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25 森のクマさんはいなくなったようです

 総アクセス数が7000PVを超えました。これも一重に皆様のお陰と感謝しています。

 本日から、投稿時間を6:00としてみます。

 ある日、クマさんに出会っただけなら良かったのですが。

 ポイズンベアの討伐は、一応終わった。毒を浴びた者や怪我を負った者は解毒薬と治癒ポーションで命に別状はないみたいだ。しかし致命傷を負った3人は助けられなかった。


 遺体の搬送と、死んだポイズンベアの回収をしたが、ポイズンベアは、戻ってから解体して毒袋や毛皮を売るらしい。肉は、毒が回っているので肥料位にしかならないとの事だった。


 このまま帰還したいが、ポイズンベアが他にいないことを確認しなければならない。何人かの騎士が捜索に当たった。私は、団長のそばで、ことの顛末を説明していた。


   ・魔法が使えて、ストーンバレットで1頭目を仕留めたこと

   ・土魔法で壁を作ったこと

   ・浮遊術で土壁の上に上がったこと

   ・魔力纏で能力を強化したこと


 全て、今まで黙っていたことだった。カーネル団長は呆れ返っていたが、その内大笑いをし出した。


   「あはは、うちの若はとんでもねえな。いつもの訓練は猫を被っていたのかい?」


   「いえ、そういう訳ではないです。平素は、素の実力で鍛錬していますので。それで、このことは内緒で。」


   「おうよ。分かってるって。戦力をペラペラ喋るような指揮官は早死にするからな。」


 今回の戦闘は、自分としては満足できるものではなかった。純然たる剣の技だけで勝負した訳ではなかったからだ。もし剣の技だけだったら、あの分厚い皮下脂肪を貫いて切り落としたり、急所を突くことが出来ただろうか?ゾリゲン団長やルッツさんならきっと出来ただろう。自分はまだまだ足りないなと実感せざるを得なかった。


   フレデリック・フォン・ランカスター

   アスラン暦458年2月14日生まれ(4歳9か月)

   人間族 男性

   レベル 5

   HP   672

   MP 3,897

   魔法適性 全て

   称号:日本からの転生者

      神童

   スキル:剣道錬士6段

   逮捕術上級

   高校教諭(体育)

   中学教諭(体育)

   瞬動(中級)

   鑑定(初級)

   神の加護

   錬金術(上級)






 11月になった。クリスティーナ様のストレプトマイシン投与が始まった。経過は良好で、後は定期的な検査をするだけだ。1年間は投与と検査が必要だろう。最近ベス嬢の元気がない。聞くと、クリスティーナ様の治療が終わると、私は王都に帰ってしまい、もう会えなくなるのではと心配しているみたいだ。一般的な婚約者の場合、結婚するまで会うこともないのが普通らしいのだが、私はもっと足繁く、そう月に1週間以上はこちらにお邪魔したい。王都の周りには魔物の狩場が少ないので、自分のレベルアップのためにもカーネル団長の指導を受けたいのだ。


 そう言えば、ポイズンベア討伐の話は、ゾリゲン団長とルッツさんに筒抜けだった。ゾリゲンさんが、王都周辺の狩場に日帰り討伐ツアーに連れてってくれると言ってくれた。もう、父上には了解を貰っているそうだ。本当は、5歳まで鍛錬だけにしておこうと思っていたのだが、1人でポイズンベア3頭を殲滅出来たのだから、抑制する理由がなくなってしまったそうだ。


 王都の郊外は、ほぼ平原と疎な林だけで、大型の魔物は出現しないそうだ。ただ平原の草食獣を狙う魔獣はそれなりにおり、時々旅の商人などを襲うらしい。今回の討伐対象は、ファングウルフとフライングキャットだそうだ。ファングウルフは、以前、他の冒険者と模擬試合をした時、テイマーが連れていたので知っているが、フライングキャットは知らない。名前から想像するのは、空飛ぶ猫?


 今日のメンバーは、ルッツさんとスザンヌさん、それと騎士さん達8人だ。私とスザンヌさんは、馬車に乗り、ルッツさん達は騎馬だ。その内、乗馬も訓練しなければならないだろうが、当分無理だろう。王都を出てから30分程で目的の場所に着いた。街道の近くに川が流れており、両岸が葦のブッシュになっている。こういう場所は鹿や水牛などが水飲みに来て、それを狙う野獣が集まって来るのだ。その中に肉食の魔獣もいるらしいので、時々討伐依頼が出されるらしいのだ。私とスザンヌさんはルッツさんの後ろから付いていくだけだが、スザンヌさん、4歳児の袖に捕まらないで下さい。


 先ほどから、前方に多数の動物か魔物の気配がする。まだ探索のスキルレベルが低いので、ぼんやりとしか分からない。もっと近づけば、はっきりするのだが。


   「いたぞ!」


 さすが、ルッツさん、気配を察知したようだ。


   「多いぞ。風上に回れ。」


 守備隊の人達は狩猟の基本は、如何に敵に気付かれずに接近するかだ。向こうに先に気付かれて待ち伏せされるのが最悪のパターンだ。スザンヌさんが魔法の呪文を詠唱し始めた。


   「光の精霊よ。光の精霊よ。その力を我に示したまえ。」


 いや、その呪文。ライトの呪文の全文だから。ここで光ったら、相手に気づかれるでしょ。うーん、、でも、それで安心するならいいかな。


 私は、左手でショートソードの鞘の鯉口を握り、右手で柄に手を添えている。いつでも抜き打ちが出来るように構える。私の背丈程もある葦が揺れている。騎士さん達は、それぞれの獲物を手にしている。


 来た!


 葦を分けて黒っぽい何かが飛び出して来た。ファングウルフだ。騎士さんの槍が1頭を突き抜く。しかし、その横手からもう一頭が襲いかかる。騎士さんが刺さったままの槍を手放し、左腕をファングウルフの口に突っ込んで勢いを殺し、左腰の剣を抜こうとするが、ファングウルフが邪魔で剣を抜けない。その時、ルッツさんが、騎士さんの左腕に噛み付いているファングウルフの首を刎ねた。危なかった。怪我をした騎士さんが、左腕にポーションをかけて、出血を止めている。


 他のファングウルフが葦の間から次々と姿を現す。かなり数が多い。中には、2回りも大きい特殊個体も何匹かいる。もしかして、これ、やっちゃったかな。全てのファングウルフが、頭を低くし、牙を剥き出して戦闘態勢に入っている。


 騎士さん達は、2人1組で防御体制に入っているが、ルッツさんが私の周りを囲むように陣形を組めと指示している。スザンヌさんは、私の後ろで震えていた。


   「フレデリック様、危なくなったら逃げて下さい。大丈夫だとは思いますが。」


 ルッツさんの危なくなったらと言うのは、自分が斃れた場合という意味なのだろう。確かに状況は不味いとしか言いようがない。幾ら群れるといっても、規模が大きすぎる。対する私達は、最初の戦闘で、怪我を負っている者が半数以上いる。普通は4〜5頭の群れのはずだし、こんなに大きな群れなら、何らかの情報があってもいいはずだ。


 しかし、問題は今の状況をどうしようかと言うことだ。私は、ルッツさんに全員で密集体制をとるようにお願いした。こんな状況で密集してしまったら、剣を振ることも出来なくなるので、絶対にあり得ない戦術なのだが、ルッツさんは、私には何も言わずに、


   「よーし、怪我人を中に入れて密集隊形を取れ!」


 と指示してくれた。皆が、私を中心に集まってくれたので、その場でしゃがみ込み、右手の平を地面に付いて魔力を流し込み土魔法『アースウオール』の発展型である魔法を発動した。


   「アースフォートレス」


 イメージは、高さ10m、直径5mの土で出来たチェスの駒の『ルーク』だ。


    ゴゴゴゴゴ


 密集隊形の私達ごと、土が盛り上がっていく。円形の縁は、キチンと凸凹になっていて、本当に大型のチェスのルークのようだ。下を覗くと、私たちに向かってファングウルフが吠え続けている。


 騎士さん達の中にアーチャーが2人いたので、上から狙い撃ちしようとしていたので、取り敢えずそれはやめてもらう。どっちみち30本も矢はないので、大切に使わないと。そこで、私は右手を握り親指と人差し指をまっすぐに伸ばした。前の世界で、拳銃を模した指の形だ。人差し指で、一番大きなファングウルフを狙い、やはり土魔法である『ストーンバレット』を発動した。


   「ストーンバレット。バン!」


    キャイーン!


 魔力をそれほど込めなかったので、玉は土を少し固めた程度の硬さだが、速度が速いので、それなりに痛いはずだ。


   「バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!バン!」


 術式は既に発動済み、後は発動ワードだけで連写ができる。


    キャン!キャン!キャン!キャイーン


 次々とファングウルフが悲鳴をあげて、戦意を失って行く。最初に狙った大型個体が遠吠えをした。


    ウオオオーン!


 一斉に引き上げて行く。諦めたのだろう。後には、ファングウルフの死体が3体、地面に転がっている。私達のいる土のルークを崩して行く。ゆっくりと地面に近づき、最後は地面が平らになって魔法の終了だ。初めて使ったが、上手くいって本当に良かった。


 ルッツさんが言うには、ファングウルフがあんなに群れるのはおかしいそうだ。なんかあったのだろうか?ファングウルフの退がって行った方に注意を向けると僅かに魔力を感じた。何かいる。この感じだと1匹だけだ。さっきのファングウルフの群れは、もう感じられない。かなり離れてしまったのだろう。


   「この先に何かいます。かなり小さいか、弱っています。」


   「本当か!もしかしたら、さっきの群れに襲われた旅人かも知れねえ。直ぐに行ってみよおうぜ。」


 他に魔物の気配はないので、ルッツさんと2人で葦をかき分けて進んでいく。その先には、葦がなぎ倒された場所があり、ポイズンベアの死体が1体あった。周りにはファングウルフの死体が5体転がっている。ここで戦闘があったのだろうか。しかし、ポイズンベアは毒が全身に回っていて食べられない筈なのに、どうして狩ろうとしたのだろう。しかも獲物を置き去りにしている。


  そう、考えていると、ポイズンベアの死体のそばで変な声が聞こえた。

フレデリック君と運命の出会いがあるのですが、それは次話のお楽しみです。

 明日は、6:00に投稿致します。

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