勇者は時間を戻る
第4作目の投稿です。
是非是非、お楽しみください。
結婚式は、とても質素に行われた。
極東の島国にあるヤマトの国初代大王が、大帝国、石の国の王女と結婚する。
そのことは世界中の大変な話題になり、各国から結婚式の参列を望んだ。
しかし、入江八広が全て断った。
最初の大王、神武に即位した後、彼は国民の幸せを最優先した。
金属鳥で大陸の帝国に帰る義父のシン皇帝と義兄のアテルイを神武は見送った。
妻となったザラは、その傍らに立っていた。
アテルイが神武に言った。
「神武よ。すばらしい結婚式だったな。至高の存在である我が父上の自慢の王女を妻にしたのだ。これからも、世界に名前を轟かせてくれ。もっとも我の名前の方が高く響くかもしれないがな」
「お兄様、油断はできませんよ。我が夫、神武は無限の力も持っています。八島の神の最大の御加護を受けていらっしゃいます。そして、人間が持てる最強の武器、勇気があります」
ザラが兄に言った後、皇帝シンが話しに加わった。
「そうだな。朕の後継者選びにも困るような事態になってほしい」
「父上、兄上、その可能性は全くないでしょう。僕はこの極東の国が最高の国になるよう、これからも子孫のために全力を尽くします。世界帝国の後継者には全く感心ありません」
「それは、もったないことよの!! 」
それから、皇帝シンと将軍アテルイは金属鳥に乗り込み、石の国まで帰っていった。
それから数年が経過した。
ヤマトの国の初代大王である神武となった八広は、思いやり深い統治者だった。
ある日、宮殿の上から、人々が住む里を眺めていた。
すると、気がついたことがあるらしく、至急、内部大臣を呼んだ。
「神武様。及びでしょうか」
「内部大臣、呼び出してすいません。お聞きしたいのですが、ヤマトの人民達から僕、大王の名前で徴収している年貢の率はどれくらいでしょうか? 」
「はい。10に3つほどです」
「3割ですか‥‥ 年貢の率が重いのですかね‥‥ 人々の生活も苦しいのでしょうか」
「大王、なんで、そのようにお考えですか? 」
「人民達の家々から立ち上がる煙です。少し前までは、1日に3回、必ずお米を炊く煙が多く立ち上がるのがここから見えました。しかし、今はほんとうに少なくなりました」
「はあ。しかし、我々国の方も事情がいろいろありまして‥‥ 」
内部大臣のその言葉を完全に無視して神武は言った。
「内部大臣。今日から実行してください。ヤマトの国の人民から徴収する年貢を3年間、免除します」
4年間が過ぎた。
ヤマトの国の神武大王は、ヤマトを離れ、ある場所を訪れていた。
それは、海見山の頂上にある邪馬台国の神殿の祈祷室だった。
結婚してから数年ぶりに、そこで邪馬台国の女王登与と対面していた。
「八広様。すいません失礼しました。今ではヤマトの国の神武大王ですね。人民に対して大変情け深い方だと、この片田舎にもうわさが流れていますよ」
「登与さん。良いのです、八広とお呼びください。僕はあくまで、邪馬台国の登与女王に仕える勇者なのです。それは永遠に変わりません」
「ありがとうございます。でも、今では邪馬台国といっても名ばかりになりました。ところで八広様、ザラ様と御結婚なさったのですね。お子様は?? 」
「いいえ、まだです。こればかりはどうしようもありません」
「大丈夫ですよ。2千年後の八広様のお友達の北川風香様はザラ様とそっくりでしたね。たぶん北川様はザラ様の子孫なのでしょう。ということは、必ず八広様との間にお子様ができるはずです」
久し振りに会った2人の話しはいつまでも続いた。
話しが終わりそうになると、どちらかがそれを阻止しようとしたからだった。
しかし、それも最後の時、別れの時がやってきた。
部屋の横に待機していた護衛の武者が八広に注意した。
「大王、もう、そろそろ馬に乗らなければなりません。ヤマトに帰らなければ、次の政治日程に支障が生じます」
「わかりました―― 登与さん。また絶対近いうちに会いに来ます」
「その時が楽しみですね。それではお見送りします」
八広は登与に見送られて神殿の外に出た。
そして、海見神社の階段を降り始めた。
ちょうど334段目になった時だった。
登与は思わず声を掛けてしまった。
「八広さん。333段目に気を付けてくださいね!! 」
(そうそう。333段目は踏まないようように注意しなければ)
八広は意識的に333段目を飛ばして降りようとした。
ところが、偶然に少し強い風が吹いて、八広の体に当たった。
その結果、彼はバランスをくずしてしまった。
その結果――
――階段の333段目を彼は踏んでしまった。
彼の姿はその場から消えてしまった。
「あ――――っ!!!! 」
登与は驚きの声を上げた。
そして、八広の姿が消えた333段目をいつまでも見つめていた。
長い時間、ずっとそこにいた。
その後、彼女は決心したような厳しい顔をして、階段のそばまで歩いて近づいた。
その後、肩から掛けていた緑色の勾玉を階段の下に向けて投げつけた。
勾玉は階段の途中で消えた。
‥‥‥‥
‥‥‥‥
「八広、入江八広、私の授業はそんなにおもしろくないか? 」
教師に指摘された入江八広は、高校の教室で立ち上がった。
「じゃ聞くが。皇室の先祖とされ、初代の大王とされているのは誰だ? 」
「神武天皇です」
「よく知っているな、でも私の授業中に何回も居眠りをするのは止めてくれ。君はこの学校で成績トップ、しかも剣道ではインターハイで全国優勝するような生徒だ。みんなの誇りあこがれなんだぞ」
「はい。すいませんでした」
学校の授業が終わった後、部活は休んですぐに帰ることにした。
彼の家は、校外の入江の近く
彼は必死に自転車のペダルを回していた。
小高い山々が、海の近くまで迫る入り江に沿った道だった。
もう夕方だったが、昼の間、容赦ない太陽に暖められた陸の空気は未いまだに上昇気流だった。
強い海風が容赦なく、自転車のペダルを回す彼に吹き付けた。
倒れそうになるのを、やっとのことで持ちこたえていた。
「もう、うんざり! 自分の家に帰るだけなのに毎日毎日この風と戦うのか! 」
彼は高校から自分の家に帰る途中だった。
家といっても、彼にはマイホームという感覚がほとんどんない。
やがて彼は、入江沿いの道から陸側に少し曲がって、大きな鳥居の前に進んだ。
鳥居の前には、小さな自転車置き場が有り、そこに自転車を止めて鍵をかけた。
その後、鳥居をくぐると小高い山を登る階段が続いていた。
彼は鳥居の前に立った。
すると――
階段のはるか上、頂上当たりから何かが落ちてきた。
何か石のようだった。
「あぶないな!! 」
八広は落ちてきたものを避けた。
すると、それは道路に落ちて、やがて海の近くまでころがっていった。
入江の岸壁に座って、釣りをしていた女性がそれに気がついた。
そして、それをを拾い上げ、手にとり、八広のそばに歩いて近づいて来た。
「これは、あなたの物ですか?? 」
入江八広は彼女の顔を見た。
一瞬、時間が混同した。
短くて永遠の時間が流れた。
彼は答えた。
「いいえ。登与さん。それはあなたの勾玉です」
お読みいただき心から感謝致します。
スペシャルサンクス トウ ユー
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
次回作もどうぞ御期待ください。一生懸命、書き続けます。
皆様に、素敵な秋が訪れますように♡♡♡




