第2話
本日より、第2話です!!
今後、毎週金曜日朝9時に投稿したいと思います。
尚、元の投稿してる作品の内容を今後も若干修正、変更等して更新していきます!
宜しくお願いします。
「ごめん待たせたね。私今からそっちに迎えに行くからとりあえず携帯で周りの風景写真で撮ってくれるかな?もしかしたら分かるかもしれないし!」
「わかりました、ありがとうございます」
そう言うと一旦通話を終了させて
何か目印になるものがないかウロウロと辺りを見渡した。
(どうして私はここにいたのだろう)
静かな住宅地なのか特に目立った特徴が見当たらなくて若干途方に暮れてしまう。
そんな時にどこからか鐘の音が聴こえてきた。
(あれ?この音は…)
音の鳴る方へ春は歩き出した。
淡いピンクの屋根の家の角を曲がると
そこにはひっそりとした小さな教会があった。
ここの写真を撮ろうと思いカメラを教会に向け写真を撮り、先程電話した『木下さん』に送信した。
そして、再び教会を見上げた。
(知らないはずなのに…どうして懐かしさを感じるんだろう。この2年間で来たことがあるのかな。…もしそうだったら、一体どんな用事で訪れたのだろうか…)
そんなことを考えていると、後ろから私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「ごめん、遅くなって」
木下さんが走ってこちらにやってきた。
想像していたよりも随分大人びていて
世間一般では綺麗な女性という分類に間違いなく入るだろう。癖毛のない直毛の髪は太陽の光によって艶が増していて、化粧はしているが控えめだが凄く華があり
電話越しで想像していた活発的な女性とは真逆過ぎて
驚きが隠せない。
「い、いえ、こちらこそ突然すみません。」
木下さんは、私をしばらく見つめた後にポンと両手を叩いて何かを
閃いた様子でこちらを見つめていた。
「まずは、どこまで覚えているか整理した方がいいよね!
私の名前も覚えていない感じもするし改めて自己紹介をするね
木下 美希です。
でも、こんな道端で話すのもおかしなことだしどこか落ち着いた場所で話そう」
そう言って木下さんが私の腕を掴んで歩き出そうとした時に
ふとあることが脳内を過ぎって彼女の裾を掴んで引き留めた。
「あの、でも授業はいいのですか?戻った方がいいのじゃないかと…」
先程の話では、木下さんも私も『授業』というものには出席しないといけない気がする。
「うーん。確かに出席した方がいいと思うんだけど、今の状態で出席してもきっと授業内容はわからないのじゃないかと思うんだよね。勿論このまま大学に戻るのもいいけど、どうしたい?春のしたいように私はするからさ」
「確かに今の状態で出席しても授業にはついていけないとは思うんですが
私のせいで木下さんが欠席扱いになるのは、もっと嫌なので大学に戻りませんか?」
そういうと、木下さんの顔は満面な笑みで私を抱きしめた。
「春のそう言う所、ほんと昔から好きだーー。記憶喪失になっても
根本的なところは変わっていないっていうことだよね。
春の言う通りに大学に戻って、授業を受けよう。その後私の知っていることはなんでも話すからさ」
木下さんは何度か頷いた後に私の手を握って大学の方に歩き出した。
その姿が先程の大人びた印象から
うって変わり無邪気な子どものように思えてきて、微笑みを浮かべた。
「ここが大学…凄い」
初めての大学という場所はとても輝いて見えた
当たり前だが、高校の校舎の何倍もの敷地の広さに
閉塞的な世界からようやく1歩を踏み出した気分だった。
傍から見たら変なことをつぶやいているように見えるだろう。
そう思っていても、空いた口は全然塞がらなかった。
そんな姿に木下さんは少し苦笑いしながら
「春にとっては、この大学も初めてみるもんだよね。まぁ、ここの大学は
結構広いと有名なんだよ。初めて見るのならこの広さに驚くのは無理ないかもしれないね」
木下さんは、そういうとカバンの中から携帯を取り出し
何かを調べるとこっちと近くの建物の前に指をさしながら移動していた。
「今から受ける授業は、話聞いてるだけで後はレポート出していれば
単位くれるから結構楽なんだよね」
「大学ってそう言う所なんですか?」
意外な答えに思わず立ち止まってしまった。
「全てがそうじゃないけど…、そういう授業もあるのはあるよ」
「そうなんですね…なんか想像していたのと違って少し驚きます」
そういうと木下さんは、またくすくすと笑った。
「春と初めて出会った時も同じこと言っていたよ、やっぱり真面目だな〜」
そう言いながら大きな教室の前で彼女は立ち止まって
しばらくの間笑い転げていた。
その様子を見ながらそんなに笑わなくてもいいんじゃないのかと、内心私はむすっとしていた。
初めての大学の講義というのは新鮮だっともだが、とにかく授業の時間が長いという一言に尽きるものだった。
前回の復習のところからのおさらいも兼ねての授業なので
前回の知識がない状態の私にとっては全ての言葉が呪文のようにしか聴こない。
私のせいで木下さんが欠席扱いになるのは避けなければという使命で
なんとか恐ろしく長い授業を終えた時は
灰になりそうだった。
「お疲れ〜、この授業とにかく先生の話が長いって有名だから
初見で耐えられるのはなかなか凄いことだよ!
やっぱり、春は地頭がいいということだったんだな」
と、木下さんはやけに関心した様子でノートパソコンを持ちながら何度も頷いていた。
「さて、無事に初講義を乗り越えた訳なので《《ご褒美》》をしないとね」
「ご褒美?」
その意図を聞き返したがその返答には敢えて答えないのかは定かではないが
木下さんは私の手を掴んで教室を抜けてどこかに歩き始めて行った。