神武への遠征13(黄泉の国)
第4作目の投稿です。
是非是非、お楽しみください。
邪馬台国と黄泉の国、
2つの国の間で起こった戦いが終了した。
黄泉の国の軍勢は、国王奈落1人だけになった。
奈落は、入江八広の方へ歩いて近づいてきた。
「八広将軍、完敗です」
「いいえ奈落様、これからが大変な戦いになります。死者と生者の接し方を理想なものにしなければ」
「古代からあった大変な課題ですが、あなたならば良い方法を見つけてくれるでしょう」
「生者が死者のことを思い、悲しむのは当然です。でも、うまく接することで、お互いに良い未来を築くことができると確信しています」
「そうですね。死者はこの世に残してきた生者が、自分達のことを忘れず、すばらしい未来に向かって歩き出すことを望んでいます」
「むずかしいことですが、必ず成し遂げられると思います」
そう言いながら、八広は未来、自分のほんとうの世界で行われているお盆などの行事を想い出していた。
「それでは、入江八広さん、ここらへんでお別れです」
奈落は自分の顔を覆っていた覆面をはぎ取った。
その顔は完全に骸骨だった。
「八広さん。驚かれたかもしれません。私のほんとうの名前はイザナギですが、もう数百年前に命を落しているのです。実は死者なのです―― 」
そう奈落が言った後、天から美しい光りが降りてきた。
その光りは奈落の前に降り立つと、実体化した。
美しい女性がそこに現われた。
「あなた。お迎えに参りました」
「イザナミ!! お前の顔を見ることができたのは数百年ぶりだろうか」
「数百年なんて‥‥ いやだわ、だいぶ年老いたでしょう」
奈落の骸骨の顔が、実際のカッコ良い男性の顔になっていた。
その顔で八広の方におじぎをした。
大粒の涙が流れていた。
「奈落さん。これから? 」
八広はそう質問したが、既にイザナギはイザナミと手を固く結んで空に舞い上がり始めていた。
「八広さん。人間の情念の大きな固まりが消滅したので、死者の国である黄泉の国は地上の上から、今は完全に消滅しています。これからが大切です。あなたが八島の人々を導いてください」
(奈落さん。難しいことですが僕にお任せください―― )
八広はそう思いながら、2千年後にも解決できない大変な問題であることを認識していた。
「八広様。大勝利でしたね」
ザラが八広に言葉をかけた。
「見ていました。あのご夫婦はお互いに亡くなった後、数百年間も相手のことを思い続けていたのですね」
「そうですね。素敵なご夫婦です」
「ところで八広様、戦いの最後で登与さんが遠い場所から助けてくれたのですね」
「邪馬台国の神殿がある海見山と、この場所とはかなり遠いのに、すごい霊力ですね」
「登与さんは、遠い場所から僕の戦いを見てくれていることがわかり、うれしいです」
「八広様。私はいつもおそばにいるのですよ」
「そうですね。とても心強いです。ありがとうございます」
「登与さんと私、どちらがお役に立っていますか」
「もちろん、そばにいてくださるザラさんです」
八広のその言葉を聞くと、ザラの顔が喜びで明るくなった。
八島の中心にヤマト地方があった。
この遠征の目的は、このヤマトの土地を制圧することだった。
この地方は現在、長すねという豪族が納めていた。
八広は事前に長すねに手紙を送った。
(ヤマトの土地をお譲りいただきたい。そうすれば、長すね様を高い地位で邪馬台国にお迎えします。納める領地もヤマトの土地の2倍差し上げます。)
長すねの元に、八広からの手紙が届いた。
家来からその手紙を渡され、読んだ長すねは激怒した。
「なんだ!! いきなり我が先祖から守り通しているこのヤマトを譲れとは!! 高い地位も2倍の領地もいらないわ!! 」
激怒した長すねを年長の老家臣がいさめた。
「長すね様。邪馬台国の軍はとても強いのです。指揮する八広将軍は連戦連勝で、これまでも数カ国に対して勝利しています。さらに八広将軍は大陸にある石の国、シン皇帝の御息女の婚約者なのです」
「ますます気にくわないわ!! 八広がどんな男かわからないが、俺も八島で最強と呼ばれた男だ。何が石の国、シン皇帝の御息女か、きっと大帝国に助力してもらうためとんでもない女と婚約したのだろう」
老家臣は長すねの性格を良く知っていた。
(もう何を言っても、長すね様は自分のご意見を変えないだろう―― )
「誰か、俺が今から言う言葉を書いて、八広への返信手紙としてくれ」
老家臣が手を上げた。
「邪馬台国、八広将軍よ。このヤマトの土地を譲る考えは全くない。ほしければ、力尽くで来い―― 」
全面戦争になることが決まった。
ヤマトの土地は山に囲まれた盆地だった。
軍師ハンが八広に提言した。
「とてもやっかいな地形です。山に囲まれたヤマトに入ることができるルートは1つだけです。峠を抜ける道ですが狭くてしかも、入る場合は坂道を登らなければなりません」
「峠の頂上で相手が陣を構えていると大変ですね。たぶん、絶対そうするでしょう。それでは、相手が気がつかないうちに、日が昇らないうちに峠を抜けてしまいましょう」
八広のその考えにザラが猛反対した。
「私は絶対反対です。八広様が指揮する軍が、こそこそ暗闇に紛れて進軍するなんて、後世に記録として残したくないのです。それに、長すねという男に私の姿をしっかり見せてやりたいのです」
ザラは、長すねから届いた返信の手紙を読んでいた。
(‥‥ところで、八広将軍様。貴殿は石の国大帝国の王女様と婚約されているそうですが大変ですね!! それに、王女様といっても大したことないでしょう。美しさとは正反対ではありませんか?? )
ザラはこの部分を読んで、長すねが大嫌いになった。
そして何とか自分の姿を長すねに見せてあげたいと思った。
自分がばかにされているのにも腹をたてたが、
八広がばかにされている方がもっと許せなかった。
結局ザラの強い意見で、日が昇ってから邪馬台国は進軍した。
実は八広は、登与からこのヤマト地方に邪馬台国が移転しなければならないと聞いていた。
ヤマト地方が、八島の霊力の中心にあるからだった。
そのため、長すねに正々堂々勝利して、この地方の人々を心服させたかった。
峠の坂道を登ると、やはり、その頂上で長すねの軍が陣をしいていた。
「なんだ。八広将軍はばかか!! まともにこの道を通りヤマトに入るとは!! 」
お読みいただき心から感謝致します。
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週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




