神武への遠征8(たたら国)
第4作目の投稿です。
是非是非、お楽しみください。
自分が一番大切にしている宝を奪われた水竜の怒りだった。
竜は姿を見せない時が最も恐い。
ただ、今回はあまりに激怒していたので、姿を見せた。
「ああああ、水竜様がお怒りになっている。私達は恩を仇で返してしまった!! 」
狼狽した村長が叫んだ。
その姿は、村の上空を全て覆っているかのようだった。
「出たわね。水竜、何かわらわに抗議したいことでもあるの! いいから、かかってきなさい」
月夜見は水竜の勾玉を首から掛けながら、水竜を挑発した。
水流は鋭い牙を生やした口を開けて月夜見に遅いかかった。
もう少しで、月夜見の命がなくなると思われた瞬間、
何者かが水竜の攻撃をはね返した。
それはスサノオだった。
彼は剣を抜き、その一閃で水竜を切った。
さすがに水竜の牙を受け止め、跳ね返すだけだったが、
スサノオの剣の威力は人間離れしていた。
これには水竜が一番驚いた。
竜は相手の強さを正確に認識し、強い相手にはそれなりの敬意を払う。
しばらく上空をうろうろしていたが、やがて決心したように、さっと、姿を消した。
あっという間のことで、天候も快晴し晴天に戻った。
「スサノオ、御苦労様」
月夜見からの言葉はそれだけだった。
ただ、村長達は大変なことが起きたと思っていた。
水竜はその村を離れて、別の村に去ってしまった。
この事件依頼、緑色の美しい宝石である翡翠はその村に流れて来なくなった。
川が分流している先の別の村に流れ着くようになった。
村は貧乏になってしまった。
話した後、くしなだという名前の娘は言った。
「翡翠を月夜見様に売って、お米をたくさん受け取りましたが、飢饉になって餓死者が出た地域があると、人望がある我が村長はお米をただで譲ってしまうのです」
「そうですか。あの場面でくしなださんもいらっしゃたのですか」
「はい。末席におりましたが、水竜の攻撃にたじろがず剣を振るったスサノオ様のお姿はいつまでも、私の心の中に残っております」
「くしなださん。この村に若い働き手はいますか」
「いいえ。この村に翡翠が流れ着かなくなってから、高い技術をもつ若者はみんなこの村を去って行きました」
「それでは、私がこの村に定住して働き手となりましょう。どこかに住める家はありますか」
「空き家はたくさんあります。今から村長の所に御案内します。もう、嵐は去ったのでしょうか」
スサノオが家のドアを開けた。
後に続いたくしなだも、大変驚いた。
「うそ!! わずかな時間でこんなに良い天気になるなんて!! 」
「すいません。嵐の原因は私の心です」
「そうですか。そんなに‥‥ 苦しまれたのですね‥‥ 」
「いえいえ。今、私の心は驚くほど落ち着いています。
今までの嵐が嘘のように晴れ渡っていた。
スサノオが怒れる神となって、去ってしまったことの大国主のみことは深く後悔した。
知らないうちに思わずひとり言が口から出た。
「たたら国王として、私は失格だな」
「大丈夫ですよ!! 」
大国主のみことが驚いて振り向くと、妻の女王てるよだった。
「私は巫女としての第6感で感じました。どういう理由かわかりませんが、スサノオの怒りはもう消えています。何か良いことがあったのでしょう」
「そうか。それならば良いのだが」
邪馬台国の将軍、入江八広の次の遠征先は黄泉の国だった。
遠征前に女王登与から話しがあった。
「八広様。遠征先の国の中で、黄泉の国には最も注意してください。なぜなら、黄泉の国は地上に本来存在してはならない死者の国だからです」
「死者の国ですか。話しが通じるでしょうか」
「その点は問題ありません。黄泉の国を構成するのは、半分は死者なのですが半分は死者に引き寄せられた生者なのです。国王の奈落も生者ですよ」
「この時代には、地上に死者の国があったなんてびっくりです」
「八島の神々も大変心配されています。死者の国は、私達の生者の国とは別次元の場所にあるべきなのです。もしかしたら、黄泉の国との戦いは本格的な戦闘になるかもしれません」
「死者との戦いはどうすれば??? 」
「八広様。もし、黄泉の国との戦いで死者を退けなくてはならない場合はこの宝具をお使いください」
登与は八広に、細長いひのきの箱に入った何かを渡した。
八広がその箱を開くと、ボウにたくさんの輪のような金属が着いていた。
「この宝具を使わなくてはならない時に詠唱する言葉をお教えします。こちらへ」
登与が八広に顔をそばにするように合図した。
耳元で、登与が詠唱すべき呪文をささやいた。
驚くべきことに、海見神社の宮司の息子である八広は既に知っていた。
黄泉の国への遠征が始まった。
前にたたら国で黄泉の国の奈落国王と会った時、既に訪問日程の了解は得ていた。
たたら国から通じる道を八広他、邪馬台国の一向は歩いていた。
すると途中で、明らかに別の世界に区分される場所があった。
そこから先は、道の両側に何もなかった。
草木が全く生えていなかった。
八広のそばを歩いていたザラが、話しかけてきた。
「八広様。あそこから先は全く別の世界ですね。私には全く理解できません。大陸生まれの私は、死者の世界なんて全く考えたことがありませんから」
「そうですか。この島を引き継いだ2千年後の世界の国の人々は、死後の世界も大切にするのですよ。なにしろ1年に1回、お盆という期間に死者が生者の国に帰ってくるとみんなが信じています」
「変ですね」
「僕も未来の世界にいた時はお盆について違和感は全くありませんでした。ところで!! ここから先はまず、僕1人で進みましょう」
「えっ、えっ、1人で大丈夫ですか」
「たぶん、大丈夫です。むしろ、他の方々が行く方が危険です。じゃあ―― 」
引き止められるのを避けるように、八広は一人で前に進み歩き始めた。
そして、黄泉の国との境をなんなく越えた。
やはり予想したとおりだった。
空気も感覚も全く変わらなかった。
(2千年前はこれが普通だったんだな)
そのうち、八広は自分が何かに囲まれたことに気がついた。
なにか、うめき声のようなものが聞こえてきた。
(ゾンビ映画を見ている記憶が増幅されているのかな)
今度は道の前方にたくさんの影が見えた。
それは、腐った死体、中には完全に骸骨になった死者のようだった。
(仕方がない。戦うか)
八広は背中に背負っていた箱から宝具を取り出した。
たくさんの輪が付いている棒だった。
お読みいただき心から感謝致します。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




