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107 3つのクラブに入るようです

フレデリック君は、気の優しい少年です。勧誘されるとなかなか断れないようです。

   「魔法剣クラブに興味はあるのかな?」


 そう言われて、『興味ありません。さようなら。』といえるほど、メンタルが強くない私としては、『はい。』の一択だ。まあ、魔法剣って何かよく知らないけど。何らかの魔法を付与された剣は、『魔剣』と言って、優秀な鍛冶師と錬金術師の合作で作成されるらしいのだが、魔法剣はそれとは違うらしい。このクラブは『魔法剣』を使う剣術クラブらしいけど、いま見ていた訓練では、先は長そうだ。クラブの部長さんは、コーンフィルさんと言って、魔法専科の3年生で、王都で商会をしている準男爵の2男だそうだ。


   「魔法剣って何ですか。」


   「うん、君は魔法を付与された『魔剣』は知っているかな?」


   「いえ、『魔剣』は知っていますが。その剣が『魔法剣』なんですか。」


   「これ?これは単なる模擬剣、しかも学院推奨の1振り大銀貨1枚の鋳造普及品だよ。でも、こんな普及品でも、こうすると。」


 コーンフィル部長、『うん!』と言って、模擬剣を握っている両手に力を入れていると、なんとなく模擬剣の刃の周りにオーラのようなものが纏わりついている。なぜかどや顔になって、


   「これが、魔法剣術の初歩、『魔力纏い』だ。これに属性魔法の魔力を纏わせるのが、我々の目標なのだよ。」


 うーん、微妙。それなら、最初から属性魔法を纏わせればいいのに。


   「どうして、最初から属性魔法を纏わせないのですか。」


   「そりゃ、君、この子達は、まだ属性魔法を習得していないからだよ。」


   「はい?」


   「いやね、ここにいる部員の多くは、下級役人、商人それとや地主の子息が多く、魔法の才能が無いものが多いのだよ。しかし、魔力媒体を介して、少しの魔力でも属性魔法が発動できるようになるために、『魔法剣』を練習しているんだ。」


 えーと、それって順序が逆のような気がするんですが。魔法を発動させるのに、ワンドや指輪を使うのは、そういう媒体があれば魔法を発動しやすくなるためであって、魔法が発動できないのに、魔法媒体に魔力を込める練習をしてもダメですよね。例えば、私の『聖剣グラム』は、魔力を流すだけで炎の魔法が発動されるけど、もともと私自身にも火魔法の素質があり、しかも上級の魔法も使えるから、意識せずに炎を纏わせることができるのであって、『聖剣グラム』があるから、火魔法が使えるわけではないんですけど。魔石に込めた魔力をエネルギー源として、あらかじめ魔力を一定の魔法現象に変換する魔道具とも違う。


   「あのう、皆さんは、生活魔法は習得されているのですか。」


   「うん、全員、生活魔法の一つや二つは使えるよ。」


   「じゃあ、先輩、ここで使ってみて下さい。」


 コーンフィルさん、右手を前に差し出して、5本の指を広げ、


   「火の精霊よ。その深淵なる力を我に与えたまえ。ファイア。」


 広げた指の中指の先あたりにシュボッと小さな炎が付いた。前の世界でのガスライターか蝋燭の火程度の大きさだ。


  「今、『ファイア』を中指の先から出しましたよね。なぜ、中指なのですか?」


   「それは君、一番先っぽにあるから、魔力がそこまで流れて行くんだよ。」


   「それでは、この模擬刀の刃先から10センチ位のところに中指を当てて炎を出してみて下さい。」


   「え?こうか?」


 コーンフィルさんは、左手に模擬刀を持って、言われた通りに指先を当てて詠唱した。


   「火の精霊よ。その深淵なる力を我に与えたまえ。ファイア。」


 模擬刀の刃先から、ライターよりも少し大きな炎が点火された。炎が消える前に、


   「さあ、もっと魔力を流して!」


   「えっと。エイや!」


 剣先からチョロチョロ出ていた炎が『ボウッ!』と大きく燃え上がった。驚いたコーンフィルさんが手を離したため、そこで炎が消えてしまったが、じっと剣先を見つめている。


   「今のが、火魔法を流す感覚です。模擬剣は、単なる鋳鉄製ですし、持ち手の柄にも特別な仕掛けがないので、中途半端な魔力では、刃体まで魔力が通らないのです。でも、無理でも通そうと魔力を操作することは、とても良いことです。すべての魔法の基本は、魔力操作ですから。」


   「ウエスタン卿は、魔法も卓越しているのだな。どうだろう、是非、わがクラブに入部して指導してもらえないだろうか。」


   「え、あのう、私は剣術クラブと錬金クラブに入るつもりなのですが。」


   「あ、それなら大丈夫。わが学院は、最大5つまでのクラブに入部できるから。頼む、週に2日、いや1日で良いから我々に指導してもらえないだろうか。」


 コーンフィルさん、いやコーンフィル部長の真剣な顔を見ていると断るなんてできなくなった。しょうがなく、週1日の約束で入部をすることにした。


   「おお、ありがとう。早速で悪いのだが、できれば見本を見せてもらいたいのだが。この模擬剣を使ってどこまでできるのか、目標にしたいので。」


 その気持ち、よくわかります。努力は大切ですが、結果がない努力ほどむなしいものはない。私が前世の若いころ、常に3番手の男と言われながら必死に剣を振った時のことを思い出してしまう。私は、コーンフィル部長から模擬剣を借りると、誰もいない方向に向けて正眼で構えた。魔力を模擬剣に込めていく。その辺にある雑木を使った柄に無理無理に魔力が流れていく。魔力が刃体まで流れていったことを確認した。もっと魔力を込めていくと、刃体から溢れた魔力が白い光となって刃体にまとわりついているのが見える。


   「炎よ。」


 皆に聞こえるように、発動ワードを口ずさむ。一瞬にして魔力が炎に変換される。その状態で、上段から振り下ろす。帆脳が振り下ろした方向に斬撃という形で走り抜けていく。100m位先の鍛錬場の外壁にぶつかって爆発する。さすがに学院の施設だけあって、魔法障壁の結界が付与されているらしく、外壁には傷一つつかなかったが、爆発の余波で熱風が鍛錬上のほうに吹き返してきた。あ、訓練中の騎士専科の皆様、ごめんなさいね。


 コーンフィル団長をはじめ、皆はポカンとしてしまった。いえ、これってファイアの魔法を飛ばしたくらいの威力ですから。


   「ちょ、ちょっとその模擬剣、見せてくれるかな。」


   「どうぞ。」


 団長は、受け取った模擬剣をいろいろと調べている。他の団員(もちろん先輩達です。)も集まって模擬剣に触っていたりしているが、魔法を飛ばしただけで、模擬剣には何の変化もないはずだ。


   「あ、ヒビが入っている。」


 え?そんな馬鹿な。込めた魔法は一番簡単な『ファイア』だし、魔力だって魔法障壁が付与された煉瓦製の外壁が無傷なレベルなんだから。


   「えーと、その模擬剣、よく見せてください。」


 コーンフィル部長から模擬剣を受け取って、見分してみると確かに刃体側面に細かなヒビ割れがはしているが、表面からそれほど深くないから、もしかすると最初からついていた可能性だってあるはずだ。ほら、普及品だから。


   「えーと、それじゃあ、入部届は書いておきますから、これからもよろしくお願いします。私は、もう少し走ってきますから。」


 うん、走り込みって大事だよね。すべての活動の基礎だから。


 夕方、図書室に行って、魔法剣について調べたが、どうも良くわからない。魔剣や聖剣なら、魔力を込めるだけでその力を発揮するし、作成者によって属性付与がなされているのだけど、単なる模擬剣が魔法を放つ剣になるなんて聞いたこともない。今日、私が鍛錬上で皆に見せたのは、模擬剣を魔法を行使する際のワンド的な道具として使っただけで、あくまで私の魔法と魔力によるものだ。うーん、なんかコーンフィル部長や先輩方には誤解があるようだ。まあ、これから疑問点は解いていけばいいから、これでいいか。


 寮に戻って、部屋で夕食を摂ろうとしたら、隣の部屋のブルーム殿下に一緒に食べようと招待されてしまった。別に反対する理由もないし、一人で黙々と食べるよりもいいかなと思ってお邪魔することにした。もちろん、スザンヌさんやジュリちゃんも給仕のお手伝いとして一緒に行くけど、ブルーム殿下は男性従者1名とメイド2名がついているので、スザンヌさん達のやることってないんだよね。


 同じ寮に入っている御学友3人もいるので、全部で5人の大所帯だけど、さすが殿下の寮室は、ダイニングに8人用の大きなテーブルが据え付けられていて、狭いことはなかった。


 御学友のうち、ロベルト君は、侯爵家なので私たちと同じフロア、オルム君とタリーズ君は伯爵家なので、下のフロアとなっているが、夕食だけはブルーム殿下と一緒に食べることになっているらしい。今日からは私も一緒なので、にぎやかになるのだろう。

これで、魔法剣クラブという謎のクラブと剣術クラブ、錬金クラブに入ることになるわけですね。

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