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side メフィスト (1)

 ――こんなに酷いとは思わなかった。


 確かにメフィストが気を失ってる間、命が危なかった話は聞いた。

 でも実際目にするまで、ちょっと痛かったくらいの認識だったのだ。


 心臓を抑えたまま、もがき苦しむレヴィンの姿に何もできないメフェストはただおろおろするしかできなかった。


『なんで僕の意識が戻ったのに、治らないの?

 もうちゃんと魂と身体も定着してるはずなのに!』


『……お前がわからないことを俺がわかるわけがないだろう……。

 心配するな、痛みには大分慣れた』


 そう言って、髪をかきあげてベッドから起き上がる。

 息を切らせて全身汗びっしょりなのに無理をして立ち上がる姿はどうみても大丈夫とはいいがたい。


『いや、慣れるもんじゃないでしょ痛みって。

 ちゃんと寝てなよ』


『……やらないといけない事がまだある。それに』


『それに?』


『セシリア様の笑顔を思い浮かべればこのような痛みなどなんともない』


 ふふふと、頬を赤く染めて汗だくでいうレヴィン。


『……』

『………』


 しばし無言で見つめあったあと


『うわ、ぞわっときたっ!!過去一、ぞわっときたっ!!

 すごい、超気持ち悪いという言葉じゃ形容しがたいなにかが全身駆け巡った!』


 メフィストがレヴィンから超距離を取って言う。

 その姿にレヴィンが『それほどでもない』と嬉しそうに答える。


『ねぇ、君何なの、マゾなの、それともマゾに見せかけたサドなの』


『性癖の事を聞いているなら、状況による』


『いや、真顔で答えないでよ。マジで何なの君、もう本当』


 ドン引きしているメフェストに勝ったと言わんばかりににやりと笑うと、ベッドの横にあった本を手に取ると読み始める。


 けれど手は震えていて、とても本を読める状況でないことは、メフィストでもすぐわかった。


(なんだよ、僕に気を使って無理なんてしなくていいのに)


『なんの本読んでるの?』


『魂関連の魔術書だ。お前がわからないなら調べるしかないだろう』


『やっぱりそれ墓泥棒した本?』


『しつれ……いでもないか。確かに、古代遺跡を漁って発掘されたものなのだから、その遺跡が古代の墓ならそうなるかもな』


 と、レヴィンが苦笑いを浮かべた。


『最近の人間の書いた本なんてでたらめばっかじゃん』


『……1000年前の古書が最近……か。やはり悪魔は感覚が人とは違うな』


『そうだよ僕はいっぱい生きてるんだから。

 あ、そうだ!そんな本よりいいもの知ってるっ!』


『いいもの?』


『まだエルフが地上にいたころの遺跡さ。海底神殿。

 引きこもりだった海底のエルフがうっかり滅んじゃったんだ。

 彼らは他と交流なかったから他のエルフは海底エルフの存在すらしらない。

 知ってるの僕くらいじゃないかな。

 ちょっと待ってて、そこ、保全システムは動いていたはずだから、そこから本持ってくる』


『……エルフが地上にいた、海底神殿の滅んだエルフ……歴史家が聞いたら泣いて喜びそうな情報だな』


 頭を抑えるレヴィンにメフィストは嬉しそうに笑う。


『そうだよ。封じられる前の情報ならいろいろ知ってるんだ。僕だって役立つだろ?』


『ああ、そうだな。では待たせてもらおう』


 そう言って枕に体を預ける。

 辛そうに眼をとじると、息を整えているのがわかる。


(やっぱり休みたかったんじゃないか、僕の前で無理なんてしなくていいのに。

 これなら、面と向かって責めてくれたほうがよっぽど、気持ちが楽だ、もう本当むかつく)


『神殿まではひとっとびですぐ行けるけど、データを君にわかる形式に直すのに時間かかると思うからゆっくりしてて』


『ああ、では寝てまとう。それと魂と身体の定着の力とやらを送るのを忘れるな。

 いくら理由がわかったとはいえ、もうさすがに死ぬのはごめんだ』


『わかってるって!じゃあ行ってくる!』


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