彼は生きているのか死んでいるのか?
第4作目の投稿です。
是非是非、お楽しみください。
北川風香の目からは涙が流れていた。
「風香さん。333段目を踏んでこちらの世界に来たのですね」
「そうよ。あちらの現代では大変なことが起きてしまったから」
「大変なことって、僕に関係あるのですか? 」
「あるわ 大ありよ! ある国の艦隊の軍事演習で、実弾が誤って海見神社に当たってしまったのよ。それで、神社の本殿は全壊して燃えつきてしまいました」
「と言うことは僕の家も大変ですね」
「幸いなことに、お父様は別の町に出かけていなかったわ」
「それでは神社や家には誰もいなかったのですね。よかったです」
「‥‥‥‥ところが、そんなに簡単ではないの。八広、あなたは現代に帰っていて、神社の本殿にいたの」
「いやいや。僕はいろいろありましたけど、ずっと、こちらの異世界にいましたよ! 」
「あなたは1回、現代に帰ったわ。学校にも通っていたのよ。クラスのみんなも毎日、それ見ているわ。もう少しで卒業だったのに! 」
「卒業!!! ですか、僕が登与さんを現代を案内して、その後この異世界に転移した時、僕の記憶では、2年生が始まったばかりでした―― 」
「そうね。すると私の目の前にいるのは一体誰なの? 」
入江八広は、何か無気味なものを見るかのような顔で、北川風香にじろじろ見られた。
2人のそのようなやりとりを聞いていた登与が話し始めた。
「時は絶対的なものではありません。さらに、人間の存在も同じです。八代様が本来いらっしゃるべき時に、もう1人の八代様が自然に現われても不思議ではありません」
「とすると、僕は死んでいるのですか、生きているのですか? 」
ザラが少し強い調子で言った。
「私の婚約者である八広様は絶対に生きてるわ。私は今、確かにそれを見ているから」
登与が言った。
「そうですね。今の時間、確かに八広様は生きています」
「ふ―― よかった。取りあえず、この異世界で僕は一生懸命に生きることにします」
八広のその言葉を聞いて、登与、ザラの2人が声をそろえって言った。
「八広様。あまり、異世界だということを認識されない方がよいですよ。生きているこの世界が八広様の本来の世界なのですから」
「はい。わかりました―― 」
異なる要素が加わったが、八広が邪馬台国に帰国した催しは終了した。
その後、八広は外に出て邪馬台国の神殿に登るための海見山の階段をじっと見ていた。
ふぃに、後ろから誰かが肩をたたいた。
「八広。今、333段目を見ていたでしょう」
北川風香だった。
「大丈夫よ。きっと、333段目を踏めば元の世界に帰れるから! 私はお先に―― 」
彼女は階段を降り始めた。
そして334段目に降りた時、頂上にいる彼に向かって振り返った。
満面の笑顔だった。
彼の心の中の苦悩を完全に理解して、痛みを和らげようとする究極の優しさだった。
「じゃあね。私は2023に帰るわ。大丈夫、きっと帰れるから!!! 」
その後、彼女は333段目を踏み、そして消えた。
「八広様。あの娘、なんだか私に似ていますね」
八広も振り返ると、ザラが満面の笑顔でそこにいた。
身長こそ、風香よりはるかに高いが、その笑顔はそっくりだった。
「‥‥‥‥ということは、1つの可能性が高いですよ!!! 」
「えっ、それはどういうことですか? 」
「今、婚約中の私と八広様は未来に結婚して幸せな家庭を築く。その結果、何人かの子供が生まれ、八代様の時代まで多くの子孫が繁栄する。あの北川風香さんは、その1人でしょう」
「この時代に『他人のそら似』という慣用句はありますか? 」
「ありません。だけど、おっしゃることはよくわかります。だけど、あの娘は絶対に私の子孫です。心眼で確認しましたから間違えありません」
「心眼ですか―― 」
「我が帝国の王族に神から与えられるギフトです。どんな問いも、理論的に正しい根拠に基づいて答えを出すことができます。今回はあの娘と私の血液を比べてみました」
「血液を比べたのですか」
「もちろん、あの娘から血を抜きとったわけではありませんよ。私の心の触手は、どんなものにも触ることができるのです」
「そうですか。それならば間違えありませんね。でも、もう1つ、有力な仮説がありますよ」
「どういうものですか」
「ザラさんと僕の子供の子孫以外に、ザラさんと僕以外の人の子孫だという可能性もあります」
その瞬間のことだった。
「バチーン」という周囲に鳴り響くほど大きな音がでるほど、八広はザラに頬をビンタされた。
驚くべき早さで、ザラは八広の前から姿を消した。
「八広様。それは言ってはいけないことでしたね」
今度は登与が八広の前にいた。
「この異世界では、正式に結婚した2人以外、子供ができることはありません。邪馬台国がある八島の神、そして石の帝国がある大陸の神は共通して、厳しい戒律としているからです」
「ですから、八広様がおっしゃったことは、やがて八広様がザラさんとの婚約を解消する。そして、その可能性もあると言っていることになるのです」
「あっ!!! ザラさんに申し訳ないことを言ってしまった」
「ほんとうに申し訳ないと思われていますか??? 」
なんと、知らないうちにザラが、八広と登与のすぐそばに立っていた。
「なんで、そこに立っているのですか」
「不視の姿に一瞬なったのです。簡単に言うと、一瞬で姿を消したのです。登与さんはわかっていらっしゃたようですが、この絶妙なタイミングで言っておかなければならないことがあります」
「はい」
「私の父、シン皇帝から正式に結婚してはどうか、また、結婚までの期間を定めたらどうかと言われています。そして結婚に当たり、八広様に改名してはどうかと」
優柔不断な入江八広は、思わず登与の方を見た。
「八広様。いっそのこと御結婚されたらどうですか!!! 新しい名前は私が考えます。名前だけ変えるだけでも、未来で死んだことの影響から逃れることができる可能性が高まります」
「そうですか。新しい名前は登与さんに考えていただいてよいでしょうか」
「前から八広様に最もふさわしい名前が、いつも心の中に浮かんでいました」
「そうですか、是非、教えてください」
「気に言っていただけるかどうか―― その名前は、」
「じ ん む」
「別に、結婚してからではなく、今、改名されても良いのですよ」
八広は無気味な気を感じた。
ザラが恐ろしいほど怖い顔で、登与をにらみつけていた。
お読みいただき心から感謝致します。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




