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序 復讐の炎

 さて、自分自身プロローグの様なものをしっかり書いたのはこれが初めてなので、なかなか勝手が分からず苦戦してしまいました(笑)


 温かい目でお読みください(笑)


 感想などくれると非常に嬉しいです。

 どんな些細な一言でも良いのでいただけたら励みになるなぁ~~~(笑)


 では、どうぞお楽しみください!

 朝、突然の轟音とともに俺は目覚めた。地面が揺れている。


 地震か?


 そう思ったが、窓の外を見てそれは間違いであると気が付く。そこにあったのは、見慣れた街並みではなく、灰色の煙と炎、そして瓦礫の山。あまりにも変わり果てた街の姿であった。


 「なんだよ、これ……なんなんだよっ!なにが起きているんだ!」


 昨日まで、なんてことは無い穏やかな日常だっただけに、今、自分の置かれている状況に混乱してしまう。


 「レオ!!」


 そのとき、勢いよく部屋の扉を開けてきたのは親父だった。額には大粒の汗が浮かび、息も荒い。


 「ここはもうダメだ!早く逃げるぞ!」


 「逃げろってどこに!?いったい何が起きているんだよ、親父!」


 「なにが起きているのかは俺にもわからん!ただひとつ言えるのは、ここが何者かに攻撃されている、ということだ!もはやこの街に安全な場所はない!逃げるんだ!」


 「だから、どこに!」


 「当てがあるわけじゃない。だが、この街に対する攻撃は、西の方角にあったシュウェルッ光化学研究所のあたりから始まった。おそらく今はもうホーキング通りのあたりまで進攻しているはずだ。時間が無い。とにかく、東へ向かうんだ!」


 東の方角にはたしか“特殊錬金術師養成機関”と呼ばれる、大きな学校があったはずだ。そこまで逃げればそこにいる軍事部隊が俺達の事を守ってくれるかもしれない。


 「わかった。東へ向かおう」


 俺の理解が得られたことを感じた親父は大きく頷く。


 「よし。さあ、時間が無い。行くぞ!」


親父はそう言って、玄関へと向かう。俺もその背中を追う。すると、刹那、何かが焼けたような匂いが俺の鼻をつく。これは硝煙の匂い…だけじゃない。不吉な予感。背中に汗がたらりと流れるのを感じた。


親父も扉の前で一つ大きく深呼吸し、心を落ち着けていたが、意を決したようにドアノブに手を掛ける。


「レオ、準備はいいな?家を出たらなにも考えず東へ走れ。行くぞ!」


 扉が開かれ、親父が家から飛び出した。その背を俺も追いかける。家を飛び出した俺は、尋常ではない熱気を感じた。火事が至るところで起きている。今は夏でもないのに、40度はあるんじゃないか?熱気のためか、はたまた緊張によるものか。喉が急速に渇いていく。呼吸も苦しい気がしてきた。だが、足は決して止めなかった。ここで足を止めてしまえば、死神に追いつかれてしまうような気がして、夢中で足を動かした。


 その道中、見た光景は生涯忘れようもないだろう。


 立ち上る黒々とした煙と、燃えさかる炎。


 混乱に陥り、逃げ惑う群衆。


 爆音とともに、粉砕される家々。


 その瓦礫の下敷きになり、一瞬でその生を終える者。


 悲鳴。絶叫。嗚咽。


 五感で捉えたものすべてが、ここが“地獄”であると俺に伝えていた。


 怖い。一刻も早くこの地獄から抜け出したい。


その一心で、どれだけ苦しくても、どれだけ足がつりそうになっても、ただがむしゃらに、親父の後を追った。


だが、大人の親父のペースは、まだ十五になりたての俺にはかなり速かった。懸命に親父に置いて行かれまいと足を動かしていたが、荒れた石畳に躓き、転んでしまった。


 「おい、レオ!大丈夫か!」


 後ろで俺が転んだことに気が付いた親父が俺の元へ駆け寄ってくる。


 「ああ、大丈夫だ…それよりも走らないと……」


 心配そうにこちらを見る親父にそう応えながら、なにげなく俺は振り返った。


 男がいた。


 黒の法衣を羽織る、黒い長髪の男。まだ距離は遠い。


 しかし、男は殺気が全身からにじみ出ていた。あの男は紛れもなく俺たちを殺そうとしている。


 男は、俺に存在を気づかれていることが分かっているはずだが、あくまで悠々と、道の真ん中をこちらに向かって歩いてくる。


 親父もその男に気が付いた。


 「レオ、逃げろ…あいつは相当手練れだ…。俺が食い止める。その間に逃げるんだ、いいな?」


 親父は腰に携えた長刀を抜刀する。刀身が炎の煌めきを反射させ、美しく輝く。


 対して、黒の法衣を纏った男は、前髪が目に掛かるほど長く、表情は伺いにくい。だが、親父のことを視界に捉えていることは分かった。その歩みはあくまでゆったりとしている。この戦場にあって、これほど余裕を見せていられるとは…。


 だが、それは俺の親父も負けていないと思う。力みなく長刀を構える姿は、覇気に満ちあふれ、隙が無く、敵の動きの一挙手一投足に至るまで神経を張り巡らしているのがこちらにまでビリビリと伝わってくる。


 ―どちらも今の俺が到底手出しできるレベルにはいなかった。


 悔しいが、いまここで俺にできること。それは“逃げる”こと。それしかない。ここにいても親父の戦いの邪魔にしかならない。なにもできないだけならまだしも、親父の戦いの足かせになることだけは絶対に嫌だ。


 そう決心した俺は、黒の法衣を纏った男と対峙する親父に向かって言った。


 「親父、頼んだぞ。あんなクソ野郎さっさと倒して、追いついてきてくれ」


 「ああ……任せろ!」


 口元に笑みを浮かべ、そう力強く応える親父。


 その様子に安心した俺は、一つ頷き、再度走りそうとしたそのときだった。


  ボン!という爆発音が聞こえた…と思ったその瞬間。俺の身体は爆風に舞い、吹き飛ばされていた。


 「ぐっ…がはっ……!!」


 石畳の上に強かに打ち付けられ、息ができないほどの痛みに襲われた。


 ―いったいなにが起きたんだ……?


 俺はそう思い、顔を上げると、そこには親父だったものがあった。いや、もっと正確に言えば、親父のことを構成していたであろう、黒く焦げた肉片と長刀のみが、爆発によってめくれ上がった石畳の上に無機質に存在していた。


 つまり、親父は死んでいた……。


 あの一瞬で、親父は死んだのだ。


 「お…おやじ……おやじぃぃぃい!!」


 俺は絶叫した。血が沸騰するほどの怒りが全身を貫いた。不安や恐れなどが一気に吹き飛んだ。


 ―このクソ野郎をぶっ殺す!!


 怒りに支配された俺の身体は、気が付くと石畳を蹴り、黒の法衣の男に飛びついていた。


 「……オモシロイ」


 黒の法衣の男が微かにそう呟いたのが俺の耳に届いた。だが、その言葉を頭で認識するよりも速く、下腹部に強烈な蹴りを見舞われ、壁に叩きつけられる。


 「ぐはッ……!!」


 ボギッという不快な音が身体の中で響く。どこかの骨が折れたのかも知れない。だが、そんなことはどうでも良かった。こいつは、俺の親父を殺したんだ。ゆるさねえ。絶対にゆるさねえ。絶対に殺してやる!!


 怒りに任せてもう一度飛びかかろうと身体に力を入れるが、まったく動かない。だが、俺は諦めなかった。足が動かないのなら、手で絞め殺す!手も動かないなら口でかみ殺してやる!!


 そう思い俺はまだ感覚の残っていた両腕で這いずるようにして黒の法衣の男に近づいていく。


 「…ごろすぅ…ぜっだいごろじでやるぅ!!」


 俺はそう叫びながら、黒の法衣の男のもとへ近づいていこうとしたが、もう一度、今度は顔面を強烈に蹴られ、ぼろぞうきんのように壁にぶち当たった。


 「…っぐがッ!!」


 「これで少しはおとなしくなるか?」


 男は低い落ち着いた声でそう呟くと、俺の髪の毛をつかみ上げ、壁に押さえつけた。


 「……ふう……ふう…お、おどなじくなんかなるかよ…くそが…死ね」


 吐き捨てるように俺が言うと、男は長い前髪の奥に潜む瞳で、まるで俺の中をのぞき込むように見つめてくる。


 「…俺が憎いか?」


 「ごろす…!!ゆるさねぇ…ぜったいにゆるざねぇ」


 「そうか。俺が憎いか」と男はなぜか少し嬉しそうに呟き、そして、言葉を続ける。


「だがな、お前はまだなにも分かってはいない…。今、ここでお前の父親があっけなく死んだことも、今ここでお前がこうしてぼろぞうきんのように這いつくばっているのも、すべては俺のせいである、そう思っているのだろう?だが、違う。ここで起きていることのすべてがこの世界の因果律によって導かれた、絶対不可避の出来事であり、俺はそのための駒に過ぎない。もちろん、この一連のテロはすべて俺が仕組んだものだ。そして、この先のプランもすべて俺の想像通りに事が運ぶだろう……。すべてが俺の意のままに運ぶ。だが、それさえも、この世界の意思だとしたらどうだ?この俺が……」


「ごちゃごちゃうるせえよ……お前は絶対に殺すと決めている。だから、殺す。それだけだ…」


 俺がそう言うと、男は言葉を紡ぐのをやめ、なぜか嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。


 「素晴らしい……君のそのまっすぐな殺意。身震いするよ。そして、俺は人から向けられる殺意が最高に好きなんだ。特に、その君の眼。まっすぐなその瞳に見つめられると、ゾクゾクして最高に気持ちが良い……」


 舌を出し、恍惚とした表情の男。


 それを見た俺は再び、こんな人殺しを快感に感じるクソ野郎に親父を殺されたことに対する激しい怒りがわき起こり、我慢できなくなった俺は最後の力を振り絞る。


 「おまえ……ふざげるのもいいかげんに…」


 「だから、この目、もらうよ?」


 「は……?」


 男の手が俺の目の前に来たと思った刹那、どろりとした液体が右目から流れ出しているのを感じる。見ると、男の手には血にまみれた球体がある。


 ―それは俺の眼球だった。


 「うぐぅぁぁぁあ!!」


 焼け付くような激痛に俺は叫び声を上げ、のたうち回る。


 そんな俺の様子を楽しそうに見下ろす男。


 「くくくく……痛そうだ。とんでもない激痛だろう?よく意識を失わずにいられる。大抵目玉をくりぬかれた人間はショックで気を失ったりするんだが…どうやら君は不幸にも頑丈に身体ができているようだ」


 痛みのあまり息もできず、言葉もでない。だが、意識だけはかろうじてこの男への怒り、憎しみによって保つことができていた。


 親父を殺したこの男にだけは負けたくないのだ。どれだけいたぶられようと、どれだけ侮辱されようと、俺は親父の息子であるというプライドに掛けて、最後の瞬間まで屈さない。そう決めていた。


だから、俺はあらんかぎりの憎しみを込めて男をにらみつける。


 だが、そんな俺の殺意のこもった視線を受けても、男は実に嬉しそうに笑みを口元に浮かべる。


 「ほう……片目になってもそんな顔ができるものか!!オモシロイ…たいしたもんだ。なら、もう一つの目も奪って……ん?」


 俺の残りの左眼を奪おうと手を伸ばしていた男だったが、何かの気配を察したのか東の方角に目を向けた。


 「ようやくお出ましか……」


 小さくそう呟くと、男はなめらかな所作で立ち上がり、無造作に俺の顔面へと蹴りを入れた。


 「ぶふっ……!!」


 大量の鼻血が吹き出るのが分かったが俺にはもはや指一本動かす力も残っていない。だが、俺は左眼で男を睨むのをやめなかった。


 「くくく……その殺意に満ちた目が気に入った。いつかまたどこかで会おう、少年よ……くくく」


 楽しくて仕方が無いかのような、それでいて悪に満ちた笑みを浮かべ、なぜか立ち去っていく黒い法衣の男。俺の親父を殺した憎き敵。


 悔しくて仕方が無かった。あんなクソ野郎に、あんなに簡単に親父が殺されたことも、そんな憎くて憎くてしょうが無い相手に手も足も出ず、ただオモチャのようになぶられ、ここで這いつくばっていることも。


 自分の非力さ、世界の理不尽さがただただ憎かった。


 「……くそぉ……ぢぐしょぉぉぉおおお!!」


 痛みなど忘れ、この炎逆巻く地獄の中で、俺は泣き叫び続けた……。






 俺は特殊錬金術師養成機関からの援軍にまもなく保護された。あの男が立ち去ってすぐのことであった。


 それからのことはほとんど覚えていない。


 血を大量に失っていた俺は、保護された後、すぐに気を失って、生死をさまよっていたらしい。


 だが、懸命な医師達の施術によって俺は一命を取り留める。


 ―奇跡。


 俺の治療をした主治医はそう表現していた。


 さらに主治医はこう続けた。


 ―命が助かったということもそうだけど、なにより試作品がこれほどうまく機能してくれるとは思わなかった。ただし、これはあくまでも秘密でたのむよ?それがどれだけの価値があるか、君には分からないかも知れないが、この噂が世に広まれば君の命は世界中から狙われることになるかも知れない。だから、はやく、君自身がその力を使いこなせるように強くなるんだ、いいね?この世界のだれよりも強くなるんだ。


 主治医である彼女の言葉の中には、その時の俺にはあまりよく分からないこともたくさんあった。


 だけど「強くならなくてはならない」。


 その言葉だけは俺の中に深く刻み込まれた。


 ―強くなり、あいつを殺す。


 そう心の中で誓うと右目が熱を帯びた気がした……。


いかがでしたか?


感想いただけたらなぁ……いいなぁ……などと妄想をはかどらせながら眠りにつきます。

皆様、良い夢を。


おやすみ。

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