51 アラモード砦は楽しそうです
何も娯楽のない砦の生活では、何かあると飲み会になるみたいです。
夕方、アラモード砦に到着した。この砦の守備隊は、ノウリス辺境伯軍の騎士さんと兵士さん達だ。兵士さん達は、15歳から18歳の男女が、2年間徴兵された方達だが、当然、給料も出ているし、衣食住も保証されているので、年季が明けても除隊せずに、そのまま志願兵として働く兵士が多いそうだ。騎士達は、兵士と違って階級がなく役職で指揮命令系統を明らかにしているが、兵士は階級制となっている。下から、兵卒、伍長、軍曹、尉官、佐官となっている。日本の一般会社では、兵卒が一般社員、伍長が係長、軍曹が課長、尉官が部長、佐官が本部長クラスなのであろう。それ以上の役職は騎士でなければなれないようだ。
砦の責任者は、バニー・フォン・ノウリス騎士爵と言う名前の30歳位の女性だった。名前から察するに、ノウリス辺境伯家の縁者なのだろう。お互いに自己紹介したが、バニー卿は、ルッツさんのことを知っていたらしい。王都の騎士学校に行っている時に、冒険者ギルドでの研修を受ける時に、指導に当たったBランクパーティーのリーダーだったらしいのだ。今から15年位前位の話だ。え、ルッツさん、一体幾つでBランクだったんですか?
今日は、アラモード砦の守備隊300名と私達180名との意見交換会という名の飲み会をセッティングしてあるそうだ。まあ、今日の当番部隊100名は飲めないので、実質200名と180名だ。今日は、砦のお酒を全部飲み干しても良いとノウリス辺境伯からお許しが出ているらしい。ちょっと怖いんですけど。
この砦の補給基地は、昨日泊まった温泉のある村だそうだ。この砦に大量の糧食を備蓄していると、敵に奪還された時に不利になるので、常に1週間分しか備蓄していないそうだ。ただしお酒だけは、いつも飲みきれないほど備蓄しているそうだ。その理由は、奪還された時に敵がグデングデンに酔ってしまえば取り返しやすいからだそうだ。何か、考え方の根底に奪還される事がある気がするのは、私の気のせいだろうか。
宴会も半ば、皆、かなり酔っているようだ。バーニー卿、ルッツさんに抱きつくのはやめて下さい。皆、喜んでますよ。バーニー卿は、やはりノウリス辺境伯の娘さんで、政略結婚するのが嫌で騎士の道を選んだらしい。バーニー卿を見ていると、セフィロさんを思い出してしまう。もうセフィロさんに剣術を習う事はないだろうが、また会いたいものだ。今度はちゃんと立ち会ってみようかな。
そんなことを考えていたら、演芸タイムになったようで、アラモード砦守備隊VSランカスター騎士団の隠し芸大会だそうだ。最初は『ALM48』という女性チームで、ギターの演奏で歌と踊りだ。でも戦闘服の上着だけで、ズボンを脱いでの格好はやめましょうね。とっても煽情的で子供の教育に良くありませんから。
次は、ランカスター騎士団の番で、20名ほどが、1列になって足を振り上げるラインダンスだ。こいつらもズボンを脱いでのダンスだけど、何かブラブラしているので、気持ちが悪くなってしまった。それから、定番の腹ダンスやケツダンスなどが披露されたが、私はもう寝ることにした。おやすみなさい。
次の日は、ランカスター騎士団とアラモード砦守備隊の合同訓練だ。私が、いつもの1000本素振りをしていると、守備隊の力自慢の人が、俺にも振らせてくれと言ってきた。うちの騎士団の人達は絶対に言わないけど、私が軽々と振っているので、見た目だけの軽い木刀と思ったらしい。
貸してあげて、持たせた段階で目を丸くしている。振らせてみても、素振りにはなっていない。もう木刀に振られっぱなしだ。2〜3度振っただけで、
「参りました。私の負けです。」
え?何の勝負ですか?それからの楽しみは模擬剣での相稽古だ。防具を付けて、お互いに打突するが、当たる瞬間に剣の力を抜いて怪我させないように配慮するルールだ。でも、金属の模擬剣だ。当たれは地味に痛いし、赤く腫れ上がるのは怪我のうちに入らないらしい。
守備隊の人達は、私では、大人の相手にはならないと思ったのか、最初は誰も掛かって来なかったが、ルッツさんとの相稽古を見て、認識を改めたらしく、1人2人とかかって来た。一応、3本勝負ということで稽古を始めるが、最初の1本は私が取ることにしている。そうすれば、相手も子供相手という気持ちが払拭され、真剣にかかって来てくれる。それで、取り敢えず良いところへの打ち込みの場合は1本取らせてあげる。あと1本となれば真剣さも格別、入れ込んでしまったところに軽く小手をコツンと当ててゲームセットだ。
5人位と稽古した段階で、私のところに行列が出来てしまった。私に勝てば、昼飯を奢って貰える賭けをしているらしい。でも勝ち続けている私には関係ないみたい。解せぬ。
アラモード砦は、石造り4階建てで、城壁がそのまま建物になっている。横幅は300m位で、左右の山に食い込むようになっている。あの山の上から攻撃されたらマズイのではと思うのだが、山の上に登れないように色々な仕掛けをしているらしい。仕掛けの内容は教えて貰えなかったが、物理と魔法で防御しているらしいのだ。
エイボン皇国の皇太子殿下は2日後の午後、この砦に到着するらしい。シンシア様の兄君で、現在28歳、お名前を
フォルクス・シン・ボーア・エイボン
と言うそうだ。既に結婚されており、1男2女のお子様がいるそうだ。
殿下の王都行きの行程表を検討した結果、初日はこの砦にお泊りいただき、その後、私たちが来た日程を逆に辿っていただくことにした。但し、馬車での旅なので、3割増の時間を見る必要がある。まあ、もっと早く進む方法はあるんだけどね。
2日後、朝から大忙しだ。今回の警備には、ノウリス辺境伯も全面的に協力してくれ、エイボン渓谷の北岸まではアラモード砦守備隊の120名が随行してくれることになった。指揮官は、勿論、バーニー卿だ。
部隊に選考された騎士さんや兵士さん達は装備品をピカピカに磨き上げてるし、今日お泊まりになる貴賓室は何度も掃除をしている。あとシェフは、貴人に食べさせるような食材とワインが無いと嘆いていたが、そこはウチのシェフを食材付きで貸し出してあげることにした。
午後2時、北側からの街道を南進して来るお列が見えた。まあ、先触れが10分前に知らせてくれたので準備は万端だ。城門の北側はお濠と跳ね橋になっているが、その跳ね橋の先まで赤い絨毯を敷いておいた。私達は、城門の中で整列して待っている。
跳ね橋を渡って来る騎馬の蹄音が聞こえて来る。続いて馬車の車輪の音だ。私とバーニー卿それとルッツさんの3人が並んでいる。私たちの前で馬車が止まった。砦の者が昇降台をセットしたあと、扉を開ける。最初に皇太子殿下と目される男性が降りて来た。次に妃殿下と小さな幼女が降りて来た。どう見ても、この幼女、3歳位だ。我が家のアリスちゃんと同い年かもしれない。
歓迎の式典が始まる。まずは閲兵式だ。これから警備を担当する部隊が整列している。
最初は、殿下に対しての栄誉礼だ。指揮官の『かしらーなか』の号令で、全員が、殿下の方に顔を向けて注目する。殿下は、右手をあげて挙手の敬礼をする。
次は、部隊の前を殿下と妃殿下がお通りになり、私達はその後方をついて歩くのだ。それが終わると閲兵式は終了。砦の中を巡行となる。随行者はバーニー卿で、施設概要を説明して歩く。その後最上階の会議室でお茶となった。妃殿下とご令嬢は先に会議室に行って貰っていた。私も、先に会議室に入っておく。簡単な自己紹介をしたが、今回の護衛の総責任者が私だと言うと、妃殿下は目を点にしていた。
「フレデリック卿は、確か5歳とお聞きしたにですが。」
「はい、今年の2月に5歳になりました。」
「それで、もう婚約者がいらっしゃるとか?」
え、なんで知っているの?私の個人情報、ダダ漏れですか?
「はい、王国のメルボルン公爵のお孫さんです。」
「確か、おひとつ下とか。」
「はい、今年の5月に4歳になったのですが、来年2月には私より2つ下になります。」
「うふふ、その辺はすぐに気にならなくなりますよ。ところで、うちのアンとエリザベス嬢、どちらが可愛い?」
え、何ですか、その地雷発言。私、何と答えれば良いのですか。ちなみに『アン』というのは、目の前で、じっと私を見ている幼女で、名前を
アンナクリーゼ・レジアナ・シン・エイボン
と仰るそうだ。妃殿下の名前は、
ドールキティ・レジアナ・シン・エイボン
と仰り、エイボン皇国の侯爵家の娘さんだったそうだ。アン嬢が助け舟を出してくれた。
「ママン、ちょんな意地悪、駄目でちゅ。あたち、2番目で良いでちゅ。」
アン嬢、何を言っているのですか。そんな事をベス嬢が聞いたら、私、生きていけません。
フレデリック君、ベス嬢一筋です。ハーレムを作る予定はありません。まだ7歳ですから。
次話は、本日17:00に投稿予定です。
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