上空に至った。周囲を見回したところ、3キロ程先に黒い煙が立ち上っている。その上空に飛翔すると、眼下に燃え上がっている村が見えた。人の気配はない。村人は、全て死んだか、どこかに連れ去られてしまったのだろうか。襲撃した者たちの姿もなかった。ゆっくり地上に降りてみると、殺された村民たちが放置されている。酷い。小さな子供まで殺されている。襲撃した者達は、一体、何が目的だったのだろうか。シュナちゃんが、バスケットの中で興奮して吠えている。ホワイトは、血の濃厚な匂いにちょっとビビっているようだ。
襲撃した者たちの下卑た匂いが村の西の方に向かっている。村の出口には多数の蹄の跡が残されていた。どうやらそのまま西に向かったようだ。上空300mまで上昇してみる。さすがに軍勢の姿までは見えないが、砂埃が微かに見えた。おそらく、部隊の殿がいるのだろう。その上空に『ゲート』を開いて転移してみた。
いた。
眼下に武装した騎士や無頼達が約100騎ほど、それと若い女のみ乗せた馬車が2両が西に向かい走っていた。若い女性は、ほとんど着衣がない状況だった。奴らの前方に『ファイア』を落として、威嚇する。もう、彼らの乗った馬たちは棹立ちになったり暴れ始めて落馬する者が続出している。私は、爆破があった地点の前方にホワイトごと降りて、馬上から降りて、ゆっくり『聖剣グラム』を抜き放った。魔力を込めていく。真っ赤に燃え上がった『聖剣グラム』、刃体の長さが1m位に伸びている。そのまま燃える剣を横に払った。紅蓮の炎が地面すれすれを這うように飛んでいき、馬ごと兵士たちを上下に切断していく。馬車まで被害が及ばないように威力を調整した結果、20騎程が生き残っている。そのまま『瞬動』で接近し、残りの者達を殲滅していく。鎧ごと、兜ごと、盾ごと切り裂いていった。こいつらは絶対に許せない。本当は生きていることが悔やまれるほどの苦痛を与えてやりたいが、女の人たちをすぐに助けなければならない。もう、何も考えられない。さっき村で見た子供の遺体の状況が目に浮かぶ。切り続けていながら、涙が止まらない。もう少し私が早く来ていれば、昨日のうちに対処していればと悔やんでも悔やみきれなかった。
あっという間に、敵はいなくなった。返り血は浴びていない。『聖剣グラム』の炎を消し、納刀した。ほぼ裸の女の人の一人に声をかけてあげる。
「ウエスタン領の者です。皆さんは、このままホワイト領の方に逃げてください。着るものはありますか。」
一人の女性が頷きながら、皆の服を入れた袋を差し上げている。うん、良かった。
「こいつらの体から金目の物を奪って下さい。皆さんのこれからの生活の足しになるかも知れませんから。」
そういうと、踵を返してホワイトのところに戻った。さあ、次の目標に向けて急ごう。
聖剣グラムの威力は半端ないです。もう、フレデリック君、完全に人間やめてますね。
次話は、明日6:00に投稿いたします。




