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22 冒険者ってゴロつきのようです

 総アクセス数が5000PVを超えました。これも皆様のお陰と感謝しております。ありがとうございます♪

今回は、ルッツさんの策にハマっちゃいます

 私の冒険者ギルドの見学について両親は、すぐに許可してくれた。父上は『将来に役立つだろうから。』と言ってくれたが、母上は『あらあら、もうそんなお年頃なの?』と意味不明の言動があった。元々そういう人だったので、スルーしておいた。ただし、ゾリゲンさんかルッツさんの同行が最低条件だったけど。


 勤務を調整して貰って、ルッツさんが同行する事になった。その前に、冒険者セットを準備する事になったのだ。え?何、その冒険者セットって。王都の商店街の中にある高級洋品店、そこに冒険者セットがあるそうだ。


 目的の店は、王都屋敷から馬車で20分ほどの場所だった。貴族街に面した大通りに貴族専門の高級店が軒を連ねている。目的の店は、アンティークな調度品が置かれた落ち着いた雰囲気で、洋服店によくある商品を重ねたりぶら下げたりしておらず、殆ど応接室の雰囲気だ。普通に考えて、冒険者とは縁もゆかりもない店のたたずまいだろう。


 店の主人のような女性が応対に出てくれて、奥のソファに案内してくれた。私とスザンヌさんは、ソファに座り、サービスされたお茶を飲みながら、今日の用件を伝える。


   「今日は、フレデリック坊っちゃま用の冒険者セットが欲しいの。どんなのがあるのかしら。」


   「そうですね。お坊ちゃまは未だお小さいので、可愛らしいものが宜しいかと思います。少々お待ちください。」


 店長は、奥の部屋に入って暫く出て来なかった。漸く出てきた時は、後ろに3人程の女性店員を引き連れてきたが、それぞれ大量の商品を抱えていた。それからは、まるでファッションショーのように次々と商品を説明し、見本用のマネキン人形に着せ付けていくのだ。結局、見ているだけで疲れ切ってしまったので、一番最初に見せて貰ったセットにして貰った。


 私が選んだセットは、あのピーターパンが来ているような服で、基本コンセプトは森の妖精だそうだ。羽根つきの帽子にオフホワイトのネルシャツ。モスグリーンの腰まで長いベストに牛革の幅広ベルト。もちろんおもちゃのショートソードがぶら下がっている。緑色のタイツに、膝で折り曲げているロングブーツ。背中に鏃の付いていない模擬矢の入った矢筒を背負い、手にはツルの張ってないショートボウを持っている。完全に『なんちゃって冒険者』だ。


 それから採寸をして、仮縫いなしの特急で縫い上げてくれるので、完成は1週間後だそうだ。このセットが幾らするのかわからないが、貴族価格は通常の倍以上なので、おそらく平民の平均的な月収の3倍はするだろう。ため息が出てしまうが、貴族が金を使わなければ、経済が回らないらしいのだ。


 私とスザンヌさんは、あれから一旦、メルボルン領に戻り、クリスティーナ様の治療を継続している。最近は、1週間に1度の治療で大丈夫になっている。メルボルン領に戻ってから2週間後、今日は王都の冒険者ギルドに行く日だ。私は、例の冒険者セットを着用しているが、腰に下げている剣だけは、婚約式の時に誂えたショートソードだ。ルッツさんといえば、非番の時に郊外に狩りに行く時の服装だ。濃いグレーが基調の目立たない迷彩柄で、私も迷彩にすれば良かった。それよりも問題はスザンヌさんだ。濃緑色のフード付きローブを着て、長いワンドを右手に持って、気分は魔法使いだ。スザンヌさん、貴女の使える魔法は生活魔法の『ライト』だけでしょ。それに、ローブの下にはメイド服を着ているんじゃないですか?いけないとは言わないけど、ちょっと若作りですか?スザンヌさんは、私が生まれた時には、既に娘さんが王城にメイド奉公をしており、あの時、確か33歳だったから、今は・・・ゲホゴホン!何か鋭い視線を感じてしまった。ベス嬢も一緒に行きたがっていたが、バーン卿の許可を貰えず、今回はお留守番だ。


 冒険者ギルドは、王城の東門近くにあり、他の商店が木造2階建てが多いのに、冒険者ギルドだけは、石造り4階建ての立派な建物だった。ただ、他の建物と明らかに違うところがある。それは、入り口付近に大勢の子ども達がいるのだ。年齢は10歳前後だろうか?髪はボサボサで、着ている服も大分くたびれている。腰には木刀とも呼べないような木の棒を荒縄で縛り付けている。この子達は何をしているのだろうか。


 私が彼らの前を通ると、『てめえ、何メンチ切ってんだよ!』という顔で睨みつけてきたが、ルッツさんが通ったら、


   「お兄さん、ポーターやるよ。銀貨2枚で良いよ。」


 ははあ、彼らは、冒険者の荷物持ちで小銭を稼いでいたのか。格好から、スラムの浮浪児のようだが、彼らに荷物を持たせたら倒れてしまうんじゃあ無いだろうか?


   「おばさん、俺に荷物持たせてよ。俺、力あるよ。」


 あ、スザンヌさん、血管が浮き出てますよ。スザンヌさん、歳をきかなければ、『お姉さん』で通るからね。多分・・・。


 彼らをスルーして正面玄関を入ると広いエントランスになっており、右奥に受付カウンターが並び、左側はレストランのようになっている。正面奥は2階に上がる大きな階段が見えていた。


 1階には結構人が多くいて、この人達が全員冒険者なら、ギルドの売り上げって莫大なのかも知れない。そう思いながらキョロキョロしていると、私はこの中で目立っていたようで、冒険者の方からも注目をあびていたのか、左手の方から、


   「ここはガキの来るところじゃねえぞ!」


 と蛮声が響いた。スザンヌさんが、ビクッとしてそちらの方を見てしまったので、


   「何、人の顔見てんだよ!ババア!」


 と、更に追い討ちがかかった。もう駄目だ。スザンヌさん、ワンドを人に向けてはいけません。


 ルッツさんが、罵声を浴びせた男のところに行って、優しく優しく片手で顔を握っている。いわゆるアイアンクローだ。


   「イ、イヒェヒェヒェヒェ!」


   「うちの姉御に『ババア』とは、良い度胸してるな。ウチの姉御は『ババア』じゃねえ。少し年配なだけだ。」


 あ、スザンヌさん、泣き始めちゃった!


 3人で受付カウンターに行ったけど、私の身長では、背伸びしても、何も見えなかった。それでも、何とか顔を覗かせようとしていたら、ルッツさんが肩車をしてくれた。オー!これなら良く見える。


 カウンターの向こう側には、若い受付嬢が立っており、営業用と思われる笑顔で、


   「いらっしゃいませ。こちらは冒険者ギルド王都総本部でござい・・・、あら、ルッツさんじゃあないですか。お久しぶりです。えーと、冒険者にお戻りですか?」


   「違うよ。仕事、仕事。今日は、付き添いなの。」


 と肩車をして貰っている私のことを指差す。


   「はあ、そうなんですか。3年前に騎士になるって言ってから一度もお見えにならないじゃないですか。Aランク依頼が結構溜まっているんですよ。」


   「何で、そうなるんだよ。『風の旅団』の連中はどうしたんだよ。それに、他のAランクパーティーだっているだろう。」


  「ルッツさん、あの時みたいに、依頼を簡単に片付ける人なんて、そんなにいる訳ないじゃないですか。それに『風の旅団』は、魔導士のセシルさんが寿退団されて、現在、休眠中です。」


   「そうなのか、大変だなあ。いや、今日はこのおば、ゲホゴホ、こちらの女性の冒険者登録と、この子のポーター登録をお願いしたいんだが。」


   「はい、分かりって・・・。あのう、こちらの女性、本日が初めての登録ですか?」


   「ああ、ちょっと訳ありでよ。大丈夫。行動は俺と一緒だから。」


   「はあ、そうですか。お願いしますね。年配の方の新規登録は、死ぬ確率が高いですから。それに、今、東のダンジョンは魔物が異常に増えてますからね。」


   「へー、そうなんだ。分かった。気をつけるよ。あと、ポーター登録もウチのパーティーの専属登録で頼むよ。」


   「分かりました。でも、こちらの御坊ちゃま、どう見てもお貴族様なんですけど。」


   「その辺は、知らなかった事で頼むよ。」


   「分かりました。それでは、こちらの登録申請書に必要事項を記載して下さい。申し遅れました。私、当ギルドの看板受付嬢ジョアンナと申します。以後、宜しくお願い致します。」


   あのう、本日、冒険者登録なんて聞いていないんですけど。それに専属ポーターって。誰の専属なんですか。ルッツさんが金色のプレートを出して、


  「このパーティーの名前は、そうだな。『ルッツと愉快な仲間達』で頼むよ。」


  「分かりました。Aランクパーティーで登録ですね。」


 うん、もう完全に想定外ですね。ルッツさん、今日は見学だけだった筈ですよね。それにパーティーって、もしかしてパーティーで魔物狩りにでも行くつもりですか?それはそれで嬉しいんですが、父上と母上の許可を貰える自信が無いんですけど。


 ポーターの申請用紙は名前と年齢だけだったので、簡単に記載できたんですけど、年齢欄は四捨五入して5歳と書いておいた。隣で、スザンヌさんが何やらブツブツ言いながら記入していたが、生年月日の生まれ年欄を何度も書き直していた。あれ、スザンヌさんの生まれ年って、アスラン歴425年の筈ですが、何440年って15もサバ読もうとしているんですか。あ、直さないで出しちゃった。


 ジョアンナさんが、物凄いジト目で申請用紙とスザンヌさんを睨んでいる。


   「申請用紙はこれで結構です。冒険者登録される方は、こちらの鑑定水晶に手をかざして頂き、記載に偽りがないかどうか調べますので、どうしますか?」


 あ、スザンヌさん、涙目になりながら、生年月日を書き直しています。


 この世界には『鑑定水晶』と言う魔道具があるみたい。私の『鑑定』のように、詳細な情報を表示するものではなく、鑑定する事象が真実なら青く、虚偽なら赤く光るだけのものらしい。しかし、それだけでも司法裁判や契約に関し劇的効果があるだろう。事実、犯罪者の取り調べには、この魔道具と拷問道具がセットで使われるらしいのだ。うん、怖いです。


 ジョアンナさんが、カウンターの後ろのドアから入って行って暫くすると、何か持って出てきた。ジョアンナさんには鉄製の小さなプレートを、私には木製の鑑札のような板を渡してくれた。


   「スザンヌさんには、こちらの鉄製の冒険者プレートをお渡しします。現在のランクは『Gランク』になります。Cランクから銅製になりますから頑張って下さい。フレちゃんには、ポーター用の鑑札をお渡しします。無くさないで必ず持っていて下さい。ポーターはダンジョンで行方不明になっても救助には向かいませんので。」


 ジョアンナさん、それ以上説明はしなかったが、鑑札で死体の身元が分かるということなのだろう。戦闘能力のないポーターは、救助に行くだけ無駄という事なんだ。命が羽根よりも軽いこの世界らしいシステムですよね。

ルッツさん、Aランク冒険者だったのですね。やはり只者ではなかったようです。

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