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勇者は時間を戻らない

第4作目の投稿です。

是非是非、お楽しみください。

 入江八広(いりえやひろ)は、ふと我に返った。


 意識を取り戻すと、邪馬台国の神殿、女王登与(とよ)の祈祷部屋にいた。


「すいません、八広様。鬼道を使い私が認識したことをお見せしました。2千年後、八広様は命を落していません―― 御安心ください」


「登与さん。一つ気になることがあります。僕は海見山の333段目の階段を踏んで、この世界に転移しました。本人が転移したのに、元の世界にもう一人の僕が、なぜいるのでしょうか? 」


「‥‥‥‥すいません。私にもその理由はわかりません。しかし、八島の神々のしわざではないでしょうか。勇者となられてこの世界に転移した後、元の世界で混乱が起きないように」


「それでは、僕が元の世界に戻ったらどうなるのでしょうか。僕、入江八広(いりえやひろ)が2人になってしまいます」


「たぶん。どちらかが消滅してしまいますね」


「僕が2千年後に転移したら、消滅するということもあり得るのですね」


「わかりません。でも可能性は0ではありません」


「わかりました。僕は決心しました。分業制です!! 」


「分業制ですか?? 」


「この世界にいる僕はこの世界でがんばる。そして、2千年後に存在するもう1人の僕は僕でがんばれば良いでしょう」


「ほんとうによろしいのですか? 向こうの世界のお父様や等しい御友人の皆様と、お会いできないのですよ」


「全く問題ありません。僕は生涯で最大の決心をしました。こちらの世界にいて、勇者としての義務を果たしていきたいのです―― 」


「ありがとうございます」


 登与は微笑んだ。


 八広は女王が世界最高に微笑んだ顔を見た。


 それは、彼に対する最高最大のギフトだった。




 ――――――1年後


 ヤマトの国が建国された。


 その結果、邪馬台国とヤマトの国の2つが重なるように存在することになった。


 ヤマトの国は、大王おおきみとして、八広が統治することとなった。


 そして、ヤマトの国、最初の大王に即位した八広は名前を改めた。


 その名前は神武(じんむ)だった。


 即位すると同時に神武は妻をめとった。


 大陸にある巨大帝国である石の国の第1王女ザラを妻とした。


 ザラを妻とするまでに、神武はかなり悩んだ。


 しかし、彼に決心させることがあった。




 少し時をさかのぼったある日――――


 海見山の階段の1段目に男女2人が座っていた。


 それは八広と登与だった。


「八広様。準備は順調ですか? 」


「はい。もう、邪馬台国のほとんどの住民がヤマト地方への移住を完了しています。後、ここに残っているのは登与さんとわずかの従者だけです」


「八広様。御相談があるのですが‥‥ 」


「はい。女王様、なんなりとお申し付けください。遷都先のヤマトには、この神殿に負けないくらいの立派な神殿ができあがっています。それに敷地も大変美しくしました」


「そうですか。楽しみですね、どのように美しいのですか?? 」


「紅葉が大変美しい、もみじの木々をたくさん植えました。たくさんの種類です。ヤマト地方に育つことが可能な全ての種類を、八島のさまざまな地方から持ってきました。千本ほど」


「もみじですか、それはまさか―― 」


「正解です!! 前に登与さんが一番好きだと言われていたものです」


「ほほほほ‥‥ 数千年後の子孫達はさぞ驚くでしょうね‥‥ 」


「そうですね。なんでこの場所に、もみじがこんなに多いのかと。はははは 」


「‥‥‥‥ 」


 その瞬間、登与の顔が暗く曇った。


「登与さん、何か御心配ごとでも」


「‥‥‥‥ 八広様、私はその神殿に行くことができません」


「えっ、えっ」


「私は八島の神々に仕える巫女です。そして、八島の神々がいらっしゃる神界には、この神殿の祈祷所がある場所からでしか接触できません。私は、ここを離れることができないのです」


「それでは、遷都は止めにしたらどうですか」


「八島は、ヤマトから発展するのです。ヤマトの新たな国が起きなければなりません。子孫達のために」


「じゃあ、僕は女王に仕える勇者として、ずっと、ずっと、ここにいます」


「私の一生で、今からが一番辛い時間です。八広様、これから神武様になられますが、神武様はヤマトに国を興すのが事実なのです。それから逃げることができません」


「僕が逃げてしまったら、どうなるのですか? 」


「逃げても、逃げても、事実は追いかけてきます。必ず成就されるのです」


「僕が国を興すのですか? 」


「はい。ヤマトという国を興すのです。最初の大王(おおきみ)神武としてです」


「‥‥‥‥ 」


 八広はその場で黙り込んでしまった。


 やがて、彼は決心した。


「わかりました。仕方がありません。でも、僕はちょくちょく、ここに帰ってきます」


「ええ、歓迎します。これから、この地はどんどん寂しくなってしまいますが」




 しばらくして、ヤマトの国の建国が宣言された。


 最初の大王、神武と大陸にある巨大帝国、石の国の第一王女ザラとの結婚式が行われることになった。


 前日、ヤマト地方の上空に多くの金属鳥が飛来した。


 それは、石の国の飛行艦隊だった。


 ヤマトの国と打ち合わせした場所に金属鳥は次々に着陸した。


 そして、金属鳥の中から、まず花嫁のザラが降り立った。


 そして、その次に父親である皇帝シン。


 次に兄である将軍アテルイが降り立った。


 皇帝が最初に言った。


「ザラよ。この地はすばらしいな。四方を美しい緑で囲まれている、しかも周囲を相当力の強い神獣が守っている。特に東を守る青龍は最強だ。私の使役する青龍が怖がるほどだ」


 皇帝に引き続き、将軍アテルイが言った。


「父上、青龍だけではありません。西を守る白虎もすごいのです。私はほしくなりました」


「兄様。私の夫となる神武が勝ち取ったものです。手を出さないようにしてください」


「わかった。わかった。でもな、我が所望しても我のものには絶対ならないだろう。どういう経緯があったのかはわからないが、白虎は完全に八広に心服している。いや今の名前は神武だな!! 」


 季節は秋だった。


 季節感があまりない大陸と大きく違う紅葉に3人は見とれていた。


 皇帝が言った。


「これらの木々の葉は美しいな。しかも、さまざまに美しい。ザラ、毎年、この季節になるとこの美しい光景を見られて良いな」


「‥‥‥‥‥‥ 」


「ザラ、何かあるのか? 」


 ザラの沈黙を不審に思った皇帝が言った。


 兄の将軍アテルイが助け船を出した。


「ザラよ。この勝負に最後は必ず勝つのだぞ。誰のために八広が植えた木々なのかはわからないが、お前が勝てば良いのだ。これからお前はヤマトの国の初代大王、神武の妻なのだから!! 」

お読みいただき心から感謝致します。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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