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王女との婚約3

第4作目の投稿です。

是非是非、お楽しみください。

 今や大陸をほとんど支配している大帝国の東の端にその港はあった。


 1隻の巨大な船が出航準備が完了して、出港を待っていた。


 とても巨大な船だったが、この時代に多い帆船ではなかった。


 船体の両側には大きなオールが出ていて、人力でそれを動かすガレー船だった。


 漕ぎ手は悲惨な奴隷である場合が普通だが、その船は違った。


 彼らは奴隷ではなく、身分の高い上級戦士だった。


 甲板に背の高い超美人が立った。そして大きな声で号令した。


「さあ、みんな、私のために何をしてくれるの??? 」


 号令が終わると同時に、野太い大勢の男の声が呼応した。


「ザラさまのため~ この船を世界最速で進めます」


 そう言った多くの漕ぎ手達は筋骨隆々だった。


 その後、全く無風の中、その船は港を離れた。




 入江八広(いりえやひろ)は、邪馬台国の女王登与(とよ)に厳しく攻められていた。


「八広様。まさかとは、まさかとは思いますが。石の国のザラとかいう王女がお好みなのですか」


「いえいえ 今、じっと見ていたのは、背が高い女性だなと思っていただけですよ。それと、僕よりも背が高いのかなと――細かいことを考えていただけです。決して、ぼおっと見とれていたのではありません」


「背丈のことをお考えになっていたなんて、結婚してからのことを考えられていたのですね。だって、いつも、すぐそばにいる女性になるのなら、とても重要なことですからね」


「いえいえ なぜにそこにつながる? そこまでつなげて考えてはいません」


「ところで、そのお返事は、いつまでにしなければならないのですか? 」


「特に指定されていませんが。内容が内容なだけに、できるだけ早くする必要があると思います」


「登与さん。女王としてどのようにお考えですか。石の国と戦争をする余裕はありますか」


 八広にそう聞かれた登与は、非常に苦しそうな顔をした。


「正直言って、戦争は何も生み出しません。それに、人々の生活にとってはマイナス効果です。家族で一番の働き手を戦争にとられるのですから‥‥ 」


「そうですね。働き手が戦死してしまうこともあります。それでは、私が婚約しましょう」


「えっ!!! 八広様。邪馬台国のために御自身が犠牲になる必要はありませんよ」


「いえいえ、決して犠牲になる気持ちはありません。僕は別の異世界から転移した者です。転移した理由は、勇者としてこの国の方々をお助けすることだと思います」


「ですから―― 王女様と婚約することで全てが平和にうまくいくのであれば、喜んで婚約します」


「八広様、風香様によく似た美女だからしめたものだと思われていませんか? 」


「いえいえ、ザラ王女が美女であることはもちろん事実なのですが、今回の決断には全く関係ありません」


「ほんとうですか??? 」


「ほんとうです」


 登与の美しいブラウンの瞳に見つめられて、八広はどぎまぎしてしまった。


「実はザラ王女は大きな船で、この入り江から出た外界の近い場所に停泊しているのです」


「そんなにそばにいるのですか」


「はい、ですから石の国の使者も小舟を使って、この入り江に入って来ました。今度はこちらから小舟を差し向けましょう」


「八広様。今度の婚約はあくまで政治的なものですから、いやになったら、すぐに御自身の異世界に逃げてくださいね」


「あの、一応相手もあることですので、そうなったらよく考えます」




 ザラは、邪馬台国の入り江の外にある外界に、彼女の艦隊の多くの船を停泊させていた。


 彼女が乗った旗艦は、最も大きなガレー船だった。


 ある日、そのガレー船に邪馬台国からの使者が小舟でやってきた。


 直ちに艦隊司令官のザラに報告された。


「司令官様、邪馬台国から返事が届けられました」


「そうですか、見せなさい」


 ザラは登与からの返書の内容を読んで確認した。


「そうですか。鬼道を使う剣士、入江八広(いりえやひろ)が私と婚約するのですか。使者は今どこにいますか? 」


「はい。この旗艦の中でしばし待たせています」


「私が直々に会って、今後のことを話します」




 石の国の艦隊司令官に、登与の返書を渡した使者が帰ってきた。


「登与様。使者が帰りました」


 登与は使者に会った。


「登与様。私はザラ王女様に直接お目にかかりました。王女様がおっしゃるには、八広様との婚約について了承するかどうかは、1回、八広様と戦ってから決めるとのことです」


「えっ!!! 」


「10日後にザラ王女の乗る船がこの入り江の中に入り、王女がそこから上陸すると言っていました。実質的に、後9日間しかありませんが」


「戦うとは真剣で戦うということですか」


「はい。王女様はそのように申されていました。私に殺されるような男は、もともと私と婚約する価値がなかったのだとも申されていました」


 登与はそばにいた八広に聞いた。


「八広様 どうしましょうか」


「強きの王女様ですね。いいです。戦います」


「相手が美人だからといって、絶対に油断してはだめですよ」


「大丈夫です。美人だといっても、登与さんにはおよびませんから―― 」


「八広様。お口がお上手ですね」




 八広とザラが戦う日がきた。


 ザラの乗る艦隊旗艦は非常に大きな船だということがわかっていた。


 そのため、入り江の中で動ける航路が限定されているので、入り江の中の停泊地も予想された。


 ザラが海岸に上陸する場所もわかったので、八広も予想地点で待った。


 やがて、入り江の入口にザラが乗る巨大なガレー船が現われた。


 そして、予想の航路をとり、予想の地点に停泊した。


 やがて驚くべきことが起きた。


 以前、兄であるアテルイがたびたび行ったように、ザラも海の上に立ち歩き始めた。


 八広は海岸のそばに立ってそれを出迎えた。


 波打ち際で2人は対面した。


「あなたが八広ですか」


「そうです。ザラ王女様、僕と剣を交えるのがお望みなんですね」


「そうです。お望みです、たいそうお望みです。お兄様と互角に戦う男はどれくらい強いのでしょうか」


 ザラ王女は、その後狂ったかのように男顔負けの大剣を八広に向かって何回も連打した。


 連打は大変早く、そして一撃一撃が大変強力だった。


 しかし、八広の心は極めて冷静だった。そして少しも恐れなかった。


 ザラの剣の軌跡を見極め、そして予想して、体術だけで軽々と交わしていた。


 ザラは自分が全力で続けた攻撃を見事にはずされて、体力を最大限に消耗した。


 そして八広に向かって言った。


「さすがに強いのですね。でも、さきほどから少しも攻撃しませんね。私に攻撃できなければ、婚約はしませんよ!!! 」


 ザラの挑発に八広は乗り、光りのような一瞬の素早さでザラに向かって剣を振った。

お読みいただき心から感謝致します。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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