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「ああ、香山さん! お久しぶりです。何してるんですか、こんなところで」
和真は少しテンションをあげてそう言葉を返した。実際のどかに再会できたのがうれしかったのである。
のどかはマスクをミニサイクルの前カゴに入れたハンドバッグにしまいながら、
「うん、ちょっと――友達と会ってたんだけど、その帰り」
「友達? お友達、この辺に住んでらっしゃるんですか」
「うん。浜田山にね。滝口さんは? 仕事帰りか何か?」
「ええ――転職活動中で、面接終わりだったんです。帰ってきてまっすぐアパートに戻るのもなんだったのでここへ」
「転職活動? ああ、確か滝口さん、上北沢だったよね。今も上北沢に住んでるの? じゃあここ近所か。そうなんだ」
そこでのどかは救急車騒ぎを起こしている老人たちをちらりと見た。和真もつられてそちらを振り見た。
「だいじょうぶかな? 私たちもお手伝いした方がいいと思う?」
「だいじょうぶでしょう。二人も付いてるし、救急車も呼んだみたいだし、今から行っても僕たちがすることありませんよ」
「そうだね」
そこで会話は一回途切れた。沈黙が二人の間に少々漂った後で、のどかが聞いた。
「滝口さん、今暇なの?」
「え? まあ、はい」
「ちょっと話できるかな? 久々に会ったから」
和真は破顔した。
「もちろん!」