1話 貴方のために復讐という名の花束を(1)
貴方に愛を捧げましょう。
たとえそれが一方的な恋慕だとしても。
貴方の功績を全て奪い貴方を死に追いやったあの愚かな偽の『金色の聖女』に制裁を。
生きていた事を後悔するほどの絶望と苦しみを。
――私はそのためだけに悪魔に魂を売ったのだから――
★★★
「セシリア様、目が覚めましたか!?」
顔を覗き込んできた神官の声で『私』は目を覚ました。
見慣れぬ装飾の部屋のベッドの天蓋が視界にはいり、神官達がずらりとベッドの周りを取り囲んでいる。
「……ここは?」
かすれた声で神官達に尋ねる。
自らの口から洩れた女性のその声に私は目を細めた。
「毒を飲んで瀕死の状態だったのです!おぼえていらっしゃりますか?」
そこで『私』は理解した。
『彼女』はやはり死を選んだのだと。
『彼女』の体に『私』が乗り移ったということは――彼女は私が渡した毒薬を飲んだのだろう。
理由を聞かず毒を用意してほしいと懇願してきた『彼女』の儚げな笑顔を思い出し、苦笑いが浮かぶ。
こうなることを予測していたのに防げなかった。
ただ渡した毒を使う相手が彼女自身ではないと祈ることしかできなかったのだ。
貴方が死を選んだというのなら、私は貴方を死に追いやった者の全てに滅びを与えましょう。
『彼女』が死を選んだ今、『彼女』を虐げていた者全てに、肉体的にも精神的にも苦しみを与え生きていた事すらを後悔させる事の出来るのは『私』だけ。
「あなたたちは一体誰? 服装からすると神官のようですね」
『私』の言葉にその場に居合わせた神官達が顔を見合わせる。
記憶のないふりに神官達が困ったような顔をしたあと、慌て始めた。
さぁ、復讐をはじめましょう。
それがたとえこの体の本来の持ち主の『彼女』セシリアが望まぬことだとしても。