努力した笑顔
第4作目の投稿です。
是非是非、お楽しみください。
穏やかな表情で言った後、シン皇帝の表情ががらっと変わった。
「しかしだ! 理由はどうであれ! この世界の至高の存在である皇帝が話したことを訂正したんだ! 」
「お父様。本日は、私と八広様の婚約を報告しました目出度き日でございます‥‥ 」
ザラがその後を続けようとしたが、皇帝はそれを手でさえぎった。
「八広よ。お前に罰を与える! 我が帝国が何度攻めても服属しない国が南方にある。我が婿として、その国の討伐を命ずる。ザラの軍団を引き連れ、お前が進軍させよ」
「父上。南方の蛮族の国の討伐は私への命令では―― 」
アテルイが口出ししたが、皇帝はそれを完全に無視した。
「八広よ、ただ進軍するだけでは許さない。必ず、その蛮族の国を我が帝国に服属させよ!!! 」
謁見の間に控えていた多くの人々がざわざわした。
南方の蛮族の国の戦士達は全く命を惜しまず戦い、敏捷な戦士達は強かった。
これまでも帝国の軍隊を何回も跳ね返してきた。
シン帝国最大の課題といってもよかった。
「はい。皇帝陛下、八広が確かに承りました」
八広は皇帝に向かって深く頭を下げた。
謁見の間から退出しよおうとする八広を、呼び止めた者がいた。
「八広様。私などのために申し訳ありません」
「バトゥさん、大丈夫ですよ、必ず」
八広はバトゥに向かって明るく微笑んだ。
その笑顔には、八広の強い自信と、バトゥに心配かけないために、最大限に努力した優しさがあった。
バトゥはその時の彼の表情を一生忘れなかった。
その時の八広は最高にかっこよかった。喜んで義務と困難を引き受けた。
そしてバトゥは何十年後に、世界史に名を残す偉大な将軍になった。
謁見の間を出た途端、ザラが話しかけてきた。
「八広様。私の弟のため、お骨折りいただき、申し訳ありません」
「いいえザラさん。あなたの軍団を南方遠征のためお借りしますよ」
「そんなことはかまいません。お父様にも頭にきます。お父様はなぜかバトゥに厳しいのです」
「ザラさん。南方の蛮族の国のことを知りたいのですが」
「これまでの戦記については、王立図書館の中に保存されています。今から参りましょうか」
「はい、お願いします」
2人はすぐに王立図書館に向かおうとして銀河宮の外に出た。
すると、出てすぐの場所でアテルイが待っていた。
「八広。久し振りだな。お前がおれの弟になるなんて予想もしなかったな」
「はい。僕も予想していませんでした。それにアテルイさん、まだ弟ではありませんよ。ザラさんと婚約はしていますが結婚はしていませんから」
「そうだな、はははは、さきほど我が父皇帝に口答えした勇気には最大限の敬意を示したいぞ」
八広が近くで見るアテルイは、やはり2メートルを軽く超える大男だった。
「我が軍団も貸すぞ。連れていくか? 」
「いいえ。ザラさんから兵をお借りするだけで十分です」
その後、ザラと八広は王立図書館の建物の中に入った。
突然の王女の入室に、図書館の中は大さわぎになった。
しばらくして、最も偉い図書館長らしき人物が出迎えに出てきた。
「ザラ王女様。本日はこのような汚い書庫の中にどのような御用事でございましょうか」
「今日は、私の横にいらっしゃる八広様が、私と婚約することを皇帝陛下に正式にお認めいただきました」
「はっ、誠におめでとうございます」
「それで、八広様は南方の蛮族国家平定のための総司令官に任命されました。ですから、南方の蛮族国家と我が帝国との戦記について、八広様にお読みいただきたいのです」
「戦記だけではなく、後、南方の国々の気象・自然・文化などを調べている本があったなら読みたいのですが」
「はっ! 今すぐにお手元におそろえいたします。本の閲覧室を用意いたしますので、さあさあ、中にお進みください」
「それでは、よろしくお願いします。それから、ザラさんは御自身のお仕事にお戻りください」
その時、図書館長の案内で八広は閲覧室に入り、長時間滞在した。
彼は高校で勉強はあまり好きではなかったが、自分が興味をもつ科目では集中できた。
そして、高校でトップを争うくらいの成績を上げていた。
まるまる2日間、八広は王立図書館の閲覧室に閉じこもった。
彼が、よろよろしながら王立図書館から出てきた。
すると、それを待っていたザラの部下がザラに急いで報告に行った。
「八広様。長い間、本を読まれていたのですね」
八広にザラが話しかけてきた。
「はい。でも大きな収穫がありました。どうやって、南方の国々を服属させるのか計画を立てることができました」
2か月後、八広は数万の帝国軍を率いて南方の国に遠征に来ていた。
八広が総司令官で、副官はザラだった。
「ザラさん。南方の国々の軍の数は多いのですが、武器は粗末な剣ばかりです。ただ、命を少しも惜しまず粘り強く戦う戦士達は脅威です。その心に決定的な不安を生じさせます」
「八広様。それをどうやってなさるのですか」
「このように自然が豊かな環境で育つと、自然を恐れる心は強くなるものです。まず、足の早い騎馬数百騎を引き連れ、僕が前に出ます」
その後、八広は出切る限り派手な格好をして南方の国の軍団の前に出た。
数百騎しか出ていないことを確認して、相手方は総攻撃・突撃をかけてきた。
八広は聖剣を抜き天にかざした。
そして詠唱した。
「我が雷光よ輝け、光れ、大気を大波のように振るわせろ」
詠唱が済んだ後、昼間というのに周囲が夜のように暗くなった。
太陽を厚い雨雲が隠した。
そして、暗闇の中を幾筋もの雷光が走った。
光りに遅れて、この世の中が壊れるような大音量が鳴り響いた。
南方の国の軍前は、突撃途中だったが、それは急にぴたっと止まった。
彼らにとって、天の神々が自分達に対し最高に怒っているかのように聞こえた。
自然をうやまって生きる彼らにとって、それは最大の恐怖だった。
しばらくして、八広が率いる騎馬軍団は後ろに下がった。
それとともに、雲は消えて雷は消滅した。
すると、安心した南方の国の軍団はまた突撃をかけてきた。
それに対応するかのように、八広の騎馬が彼らの前に出ると、再度周囲は暗くなり雷光がきらめいた。
そのようなことが10回続いた。
そしてとうとう、南方の国々は八広の元に降伏の使者をよこした。
使者は、いわゆるシャーマン(呪術師)のようだった。
八広は直接対面した。
「あなたが、雷光を起したシャーマンか。お前はどこの国の人間か」
「僕は、ここからはるか離れた島にある国のさらに2千年以上後の国から来た者だ」
「悪いことはいわない。帝国にすぐさま降伏しなさい。その後の平和は僕が補償します」
「そうか、お前のような強いシャーマンが言うのなら、そのとおりにしよう―― 」
お読みいただき心から感謝致します。
※更新頻度
週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。
作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。
一生懸命、書き続けます。




