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王女との婚約

第4作目の投稿です。

是非是非、お楽しみください。

 大通りに出ると、入江八広(いりえやひろ)はおんぶしていた登与(とよ)を下ろした。


 そしてその後は、コーラ酔いで体調を悪くした登与(とよ)入江八広(いりえやひろ)北川風香きたがわふうかが両側で支えるような態勢で移動した。


 途中で、空きタクシーがとまっていた。


「八広。あのタクシーであなたの神社の山のふもとまで行くわよ」


「ええ、だけど僕は自転車を置いていますから、自転車で追っかけます」


「そうしよ」




 北川風香がタクシーで、コーラ酔いした登与とよをなんとか運んだ。


 海見神社の山のふもとで2人は待っており、ほどなく入江八広いりえやひろが着いた。


 ○○を吐いたことで、登与のコーラ酔いはなんとか直っていた。


 自転車が、ほどなく着いたことを見ると風香が言った。


「早い、早い、さすがね。私達がタクシーで着いてからほんの5分も経っていないわよ」


「あの、風香さん‥‥‥‥ 」


「気にしないで。今日はたまたまお金を多く持っていたから、また何かで埋め合わせをお願いするから」


 タクシー代について案外あっさりと言われて、八広はかえって気にしてしまった。


「それから八広、今日私、あなたの所の神社に泊るから」


「えっ! 家の神社に泊るのですか」


「当たり前じゃない。現代と古代が産んだ絶世の美少女2人よ。ちゃんと保護しなさい」


「わかりました。本殿に寝具があるから、そこで泊ってください」


 その後、八広と風香は登与を真ん中にして支えながら、海見神社の階段を登った。


「そうそう、333段目に注意しないといけないのね。何か目印はあるの」


「たぶん、僕と登与さんが近づくと明るく光るから分りますよ」


 もう日が落ちて、周囲は暗くなっていた。


 頂上まで登ると、神社の(やしろ)の正面階段の所に風香と登与は腰かけて。


「今、準備してきます。しばし、お待ちを」


 八広は板張りの広い本殿の中に来客用のふとんをしいた。


 がさがさしている物音を聞いて、父の総記が様子を見にきた。


「八広、来客用のふとんなんか持ち出して、何やってるんだ」


「うん。ちょっとね、今晩、この本殿に2人のお客さんを泊めていいかな」


「泊めるって誰を」


「知り合いの女の子2人さ」


「女の子か―――― しかも2人も―――― よし、父として御挨拶に参ろう」


 実は、八広の母親は数年前に蒸発してしまい、どこに行ったのかわからないのであった。


 それ以来、男1人で八広を育ててきた父親の総記は、八広に2人も女の子の知り合いがいたことが、とてもうれしかった。


「その女の子達は、今どこにいるんだ」


「本殿に入る階段の所だよ」


 それを聞いて、総記は本殿を出て階段を見下ろした。


 すると――――


 歴史がある海見神社の宮司の家系に生まれた総記にはわかった。


 2人のうちの1人の女の子から、神秘の霊気が出ていた。


 しかも、それは高潔で、この海見神社のご神体が持つものとほとんど同じだった。


「あの子はいったい誰だ? 何か初めて出会ったような気がしないな」


 総記は密かに深くそう考えていたが、チェックしていなかった女の子に気づかれた。


「あ――――っ お父様、私です。おぼえていますか? 」


 自分をお父様と呼んだ女の子は、かなりの美少女で明るい性格であることがすぐにわかった。


「ど、どなた、でございましょうか。前にお会いしたことがあるのですか‥‥‥‥ 」


 ものすごい美少女から、いきなり、お父様と呼ばれて総記はかなり面食らった。


「お忘れですか。5年前の夏休みに家族と1回お邪魔して、この本殿に一泊させていただきました」


 そう言われて、彼もその時の様子を想い出した。


(そういえば、日本の古代史を研究している大学教授、北川サンとか言ったな。家族旅行もかねていらっしゃったことがあったな。しかし、その時の小学生のお子さんは‥‥‥‥ )


「あっ!!! 『5年目には男の子だったのに』と今、思いましたね。いいですよ、小学生の時の私はかなり日に焼けていて、よく、誰にでも男の子と間違えられました。ところで‥‥‥‥ 」


「はいはい、おっしゃりたいことは良くわかりますよ。5年前にお目にかかったであろう、私の妻、八広の母親、もう少し詳しく言うと超美人は実は蒸発してしまい、今は所在不明なんです」


 その言葉を聞いて、今度は、登与(とよ)が振り向いて言った。


「八広様には、そんなに悲しい御事情があったのですね。でも立派な方です、大きな悲しみを背負っていられることをおくびにも出しません」


(え――――っ お父さんびっくり!!! この娘も超超美少女じゃないか!!! )


「あの―――― 髪の長いお嬢さん(登与)、妻が蒸発したのは私と仲が大変悪くて離婚したとかいう、家庭不和とかの問題ではありません。実はほんとうに仲の良い夫婦だったのですよ」


 総記は心の底で密かに思っていた。


(そうそう、1人は髪の長い純和風の美少女、もう1人は髪の短い現代風で再先端の美少女だな)


「八広様のお父様。奥様が今どこにいらっしゃるのか、ほんとうに心配なさっていると思います。私、霊感が強くて人探しもうまくできるのですよ。どうですか」


「はい。お嬢さんのお申し出はほんとうにうれしいです。でも私の妻がいなくなったのにかかわらず、私の気持ちは少しも落ち込んでいません。必ず、彼女は帰ってきます。お気持ちだけいただきます」




 その日の夕食は、父の総記が腕を振るって御馳走を振る舞った。


 八広は本殿を出て自分の家の中の自分の部屋に戻ると、その日の疲れが急激に出て、すぐ眠った。


 今日、父親が言った言葉で、彼は少し気になっていることがあった。


(おとうさんはお母さんがいなくなったのに、ほんとうに少しも落ち込んでいないのかな? )




 次の日、八広は朝早く起きて、神社の敷地の掃除を始めていた。


 すると階段の降り口に、登与がもう起きて立っていた。


「登与さん。おはようございます。板張りの本殿だったから、あまりよく眠れませんでしたか」


「いえいえ。ほんとうによく眠れましたよ。だって昔昔、私はあの場所で毎日寝ていましたから」


「そこから見る景色はどうですか」


「『昔と全く変わっていないな』と思いました。でも、さっき、ある恐るべきことに気がつきました」


「それは??? 」


 登与は入り江と外海がつながっている場所を指さした。


 八広には特に異常がわからなかったが、登与が言った。


「災厄の海流が、この入り江に流れ込んでいます‥‥‥‥過去に何があったか理解しました」

お読みいただき心から感謝致します。


※更新頻度

週1回、日曜日午前中です。不定期に午後や土曜日に更新させていただきます。

作者のはげみとさせていただきますので、もしよろしければ、ブックマークをお願い致します。

一生懸命、書き続けます。





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