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バイオリンの独習

作者: NCO

バイオリンの独習


I.は じ め に


 私は特に音楽に詳しい訳では無く、楽器は小さい頃にピアノを

少し習った程度で、バイオリンを含む弦楽器全般には全く触った

ことはありませんでした。


 これからお話しするのは、全くの素人でバイオリンの経験も知識

もない私がバイオリンを独習した経緯と方法についてです。

 読んでいただきたい方は、バイオリンになんとなく興味があるが

始める方法も弾き方も分からないから実際に手を出すにはハードル

が高いと思っている方です。


 特にお伝えしたいのは、バイオリンの自作と独習の方法です。

 1.バイオリンは半完成品キットを購入すれば自作できた。

 2.バイオリンはネットや図書館の本で弾き方を独習できた。

 3.クラシックだけで無く好きなジャンルの音楽を弾ける。


 バイオリンの自作と独習で未知だった音楽の世界の1つを気楽に

楽しんでいます。


Ⅱ.経 緯


 小学校の中頃までピアノを少し習っていました。自分で望んでと

言うより、親から言われてやらされていた感覚です。

 子供のバイエルの赤バイエル、黄バイエル+ハノンとピアノ学習

は進み、最後にピアノを止める前の到達点はシューマン作曲の

「楽しき農夫」でした。昔のピアノ教室の学習の進め方です。

 ピアノを弾くのが楽しいと言うより、練習が嫌で上手く弾けない

自分にイライラしていた記憶があります。

 小学校四年生の時に引っ越しをしたので、その機会に通っていた

ピアノ教室を辞めて、引っ越し先で新しい教室を探すことはせず、

そのままピアノを習うのは止めてしまいました。


 バイオリンについては、周りで習っている人も弾いている人も

いませんでした。バイオリンは自分とは遠い存在でした。

 しかし、なんと無くあの咽び泣くような心を震わせる音と、

バイオリンを弾く時の独特の動作には憧れていたようです。

 何の曲かは忘れましたが音楽の授業で、バイオリンの曲を聞いた

時に目を瞑ってエアーでバイオリンを弾く動作をしてしまい、

曲が終わり目を開けた時、友達にクスクス笑われて赤面しました。


 1995年公開のスタジオジブリの「耳をすませば」を見た時、

登場人物の天沢聖司と言う少年がバイオリン職人を目指していて、

バイオリンを制作している情景が心に残りました。

 ああ、バイオリンは作れる物なんだなぁと思いました。


Ⅲ.バ イ オ リ ン の 自 作


 そして4年前の自分の誕生日に、家族からプレゼントとして何か

欲しい物があるか聞かれました。何故かは自分も分かりませんが、

不意にバイオリンが思い浮かびました。ネットで調べたところ、

安いものは1万円程度で買えそうでした。

 また通常のバイオリンでは無く、エレクトリックバイオリンも

4万円程度であり、音が小さくて周りに迷惑をかけないものもある

と知りました。これも魅力的でした。少し高いですが。

 せっかくなら良いものが欲しい、でもバイオリンは全く触れた

ことが無いので、結局弾けなくて箪笥の肥やしになる可能性があり

高いものを買うのは勿体無いと考え、悩みました。


 ふと、バイオリンって自分で作れないのかと言う考えが頭に

浮かびました。そしてバイオリンの設計図がネットにないか探し

ました。すると、設計図では無くバイオリンの半完成品のキットが

売っていることが判りました。しかも手頃な1万4千円です。


 私は大人になってから趣味で木工細工を始めました。と言っても

鳥のデコイの様な物や、キノコの形の置物、木で出来た剣など、

手作業でカッター、彫刻刀、紙鑢があれば出来る程度の物です。

 バイオリンを自分で作るのなら、もし結局弾けなかったとしても

作ったバイオリンは作品として最悪飾ることだけは出来ます。


 結局、誕生日プレゼントはバイオリンの半完成品のキットに

決めました。楽天のショップにネットで注文してから1週間ほど

で品物が届きました。

 届いたのはV-KIT-1 HOSCOバイオリンキットです。

箱を開けると、白木のバイオリンの20個程に分かれた半分完成

した部材、組み立て説明書、弦、弓、バイオリンケースなどが

入っていました。さすが日本のメーカーで、海外製品にありがちな

不足部材はありませんでした。


 早速、日中の仕事が終わった後と土日の時間にバイオリンの制作

をどんどん進めていきました。組み立て説明書は詳細で解り易くて

助かりました。全てが目新しい作業なのでワクワクドキドキして、

非常に楽しい時間でした。ゆっくりと丁寧に作業を進めて9日程で

完成しました。ニスは塗らなかったので木の色のままのバイオリン

です。制作目安日数は2~3週間と言うことですので比較的早く

出来ました。


 途中、ネックとボディの接合で、木工用ボンドが完全に乾く前に

早く音が聴きたいと気が逸って弦を張ってみたところネックが弦の

引っ張る力に負けて取れてしまいました。もう一度ネックを付け

直して弦を張るのは全体が完成するまでお預けにしました。

 補強のため、裏板とネックを金属の木ネジ2本で止めました。


 最後の方の工程に、サウンドポスト、日本語名は魂柱という

5cm程の細い棒をポストセッターという専用の金属の器具で、

バイオリンの真ん中程に空いている2つの細長い穴、fホールから

そーっと差し込んで接着剤を使わずに立てて、表板と裏板の間で

突っ張らせます。何度も棒の長さを微調整して削って短くしていく

必要があるので一番大変でした。

 ポストセッターの尖っている先をサウンドポストに刺すのですが

そのままでは肉厚で刺さり難く抜けやすかったので薄く鋭く砥石で

尖らせて解決しました。

 何回も調整しているうちに、サウンドポストが手元から転がって

何処かに行って見つからなくなってしまいました。

 泣く泣く他の木を削って自作しました。後でベットの下から

出てきました。


 最後に弦を張ります。説明書には顎当てに近い方からG、D、

A、Eの順に張るとだけ書いてあって、キットに同梱されていた、

黒、青、空色、赤の根本に色のついた糸が巻いてある太さの違う

弦がどの音に該当するのか最初は分かりませんでした。

 ネットで調べて一番太い黒の糸の弦がG、一番細いのが赤色のE

だと判りました。


 完成したバイオリンに早速、弦を張って弓で擦りましたが、微か

なスースーした音がするだけでした。何か間違えて失敗作になって

しまったかと焦りました。実は弓の馬毛に松脂を塗っていません

でした。組み立て説明書には松脂では無くロジンと書いてあり、

何のことか判らなかったのです。

 松脂が弓の馬毛に塗って無いと弦との摩擦が足りず弦が上手く

振動出来ず大きな音が出ません。指で弦を弾くと大きな音が

ちゃんと響くのに何故だろうと2日ほど悩みました。


 ネットで「バイオリン 鳴らない」のキーワードで検索し、弓の

馬毛に松脂を塗る必要があると判りました。それで早速、馬毛に

たっぷり松脂を塗るとバイオリンの音が出ました。

 初めてバイオリンからビーという音を聞いた時、苦労して作った

ので感激しました。


Ⅳ.バ イ オ リ ン の 独 習


 バイオリンが出来たら、次はそれを弾く番です。最初は音が出る

だけで感激していましたが、やはり曲を弾きたくなります。


 バイオリンを教えてくれるカルチャーセンターなどの音楽教室に

通って、先生から習うのが一般的で確実だと思います。

 私も最初はそうしようかと思いましたが、バイオリンを自作した

ことだし、自分でどこまでやれるのかやってみようと思いました。


 まず図書館に行ってバイオリンの弾き方の本を借りてきました。

弦の指の押さえ方、押さえる位置、バイオリン本体や弓の持ち方は

本から学びました。

 また、YouTubeに動画で初心者向けのバイオリンの弾き方

が色々アップされていたので、参考にしました。


 チューニングですが、最初の1年間はチューナー無しでピアノの

音と聴き比べて合わせていました。とても不便でしたので、次の

誕生日プレゼントでKORGのCA-50というチューナーを

貰いました。使いやすいです。


 最初は、さくらさくらなど簡単な曲から初めて、好きな曲を

好きなように自由に弾いています。子供の頃のピアノの練習の様に

注意されたり怒られたりすることがないのでストレスが無いです。


 1週間に3回ほど10分間ずつ弾いている感じです。弾き始めて

から4年経ちますが自己流であまり上達はしていません。TVで

プロの方のバイオリンの演奏を見ると、これ同じ楽器なの?と

思います。左手のポジション移動は出来ず、小指は使えません。

 ビブラートはやってみましたが左腕が疲れるだけでした。


 私のお気に入りの曲のレパートリーは、ムーンリバー、エーデル

ワイス、As Time Goes By、赤い河の谷間、白い色

は恋人の色、ラストワルツ、イエスタデイ・ワンス・モア、トップ

・オブ・ザ・ワールド、明日にかける橋、自作曲のハリギリです。


 長時間弾いていると、腕や指が疲れますし家族に迷惑ですので、

程々に楽しんでいます。


Ⅴ.お わ り に


 いつかストリートで演奏してみたいなと思っています。他の人に

聞かせられる様な腕前になることはいくら練習してもなさそうです

が、懐かしい曲、素敵な曲を弾いて聞いてももらえたらいいなと

思います。ハードルは高くてなかなか実行する決心はつかないで

しょうけれど。

 もし街で白木のままの手作り感満載のバイオリンを恥ずかしげに

弾いている人を見かけたら、それは私かもしれません。


 私の経験がバイオリンを独習して見たいと思っている方の参考に

なれば幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 自分も幼少期に習い事のピアノが嫌で、引越しを機にやめたものの、自分で音楽を好んで聴くようになってからえらく後悔しました。 続けてたら、あの曲もこの曲も弾けたかもしれないのに──! その後…
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