Party Hard ⑤
Twitter 青銅像@小説家になろう @inutocuma
ユピはいつものようにまた忽然と姿を消していた。彼女専用ゲストルームと自分で決めているらしいセイント・ジョンの収集物やサングレの秘蔵のガラクタ倉庫を覗いたら、あの忌々しい黒い小箱と共に書き置きが置いてあった。
「あとは任せた。」
サングレは湯上がりの火照った身体にシャツとコスチュームとしている赤黒チェック柄のフードつき外套を羽織り、ポケットにそれを押し込んだ。
「風呂長げぇんだよ。」
背後からセラフの声がした。
「行こうぜ。」
「ああ。」
4人で乗り込んだ車は普段からうら若き乙女を乗せることなど想定すらしていないので、車内でジョンが食い散らかしたホットドッグの残骸、飲み捨てたコーラの缶などが散乱してニンニクを燻したような物凄い良い芳香がした。
たまらずセラフが助手席の窓を全開にした。
「うぇっほ!地獄よりひでぇ!!」
「この前ローン払い終わった新車だぞ?」
サングレは久しぶりの運転にぷるぷる手を震わせてハンドルを握りながら返した。
「ごめんよ、片付けようにも買い物行くの夜だから暗くて分かんないんだよね。」
真後ろでくぐもったジョンの声がした。「サブウェイ」の袋に2つ穴を開けたいつもの奴を被っていた。
「昼は人多いからな。」
「違うよ!明るくて広いのが嫌なの!!」
サングレの余計な一言にジョンはむきになって応じた。例によってクトゥーグァッは面白そうにコロコロ笑った。
「あ、そこの角右です。」
大まかな場所は聞いていたものの、近くに住んでいながら全く接点のなかったビル街の一角に目的地は存在し、クトゥーグァッの細かい指図で進むのは骨が折れた。
「早くカーナビ買えって。」
セラフが言った。
「…機械に行き先指図されたくないんだよ…」
サングレは声を低くして答えた。
車内が重いムードになったので彼はいきなりクラクションを鳴らした。
「なんでキレんだよ!?」
前の車が慌てたように左右に揺れるのを遠い目で見ながら彼は緩くブレーキを踏んだ。
「ここか…。」
大理石のモニュメントに真鍮のプレート、「ニューアーカム・エンタープライズ」と銘打たれていた。




