101 領地経営は順調のようです
領地の経営は順調でダメンズ元侯爵が統治していた頃に比べても数倍の収入があるようです。
アスラン歴468年2月14日、今日は私の10歳の誕生日だ。一昨年、ウエスタン侯爵に叙爵されてから1年半、領内は2年連続の大豊作で、領民にはようやく戦後の混乱が終わったと言う安堵感が見えてきた。また、王国も出資している第三セクターであるウエスタン鉄道会社の建設部門は、多くの雇用の創出と、資材調達の資本投入で、地元経済はうなぎ上りで上がり続けている。多くの貴族や大商人が鉄道会社に出資したがっていたが、メルボルン公爵家やランカスター侯爵家、路線が通過する計画地を管轄する貴族家のみに出資を許している。民間では、当初から参画してくれたウエスタン領内の商会と、昔から付き合いのあるバート商会だけに1口100万ジェルで募集していた。鉄道会社の資金担当から、もう王都までの敷設資金が集まっているので、これ以上集めても償却が大変なので、募集は打ち切るとの申し出があった。本当は、王都からランカスター領までも敷設したいが、公的資金が投入されているだけに、費用対効果を勘案して決めて行くつもりだ。鉄道に関する特許は、線路形状から機関車、客車、台車、連結器とあらゆる部分の構造を届けているので、他の商会なり貴族が真似をするだけで莫大な特許料が入ることになっている。
日本だと、鉄道を設置するのに土地収容の問題があり、期間と費用の殆どが用地取得にかかってしまうが、この世界では、すべての土地は王族・貴族のものであり、農民や商人は使用する権利金として土地代を算定している。使用料は、固定資産税として徴収しており、農地の場合は固定資産税込みで年貢が定められている。
と言うわけで、原則、農地や山林を開発するのは領主の専任権能であり、畑を収容された農民は、他の土地を開墾する権利を与えられるだけになっている。
開通は、今年の10月の予定だ。東隣のカルチェ・ラタン市までの400キロだけだが、沿線の住民は首を長くして待っているようだ。車両は、ウエスタン市の北に作った大規模工房で製作中だ。5キロ程度の試験路線を敷設して試運転を実施したところ、初期の性能は達成できていた。後は、乗り心地などを改良して行くだけだ。
10歳になると、領地経営に専念することになっており、ブルーム殿下の御学友は免除して貰った。領地のことはベンジャミン卿に任せていたのだが、彼だけでは領内の隅々まで統治することはできないだろう。自分なら出来るとは言えないけど、領地で領民の暮らしを見て、領民と接することにより、領民に寄り添った統治ができるようになる気がする。
最近、空間操作スキルがレベルアップした。『ストレージ』の容量が、もう底無しになってしまった気がする。馬車どころか、厩舎1つがマルっと収納できてしまう。後、『ゲート』も、一度行ったところならば、ある程度自由に設置できるようになった。ただし結界魔法の内側に『ゲート』を作ることはできない。それで2〜3日おきにはアーサーに会いに行けるし、何故か知らないが、毎朝、ベス嬢に会いに行かなければならなくなった。まあ、30分もしない内に戻っているので、スザンヌさんとジュリちゃん以外にはバレていないし。後、妹のアリスがずっと我が家にいる。まあ、部屋はいっぱいあるから良いんだけど。仕方がないので、アリス専属のオートマトン・メイドを作ってあげた。601号機になるんだけど。え、数字が多いのは、オートマトン兵をもう300体製作しておいたのですけど。
騎士団も、クロウズ卿が伝手を使ったり、王都で採用試験を何度かやって隠れた逸材を見つけ出したりと頑張ってくれて、現在58名となった。昨年末に王立学院騎士課程卒業者と各地の騎士養成学校卒業者から12名の新卒者を採用できたことも嬉しかった。
後、ウエスタン領立高等学校に騎士課程と魔法課程を新設したので、今年4月から第1期生が入学してくる予定だ。我が領では、初等学校は村には1校、町には1〜2校、市には3校以上設立することにしている。1学級30人の生徒を基準に施設と教職員を配置しているが、7歳から12歳までの6年間は、貴族の姉弟といえども通学させなければならない事にした。カリキュラムは、日本の小学校を参考に加減乗除や小数点や分数など、国内トップレベルの高等学校である王立学院入学レベル程度の学力が付くように考えている。
勿論、初等学校は、学費や教材費、給食費は無料だ。領民は領地の財産であり、領地の財産価値を上げるための投資は、当然であるとの考えで精度を構築した。
後、学齢年齢12歳以下の子どもを雇用することは厳禁で、発覚した場合、両親は罰金刑、雇用主は財産没収という商人にとっては極刑に値する罪にした。勿論、貴族が雇用主の場合には、爵位剥奪である。
厚生事業としては、領立病院を各市に設置するとともに、町や村には医療保健所を設置し、運営の補助金を支給することにしている。医療費は、最初、無料にしたいと言ったらベンジャミン卿が、他領とのバランスもあるので、人件費も含めた実費計算で医療費を徴収することにした。それでも協会の行なっている治癒の祈祷よりは格段に安い価格設定だ。
それと孤児院や養護施設だが、施設の孤児院や養護施設は全て廃止とし、公設の施設のみ存続させた。足りない所は新設としたが、今のところ大丈夫そうだとのことだった。孤児院には、原則12歳までいることができるが、初頭学校は卒業後も施設に住みながら働きに出ることが出来ることとした。勿論、その場合には寮費をいただくが、民間の相場に比べても格安の設定にしている。これは12歳で就職しても、見習いとしての給与しか貰えないため、住み込み以外では自活が難しいためだ。それでは就職できる職種が限定されてしまうため、このような制度にしたのだ。
12歳から20歳までの子を採用する際に、通常支払われる支度金の支給は禁止とした。これは支度金欲しさに、劣悪な勤務環境であると知りながら、子供を奉公に出す親を排除する目的のためだ。
◆
3月初め、王城で10歳になった貴族師弟のお披露目会があり、私も勿論招待された。出席の際は、両親及び婚約者の同行が許されるのだが、ベス嬢は去年から着て行くドレスや飾りつける宝飾品を選んでいて、王都内の色々な店に付き合わされてしまった。
私は、黒色の貴族服に金色の縁取り刺繍のある侯爵標準仕様の正装で出席する予定だが、婚約者であるベス嬢は、自由な服装で良いそうだ。ベス嬢も公爵家次期当主であるが、その辺は考慮しなくても良いのだそうだ。
当日、王城2階の大広間に集合だが、現侯爵家当主である私が一番最初に名前を呼ばれた。大広間の正面壇上には、国王陛下と王妃陛下、右脇には王族が並ぶのだが、アンドレイ王子殿下も正装で並んでいた。端正な顔つきは変わらないが、昔の狂人にも似た目の光は皆無で、静かな貴公子という雰囲気になっていることにはびっくりした。ブルーム殿下の脇にはシンシア様も薄ピンクのドレスでにこやかに立っておられ、ああ、これで、ここの王室もやっとまともになったのかと感慨もひとしおだった。
今年10歳になった貴族の姉弟は40人近くおり、この子達が、2年後の王立学院に入学が一緒になる訳だ。病気のために、今日、欠席の子もいるだろうし、他国からの留学生もいるだろうか50人位が貴族の子弟としての同期になるのだろう。
そう言えば、王都屋敷やウエスタン領都の領主屋敷には、貴族や大商人の娘の絵姿が送られて来る。私に侯爵家次期当主のベス嬢と言う婚約者がいるのを知りながら、第2夫人や側室でもとの思惑だろうが、はっきり言って迷惑以外の何物でもない。
国王陛下ご夫妻に挨拶をしてから、アンドレイ殿下に挨拶をする。右手を左胸に当てて一礼してから挨拶の口上を言うのだ。
「フレデリック・フォン・ランカスター・ウエスタンです。こちらは、私の婚約者のメルボルン侯爵家長女のエリザベス嬢です。以後、御昵懇にお願いします。アンドレイ殿下、お久しぶりです。お元気でしたでしょうか。」
「ウエスタン卿、その節はすまなかった。できれば許して貰い、以後、親交を深めていただけないでしょうか。」
流石に、この場で頭こそ下げないが、その真摯な言葉と視線に、殿下の言葉に嘘、偽りはないものと思われた。
「畏れ多いお言葉です。私の身は、アスラン王国と王室のためにあります。以後、侯爵として励みますので、よろしくお願いします。」
アンドレイ殿下の隣には、本来ならイグノリア第二王子殿下がいるはずだが、体調不良ということで欠席されている。そのため隣にはブルーム殿下がシンシア様と並んで立っている。
先ほどと同じ口上を述べて挨拶をすると、少し悲しそうな顔をして、
「もう領地に行きっぱなしになるんでしょ。次には、いつ来るの?と言うか、もう一緒に遊んだり剣の稽古が出来ないの。」
「そんな事はありません。国王陛下の誕生祝賀会や領主会議の時には王都に来ますし。あ、今度鉄道模型の時期バージョンができたら献上しに参りますよ。」
「え、鉄道模型って、去年の暮れに見せてくれた物でしょ。あれ、僕にくれるの?」
「ええ、まだ3号機は作成途中ですが、出来上がったら参上いたします。」
ブルーム殿下、もうニコニコ顔が止まらなそう。ここで、あまり長く話すと、後ろが使えてしまうので、次の挨拶対象である公爵家の並びに移動する。それから閣僚たちに挨拶をして、後は会食の始まるのを、待つのだが、これが非常に長い。陛下の前で緊張しすぎて、黙り込んでしまう子もいるのだ。でも、国王陛下とお話しするのが最初で最後という子もいるので、緊張するのもしょうがないよね。
このパーティーが終わると、もう暫くは王都に来る予定はないけど、『ゲート』を使ってベス嬢を送り迎えをしなければいけないので、非公式には週に2〜3回は来るのかな。あ、今、製作中のD51型魔動汽車が完成したら、殿下にプレゼントしに来なくっちゃ!
この回で、第3章は終わりです。
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