焼いて妬いて
家の状況を考えながら、私…帰りたくない……とか思ってたらいつの間にか買い物が終わってた。僕は馬鹿なんじゃないかな。
「で、結局何作るの?」
「……肉」
肉?それはつまりあれかい?牛や豚を一から育てて肉を作るのかな。
「を焼く」
を焼く……肉…肉を焼くのか!なるほどね!
「焼くだけじゃん…」
「バカねぇ。付け合わせも作るわよ」
付け合わせっつーと、ミックスベジタブルとかポテトとかかね。
「里芋」
渋い!
・・・・・・・・・・・
「じゃあ、そろそろワインを入れてアレやろう!あの火がボッと出るやつ!」
「……フランベ?」
フランベだかなんだか知らんけど、多分それ。
「圭、あれって何のためにやるのか知ってるの?」
知りませんよ。名前だって今知ったんだし。フランソワーズ。
「知らん!けど、何となく良さげだから」
「素人が出来るのかなぁ…」
おいおい、葵さんや。あんなのワイン入れりゃそれでいいんだよ。
多分。
「普通に焼けばそれでいいじゃない」
何を弱気な!
「えぇい!俺はやるぞ!」
「……出来た」
…あぁ……。
「ほら、美味しそうじゃない!」
本当だ……。なら、まぁいいか!
「よし、食べよう!」
「はい、持ってって」
はーい。
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「で、それから…」
「もういいです」
怖いよ、楓。皐月の家で飯食って帰ってきたら当たり前のように楓がいるし、今日何してたか聞かれたから話してたら突然打ち切られるし。
「じゃ…じゃあ、風呂入ってくるね」
「圭さん」
ビクッ!
「お、おぉ…何だい?」
「何か言う事ありませんか?」
えっと……あ!
「ただいま!」
いや、一人暮らしの俺がただいまって言うのもおかしいけど、挨拶は大事だしな。
「はい、おかえりなさい」
「じゃあ、ふ」
「圭さん」
「うん?」
今度は何かな…。
「どういう事か説明して下さい」
どういう事とはどういう事かな?…ややこしいな。
「いや、今話した通りだけど」
「では、認めるんですね?」
さっきから「え、何?どゆこと?」って顔してんだからさっさと言えよ!
「浮気……したんですね…」
……こいつおかしいぞ!何がおかしいって、もう何もかもがだよ!
「言ってる意味がわからないんだけど…」
「だって!私という物がありながら!……どうして」
気のせいかな。者の部分が違う意味に聞こえたんだけど。
まぁ、とにかく!
「めんどくせぇ…」
あ、言っちゃった!心の声が思わず出てしまった。
楓は……目を見開いて、口に手を当てて
「まぁ…!」
ときたよ。
いやいや、驚きたいのは俺だよ。
「酷い……酷いです。圭さんのバカ!仮性!」
おぉい!なぜ知ってる!?
……落ち着け、圭。仮性は恥ずかしいことじゃないぞ。やる時はこんにちはさせれば問題ないし、子供だって出来る。そうだ、何も恥ずかしいことじゃないんだ!
温泉とかに行って見栄○きしたっていいじゃないか。いいじゃないかーーー!
「圭さん……私、実家に帰らせてもらいます!」
「ちょ…え!?」
って、何で焦ってるんだよ!別に楓が実家に帰ったって俺には関係ないじゃないか!
そうだよ、うん。実家に帰りたいんなら帰ればいいじゃないか。ようやく一人になれるんだし、むしろそうしてくれた方が…。
「どうして止めてくれないんですか!」
まだいたのかよ!
「いや、帰りたいんならどうぞ」
行かせる理由はあっても、止める理由はないからな。
「冷たい……でもそんな所も素敵…」
えぇ~……。
「わかりました。圭さんがそこまで言うなら、今回は許してあげます」
何も言ってないよ!?
「いや、どうぞ帰って下さいって言ったんだけど」
「ふふ、圭さんは天の邪鬼ですから」
めっちゃ前向きな。
「けど、許すのは今回だけですからね」
「許すも何も……」
「さ、ゆっくりお風呂に入ってきて下さい。着替えは脱衣場に置いときますね」
あ、本当に帰るのやめたんだ。
……そういえば、あの二人はどこ行ったんだろ。帰ったのかな。
まぁいいや。今日は風呂入ってゆっくりしよう。
色々と強引すぎました…。
でも、強引にでも山場を作った方がいいのかなぁ…とも思ったり。