105 入学式はどこも同じようです
連載開始後、毎日投稿を心がけていたのですが、ストックもなくなり、仕事も忙しく、ついに間が空いてしまいました。学園編に入ったことにより安心したのも原因かも知れません。これからもコツコツ投稿して行く予定です。応援してください。
次の日、入学式が始まった。大講堂の前の方に、新入学生280名が座り、後方には上級生と保護者達が座っている。
壇上には学院長をはじめ教職員と来賓が座っていたが、何とメルボルン公爵が来賓だった。やはり王族が来賓として毎回来られているのだろう。
式が始まった。この世界の入学式といっても、特に変わった事はない。壇上には、王家の紋章の旗と、この学院の校旗だろうか羽ペンが×の形で重なったシンプルな模様の旗が奥の壁に吊り下げられていた。壇上中央に演壇があり、拡声の魔道具だろうか10センチ位の丸いリングに白い布を貼った物が、机の中央に置かれている。
最初は、学院長式辞だ。かなり緊張しているようで、式辞というか、まとまりのないお話が30分も続いている。メルボルン公爵が『オホン!』と大きな咳払いをして、ようやく式辞が終わった。次は、来賓挨拶でメルボルン公爵の祝辞だ。
「新入生諸君、入学おめでとう。儂も40年前にこの学院を卒業したが、その時の同級生達とは今でも付き合いがある。まあ、卒業までの3年間、良い友達を作ってくれ。以上。」
素晴らしい祝辞だった。短くて・・・。さあ、いよいよ新入生代表挨拶だ。
「続きまして、新入生代表挨拶。代表は、『フレデリック・フォン・ランカスター・ウエスタン』こう、いや『君』。」
「はい!」
壇上に上がっていく。端で王室旗に礼をして、中央演台の所まで歩いていく。一礼をしてから挨拶を話し始めた。
「桜の花が満開の今日、ここアスラン王国王立学院に入学できた事は、私をはじめ280名の新入生全員の喜びとする所であります。先ほどは学院長の厳しくも心温まる式辞や、メルボルン公爵閣下の素晴らしいご祝辞を賜り有難うございます。新入生を代表して御礼申し上げます。」
「私達は、今、ようやく社会に出るための準備を始めたばかりです。この素晴らしい学院での3年間、新しい知識と強靭な身体そして多くの仲間を得ることをお約束します。王国民は、皆が幸せになる権利を有しています。しかしながら、その権利を皆が享受しているとは言えないのが現実です。私達は、これからの3年間、自己研鑽を重ね、国王陛下の臣民として素晴らしい王国を作り上げていくための力を醸成をお誓いして新入生代表挨拶とします。」
まあ、簡単かつ短い挨拶を終えて壇上から降りていく。あ、勿論、降りる前に王室旗に向かい、一礼をするのも忘れない。入学式は単なるセレモニーだし、特に感慨もなく終わったが、これからクラスに戻ってホームルームだ。ここでハタと考えてしまった。貴族専科と騎士専科の両方に在籍している自分は、どちらの専科クラスに行けば良いのだろうか。悩んでいると、
「ウエスタン卿、貴族専科はこちらでございます。」
と、声をかけてきた者がいた。見ると、薄い茶色の髪の毛のいかにも貴族の御曹司という雰囲気の少年だ。
「君は。」
「申し遅れました。私はイランザ男爵家嫡男のダインと申します。以後、お見知りおきを願います。」
「あ、フレデリックです。あのう、同級生なんだから、敬語はやめようよ。」
「はい、有難うございます。僕のことは、ダインと呼んでください。」
「うん、分かった。じゃあ、私のこともフレデリックと呼んでくれると嬉しいな。」
「分かりました。それじゃあ、こちらです。案内します。」
「いや、僕のクラス、騎士専科にもあるのかと思って。どっちに行こうかなって。」
「えーと、フレデリック様は、貴族専科の級長ですから、こちらだと思いますよ。」
「あ?あ、そう。そうなのね。」
聞いてないんですけど。あの青ナスビめ。青ナスビって、学院長のことね。顔がナスビのように下膨れで三日月だし、顔色も青いから青ナスビって勝手に名付けておいたのだ。ダイン君は、かなりイケメンだし、性格も良さそうだ。
クラスに到着したら、席次が張り出されていて、前から爵位順に指定されていた。この貴族専科には騎士爵や準男爵は入れないので、前の列は男爵の子弟から着席している。一番後ろは、侯爵家の子弟が座っているが、窓際の一番偉そうな席には、王都の南東部にあるベーカー侯爵家の嫡男が着席していた。名前は確かアルフレッド君だったはずだ。2年前の10歳の時の王家主催パーティーで、私の次に国王陛下に挨拶していたので覚えていた。父君は、確か交易卿に任じられているはずだ。日本で言えば、国土交通大臣と通産大臣を合わせたような所管事務の筈だ。アルフレッド君は、あの時も私とは全く会話をせず、なんか避けられている気がしたが、今も取り巻きに囲まれて、バカにしたような目でこちらを見ている。まあ、どこにでもあんなタイプはいると思うので無視しておこう。
級長は右前の指定席なので、自席に座っていると、担当の教師が入ってきた。自己紹介によると、王都の南にあるキントーン伯爵家の次男で、ライオネスと言う名前の30歳位の方だった。ライオネス先生は、ずっと貴族礼式を教えていた先生で、今回初めて貴族専科の担任になったそうだ。
続いて、生徒の自己紹介が始まった。この教室にいる新入生は、殆どが2年前の王室主催お披露目式に参加した者達だったので『始めまして』ではないが、一度会っただけで覚えている訳もないので、ほぼ初対面という感じだった。
自己紹介のトップバッターは、級長である私だった。
「初めましてではない方が多いようですが、フレデリック・フォン・ランカスター・ウエスタンです。王都の西にあるウエスタン領から来ました。私は、騎士専科にも席があるので、時々授業を欠席することがあるかも知れませんが、皆様の足を引っ張らないように頑張ります。爵位に関係なく仲良くしてくれたら嬉しいです。これから3年間、よろしくお願いします。」
自己紹介が終わると、疎な拍手があったが、とりあえず終わったので良かった、良かった。次は、どこかの男爵の長女らしかったが、極端に小さな声なので、名前がよく聞き取れなかった。次は、その隣のソバカスだらけの銀髪の男の子で、王室に勤務している法衣貴族の次男だそうだが、
「ロベルト・フォン・サイフォンです。王室勤務の男爵家次男です。」
と、名前と爵位を言うだけの自己紹介だった。この学校の伝統かなと思ったら、子爵位、伯爵位と爵位が上がって行くほど自己紹介が長くなり、アルフレッド君の自己紹介が始まった。
「ベーカー侯爵家の嫡男アルフレッドだ。どこかの3男とは違い、生まれた時から侯爵になることが決められていた由緒正しき血統の者だ。俺は、侯爵としての実績も無いのに代表になるようなズルはしない。まあ、中間試験の結果が楽しみだがな。皆も、この中で誰が最も力があるのか間違わないようにな。」
あれ、何故かヘイトを集めているみたい。ライオネス先生は、そのことに関しては何も言わずに、
「え、えー、これで自己紹介が終わりました。続いて授業に関して説明します。」
と、オリエンテーリングに移ってしまった。まあ、いいけど。この学院の授業は、必修科目と選択科目に分かれており、必修科目の成績が一定ランク以下の悪い成績だと退校処分になるそうだ。1年次の必修科目は、貴族礼式、王国法基礎、王室史、数学1、国語、魔法学概論が学科の必修科目だ。実技では、剣術、魔術、ダンス、馬術が必修となっている。
授業割を見ながら選択科目の履修届を出すのだが、私の場合は騎士専科の学生でもあるのでそちらの授業割りも見なければいけないだろう。提出期限は1週間あるので、うまく授業を選択するつもりだ。
後、午後からは各クラブの紹介がある。生徒達は、必ず何かのクラブ活動に参加しなければならず、火曜日と木曜日のクラブ活動は、必修単位に換算されるので必ず出るようにしなければならないようだ。自分の気持ちとしては剣術クラブ一択なのだが、他のクラブ活動も興味がある。まあ、何事も体験だと思い、いろいろ経験してみることも大切だろう。
オリエンテーリングが終わったら昼食だ。貴族専科の生徒は、本館3階の角にある貴族専科専用食堂で食事を取るらしい。朝食は貴族寮の食堂で摂るが寮費込みなので無料だが、昼食は銀貨2枚の実費だそうだ。勿論、王族や上級貴族の子は従者やメイドが払っているが、子爵以下の子達は自分で支払っているのだが、中には銅貨2枚でパンだけ買っている子もいる。貴族といっても4男、5男以下になると親の仕送りも少なくなってしまうのだろう。
私は、奥のテーブルでスザンヌさんとジュリちゃんの給仕を受けながらゆっくりと食事をしている。
「ここ、相席よろしいですか?」
突然、後ろから声を掛けられた。
学園定番の悪役令嬢登場でしょうか?




