49 森のお猿さんは弱いようです。
今回は戦闘シーンが有ります。フレデリック君のチート無双が始まります。
次の日、宿場町を出るとすぐに木々が林から森へと密になって来た。さあ、これから『北西の魔の森』だ。しかし酷いネーミングセンスだ。もう少しカッコいいネーミングをすれば良いのに。例えば『ホーンテッド・フォレスト』とか?
部隊は、馬から降りて5人単位で進む事にしている。2人が戦闘要員、3人が馬の引き回し要員だ。なぜわざわざ馬から降りるのかと言うと、倒した魔物の素材を売れば、それなりの収入になり、倒した者勝ちだからだ。そのため、先頭を進む方が有利なため。皆が争って前に出たがるのだ。
だから、先頭グループが魔物を倒し、素材を剥いでいる間に後続のグループが前に出ると言う訳だ。皆、スライムは無視をし、2匹以下のゴブリンは、倒しても放置、フォーファング・スネークの時は大喜びだ。この皮は超高級品で、10センチ四方で大銀貨1枚以上もするらしいのだ。だから、こいつと戦う時は、体に巻き付かれることなど無視して頭だけを狙うのがコツらしい。でも、蛇に巻き付かれるなんて、考えただけで鳥肌いえ蛇肌が立ちそう。
後、猿みたいなエイプ系は、はっきり言って邪魔なだけだ。こいつらは素材らしい素材が取れず、また木の影から石や木片、果ては自分の糞まで投げて来る。やりにくい割に売れる素材が少ない。ファングエイプの牙かポイズンエイプの毒袋程度だ。
私は、二番手グループの位置で先頭グループの後をついてゆく。私のストレージには、暇な時に生成した鉛の銃弾が1000発近くある。これを6発ずつ宙に浮かばせておいて、木の影のエイプを狙い撃ちだ。自動追尾を付与しているので、この陰だろうが関係ない。
シュパーン!シュパーン!シュパーン!
キーッ! ドサッ!
キーッ! ドサッ!
キーッ! ドサッ!
命中したかどうかは関係ない。戦闘能力を奪い、脅威が無くなれば良いのだ。私から半径300mの範囲のエイプ達には申し訳ないが、まあ、これまでに旅人を餌食にして来たのだろうから、自業自得かな。
森を抜けたのは、その日の夕方だった。直ぐに村があり、大きなホテルが何軒かあった。この国には、ホテルに星の等級をつける習慣はないようだが、村長が案内してくれたホテルが一番良いホテルなのだろう。私とルッツさんは、いつもの通り一番良いホテルで、一番良い部屋を取った。騎士さん達は、森で集めた素材を冒険者ギルドに持ち込んで、今日の夜の軍資金を入手しているようだ。小さな村だが、冒険者相手の商売をしている艶っぽいお店もあるようで、この村の大切な財源らしいのだ。
翌朝、ガンズ伯爵達が昨日、この村に到着していない事を聞いた。国境の砦に行くためには、魔の森は絶対に通らなければ行けない場所だ。あの豚伯爵は、30騎もの騎士達を引き連れていた筈だ。あの森の魔物程度にやられる訳がないとは思うが。
「ルッツさん、私、ちょっと見て来ます。」
「えー!フレデリック様、何考えてるんすか?お一人で行かせるわけないじゃないですか。」
ルッツさんは、部隊に待機を命じると、1個中隊50名に、私達と一緒に森の探索をするように命じた。さあ、急いで探しに行かないと。本当は、浮揚と念動、それに風魔法を使った『飛翔』が最速の移動方法なのだが、まだ制御が仕切れていないので、ここはホワイトに頑張って貰おう。
私が先頭で、ルッツさん達が後に続く。ホワイトには魔力纏の他に若干の浮揚と前進方向への念動を使って走らせている。ホワイトは元々極端なピッチ走法をしていたが、今は1歩で7mほど進むスライド走法も併用しているので、時速40キロ位の速度で走っている。見る見るうちにルッツさん達が見えなくなったが、構う事なく走っていく。
30分程走った先に、豚伯爵が乗っていた馬車があったが、馬はいなくなっており、馬車の中は無人だった。周囲には、夥しい血痕の後と人間のパーツが所々に散乱しており、森の掃除屋スライムが大量に蠢いていた。
私は、音、匂い、そして魔力の残滓を探って周囲を探索した。うーん、これかな?わずかに残った何かの気配、人間以外の魔力の感じ、私はホワイトをそこに残して周囲に魔力の防御壁を張ってから、東の方向に歩いて進んで行った。
左腰の帯剣をショートソードから『聖剣グラム』に替えておく。街道から東の方向へは、当然に密林になっていて歩きにくいが、それでも大型の何かが通った後があった。この後が、あの豚、いやガンズ伯爵の通った後ならいいのだが、強い魔物臭が残っているので望みは薄い。後、木々の至る所に血痕が付着しているので、おそらく襲われた騎士の遺体かパーツを運んだための血痕なのだろう。
3キロ位進んだろうか。奴らがいた。昨日の猿どもだ。数が多い。地上と樹上で100匹以上はいる。中央付近に大型個体がいる。普通のサルどもはチンパンジー程度の大きさだが、そいつは大型のゴリラ位の大きさだ。ゴリラでないのは、その口から飛び出た牙と頭の上から生えている小さな角で、魔物であることは間違いない。
ガンズ伯爵と子息だろうか?ゴリラのそばに転がされている。生死の別までは分からないが、取り敢えず広域殲滅魔法は使えない。うーん、ここはやっぱり2丁拳銃かな?
今、私は『ウインド』を奴らから逆方向に吹かせて、匂いが分からないようにしている。そのまま少し高めの木の上に上昇する。ここからなら、奴らの位置がよく見える。しかし木の陰になっている奴もいるだろうから、この状況での攻撃は下策だ。
私は、目を閉じて奴らの気配を探る。呼吸音、心臓の鼓動、体温、魔物特有の匂い、そして魔力の存在、その全ての情報を頭の中の地形マップにプロットする。数が多くて分からないが、目を閉じたまま2丁拳銃を撃ち始める。勿論、『バンバン』と言う擬音は無しだ。初速は、やや遅めにする。と言っても秒速250m程度だが。
サルどもにとっては、姿が見えないスナイパーから完全無音サイレンサー付きアサルトライフルで狙われているようなものだ。次々と頭が吹き飛んでいく。異常に気がついたサルどもがてんでんバラバラに騒ぎ出すが、どこから狙撃されているのか全く分からない状況のまま8割ほどのサルどもが殲滅された。
ボスゴリラを敢えて残したのは、あいつとは剣を交えて戦ってみたかったからだ。あとの雑魚どもは、逃げ出してしまい、この場には残っていなかった。流石にボスゴリラは、逃げ出さずに、何処からか持ち出した太い棍棒を握って辺りを睥睨している。
樹上から飛び降りると、ゆっくりとボスゴリラに近づいていく。近づいてわかるのだが、こいつはデカい。身長120センチ弱の私の倍以上はありそうだ。奴の正面10m位の位置まで近づいていく。うん、こいつ、魔力を纏っている。おそらく魔法ではなくスキルなのだろう。
私は、今は素の状態だ。いや、両手両足のウエイトバンドの分だけマイナスだと言える。さあ来い。ボスゴリラが棍棒を振り翳して突進して来る。早い。通常の獣ではあり得ない速さだ。しかし、私に見えないほどではない。大きな歩幅で近づいて来るが、コースが直線だ。奴が棍棒を振り下ろした場合のヒット可能地点に至る直前、『聖剣グラム』を抜きながら『瞬動』で、奴の左脇を通り抜ける。
ガツン!
固い何かを切り裂いた感覚がした。こいつ、魔力でガードしていやがる。しかし、この程度の防壁、『聖剣グラム』にとっては、単なる鎧だ。勿論、今まで数多の鎧を装着者と共に切り裂いて来たのであろう。
振り返って、ボスゴリラに正対すると、ボスゴリラは自分が斬られたことに気がついたのであろう。左脇腹から飛び出ようとする臓物を押さえながら、真っ赤に血走った眼で私を睨みつける。
戦意は十分、姿勢を低くし攻撃準備に入った。と同時に、大ジャンプをして、私の頭上から棍棒を叩き込もうとする。左脇腹からの出血と、飛び出る臓物の幾つかにを気にする素振りもない。これは、死闘に臨む者の基本姿勢だ。剣の極意に『身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ』と言うのがある。自分の命を捨てる覚悟で物事に当たれば、はじめて活路が開け流ということだが、もう奴に浮かび上がるチャンスはない。私は、奴よりも高く飛び上がり、奴の振りかぶった棍棒ごと、『聖剣グラム』を切り降ろしていく。正中線で左右に切り離されていく相手の頭部を確認した時には、地上に降り立ち、剣は下段の位置にあった。1歩下がって、剣先を相手の目に合わせて残心を示すと、そのまま奴は崩れ落ちてしまった。
剣に付着した血糊は、ビュッと剣を振ると綺麗に飛び散って、一点の曇りも無くなる。納刀して、ガンズ伯爵の所に駆け寄ったが、これは酷い。まだ生きてはいるが右足と左手が喰われている。おそらく味見をされたんだろう。そばには子息の頭が転がっていた。
カインズ伯爵は、これで引退です。手足がない領地を守備できません。
次話は、明日は6:00に投稿致する予定です。
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