神武への遠征4(たたら国)
第4作目の投稿です。
是非是非、お楽しみください。
無気味な闇が、たたら国近くの海岸線一体に広がった。
入江八広は海の上空を飛んでいたが、その異変を感じた。
「そうか―― やはり、だましうちプラスふいうちか。顔は似ていても、性格は登与さんと真逆なのだな」
八広は実は、月夜見の性格を既に感じていた。
最初、一目見た時はあまりに邪馬台国の女王登与と似た顔だと思った。
しかし、その後、恐ろしいほど冷酷で狡猾な気持ちを感じ取った。
それでジロジロ見たのだった。
彼が今飛んでいる空の上に、一番濃く深い闇が集まっていた。
「おおかた、僕を海の深い底に落すように、神に依頼したのだろうな」
八広はそう言って苦笑いした。
彼は自分が乗っている八咫烏に命じた。
「からす様。僕にまとわりつく闇を吹き飛ばしてください」
そう言うと黄金の八咫烏は人鳴きした。
「なんだ、普通のからすと鳴き声が全く同じなんだな」
八咫烏の黄金の体は輝きだし、そして最大限の輝きを放った。
夜明けの太陽のように、闇は消されていった。
「ありがとう。からす様」
海岸の断崖の上で、その様子を月夜見とすさのおが見ていた。
「なにさ―― 邪馬台国のあの将軍、冷静に対処したわね」
「これは、月夜見を理解していたな」
「なに、すさのお、どういうこと」
「闇に囲まれても、八広将軍は少しもあわてず、最適な判断をしたのでしょう。立派な男です」
「わらわの術を瞬時に破った男をほめるのですか」
「はい。月夜見様。ここはほめるしかありません」
「そう言われるとそうじゃ。もしかしたら、あのような男はわらわの最大の敵になりそうね」
「どうでしょうか。友好を結んでも良いのではないでしょうか」
「うん、5日後の友好協定の行方次第ですわ。一応、今日のことはお父様に話しておきましょう」
たたら国の巨大な王宮の中だった。
月夜見とすさのおが、国王である大国主のみことに報告していた。
「お父様、5日後に邪馬台国の使節団が参ります。入江八広という将軍がここに参ります」
「そうか―― もう、おまえ達はその将軍に会ったのだろう。強そうか、すさのお」
「国王陛下、その将軍はかなり強いと思います。そして、その心はさらに強いでしょう。月夜見様の闇に囲まれても少しも動じませんでした」
「ほう、相当な男だな!! 月夜見はどう思う? 」
「すさのおが申しましたとおり、かなり強いと思います」
「私にも事前の通知がされている。友好協定を締結したいそうだ。邪馬台国は大艦隊を遠征させているが、その大艦隊は海岸よりかなり離れて、目では見えない場所に停泊している」
「なぜでしょうか」
「普通は、それほどの大艦隊の威力を背に、交渉を優位にするため、海岸に近い場所に停泊するのだがな」
「『ばか』なのでしょうか」
「いやいや違うぞ。常識と反対のことをできる人間は強い」
5日後、邪馬台国の使節を引き連れ、八広はたたら国に港に上陸した。
大艦隊を外洋に残したまま、港には入らなかった。
港からは案内役の先導で、王宮まで歩いた。
この港はさかい港と呼ばれ、町はさかい町と呼ばれていた。
貿易がさかんらしく多くの人々であふれかえっていた。
大陸の石の帝国から来た人々も多く、八広に従うザラ王女を見ると、その場でひざまづいた。
ザラの美貌はここでも注目された。
しばらくすると、邪馬台国の使節は王宮の城門の前についた。
城門では、すさのおが部下である数人の戦士を引き連れて待っていた。
そして八広の姿を見つけると深くおじぎをした。
「八広将軍、お久し振りですね。見ましたよ、我が主が放った闇を見事に吹き飛ばしましたね」
「運がよかったのです。ところで、すさのおさんは、あの王女の従者なのですか」
「はい。私はこの国の最強の剣士として、王女の守護を任せられています」
「そうですか。でも大変じゃないですか。月夜見様の性格が‥‥ 」
「心配していただきありがとうございます。正直言って大変です」
「あの―― 気疲れというか、ストレスはどのように解消されているのでしょうか」
「山に出かけて暴れ回るだけです」
「なるほど」
王宮の中の謁見の間で、八広は大国主のみことに会った。
彼が大国主に友好協定を見せると、大国主はすぐに返事をした。
予想に反し、大きく首を振った。
「八広将軍、この協定には同意できません」
「どうしてでしょうか」
「私は友好協定を締結するのではなく、我が国、たたら国をお譲りしたいのです」
「えっ」
「我が国を邪馬台国登与女王にお譲りします」
「もしかしたら、それは、あなた様。八広将軍にお譲りすることになりませんか」
王の横に控えていた女王がベールをとって、話しに加わった。
その顔は、登与とそっくりだった。
「驚かれましたか。私は邪馬台国の出身、てるよと申します。そして、登与女王の母親かぐやは、私の双子の姉なのですよ」
「えっ、えっ」
「たぶん、私のめいである登与は八広様を好きになるに違いありません」
「あの、たぶん、僕が登与さんと結婚して夫になるだろうとおっしゃていると思いますが、不可能です。僕には既に婚約者がいるのですよ」
そう言うと、八広は後ろを振り向きザラの方を見た。
いきなりの展開でザラは驚いてどぎまぎしたが、やがて、てるよ王女に向かって深くおじぎした。
「ほほほほ、おきれいな方ですね。そうですか、たぶん登与女王も絶世の美女だと思いますが、八広将軍のお好みはだいぶ違うのですね。でも大丈夫ですよ、妻を複数もてば良いのですから」
「お母様。今の発言は自分のことを絶世の美女と言っているのと同じですよ」
「そうですか。しょうがないじゃないですか、事実ですから」
てるよ王女は続けた。
「ですから、邪馬台国の登与女王に国譲りしたとしても、全く縁のないものではないのです。身内に譲るのですから。それに、国王である大国主のみことは、あなた、八広将軍をとても気に入られたのでしょう」
「ありがとうございます。でも、取りあえず友好協定を締結していただけませんか。国譲りのお話は、僕が帰国して、登与女王に了解していただいてから進めることにしていただけませんか」
「わかりました」
たたら国の国王、大国主のみことから了承を得た。
お読みいただき心から感謝致します。
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作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




