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たった一つの想い  作者: 桜鳥
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第4話


木下さんが正しい行動ではないとどうして言ったのかというと、まず記憶喪失になった人間は病院に連れて行くなり第三者の意見を聞きに行くが正しいかもしれないと考えていたらしい。


確かにその解答が一般的には正解だろう。


しかし、私の家庭環境の背景を知っているからこそ

あまり私の親にこの事を知られないようにしようと考えていたみたいだった。そして改めて木下さんは私に頭を下げたので慌てて

静止した。


何も謝ることはないと彼女に告げたが

それでも申し訳ないとい表情を脱ぎ去ることはできなかった。


でも、その行動には実際とてつもなく感謝している。

もしこのことがあの2人に知られればまた関わらないといけなくなる…それは、何としてでも裂けたい。


「あの、そんな顔しないでください。記憶喪失になったけれど

きっと病院に行かずとも何か治す方法はあるかもしれないし

混乱していますが何とかなるかもしれないって思いますし…

私にとってあの2人の耳に入ることこそが悪影響なんでこの方法が正解なんです」


余り落ち込んでいる人を慰めた経験がないせいか狼狽えつつも

なんとか励まそうとしたけれどうまくいったのか不安で視線を床に落としている木下さんの表情を見る為に覗き込んだ。


そしたら、彼女はほんの僅かに先刻前に頻繁に見せてくれた朗らかな表情を取り戻しつつあった。


「ごめんね、私より春の方がきっと不安なことがたくさんあるのに私が逆に

取り乱してしまって…。でも、なんでも言ってね力になれることはなんでも

するから」


両手を包み込むように握りしめられたその暖かさは彼女の人柄を十分に感じることができた。

それだけで私は十分だった。


「でも、実際これからどうして行きたいの?

二年間の記憶を失ったまま生活するなんて難しいだろうし…何か聞きたいことはある?」


確かにその通りだ。今後の予定が見込みのないままあてもなく毎日を過ごすのは確かに無謀と言っても過言ではない。


視線を上に巡らし壁に飾ってる時計を見つめる。

秒針を目で覆いながら

現時点での疑問を整理して行く。


全てが謎だらけで

どうしてこんな状況に置かれているのだろうと思うけれど…



「あの、根本的なことなのですが…私って今は一人暮らしですよね」


木下さんは盲点と言うふうに目をパチパチと繰り返し閉じていた。

そして、鞄の中から手帳を取り出して

そこに何やら住所を書き始めその紙をちぎって渡してくれた。


「そうだった、ココが貴方の住んでいる家の住所。今は勿論一人暮らしだよ。

帰り心配だから送って行くけれど一人でいても平気?」


その紙を受け取った時私は内心ほっとした。

とにかく色々目まぐるしく環境が変わりとにかく疲れていたからだった。


とにかく1人になって色々と整理したい

その想いが私の脳内を支配してゆく、


「1人で平気です。

木下さん今日は本当に有難うございました」


木下さんにお礼を伝えると私は鞄を持って立ち上がった。


「本当に?無理してない?」


まだ1人にしておくのは本当に心配と顔に描いてある木下さんを安心させるように口角を少し大袈裟なほどに持ち上げた。


「大丈夫です!!1人で家に帰って少し整理をしてみるだけです。

また不安なことやわからない事があれば、連絡をしますから安心してください」


そういうと私は踵を返して

玄関の方に歩きじめた。


また明日ねという言葉を背中越しに受け取ってからドアノブを捻った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


紙に書かれた住所は

駅からはそれほど遠い訳でもなく

交通機関と徒歩で十分に辿り着く距離だった。


私にとっては初めて対面する自宅は外壁が淡いクリーム色の少し高そうな

マンションだった。


「ここが私の家…なんかとても高そうな」


推定家賃を想像してみたが恐らく学生のアルバイトの収入では賄いきれない

額ではないかと少し身震いをした。

とにかく、考えるのは部屋には行ってからと気を取り直して

自宅に入った。


部屋に入った瞬間すぐにここは自分が住んでいた部屋なのだと改めて確信を持てた。なぜならば、すごく懐かしい匂いがしたからだ。


昔から好きだった緑の色で統一した部屋は

まさに幼い時に描いていた自室そのものでこの二年間の過程のうちに自分自身がいかに努力して手に入れたのか

そして、誰にも何にも邪魔されない生活を手に入れることができた達成感が込み上げてきて涙が溢れそうになった。


だが、今は泣いている暇は私にはない為

なんとか歯を食いしばった。

その瞬間、私は若干苦笑した。

1人の空間を手に入れたと言うのにまだ我慢する癖は治っていなかったらだ。


「まだまだ時間はかかるということか」


部屋の左奥に勉強机のようなものがあり

その机の上には、一冊の手帳があった。


それを手に取り一年の始りの一月から順に捲っていく。

学校行事からアルバイトの時間までがこと細く記入されていて

どうやら自分は、あまり学生の本業とも言える遊びや勉強には時間を割いてはこなったらしい。


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