Party Hard ④
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翌朝、サングレはがめつくもあの後二杯目のトマトスープを要求し、それを飲みつつこの事件の首謀者のところへ案内する、等と申し出たクトゥーグァッにバスルームの前で鉢合わせた。
「お早うございます!」
「…風呂入ったの?」
「いえ、水は大っ嫌いですので!」
その割にはやたらサラサラした滝みたいな長髪を人差し指で巻き取りながらにこやかに笑うクトゥーグァッだった。
「…普段どうしてんだよ…?」
バスルームの戸が開いてセイント・ジョンが腰にタオルを巻き、太鼓腹を剥き出しにして出てきた。全身から蒸気機関みたいな湯気が吹き出ていた。
「サングレ!あの石鹸やっぱり僕の肌に合わな…ワーオ!」
彼は挙動不審に少女の方を見て目を泳がせると回れ右してまっすぐ歩いて行った。
クトゥーグァッはクスクス笑いが止まらないようだった。
「もう10時頃だろ…?」
サングレは頭を抱えた。あの後風呂に入る間がなく安ワインをしこたま飲んで無理やり寝たので頭痛がした。外からガラガラいう尋常ではない音がして彼の様々な理由で痛めつけられた頭の神経を逆撫でした。
ドアノブがガチャガチャ言い、やがて怒ったように叩く音がした。
「今開けますよ…」
サングレは監視カメラの画面を見て玄関のドアを開放した。
バァンとドアが開いて豊かな赤い髪と真っ白な大僧正のような衣装が目に飛び込んできた。
ジャスティス・ヒーロー、もといヒロイン「セラフ」の予告なしでの家宅捜索だった。
「なんだよ、あの空き缶繋げたやつ!転んで手首捻ったろうが!」
かなり幼げに見える顔を歪めてご立腹だった。
「ああ。近頃色々物騒だからな。」
クトゥーグァッの方をちらっと見て言った。
「ていうか今までと口調変わってない…?」
「気づいたか?まだ設定が固まってなかったんだよ。」
「設定とか言うな!」
そんな問答をやりつつ危なっかしい要素をいなしつつ、セラフはもう一人の少女を気づいていないみたいにスルーして階段の方を覗いた。
「ジョンは?」
「今着替えてる。それよりセラフ、紹介するよ。クトゥーグァッだ。」
セラフは改めて銀色の髪を柳の枝みたいに垂らした少女の顔をまじまじと見つめたあとブッ壊れた。
「とうとう小児性愛に走ったかお前!」
彼女はサングレの首根っこを掴み喉仏から圧断を試みた。
「分かったわかった!後で説明する!まず風呂に入らせろ!」
「待って。」
セラフはポケットから純白の、金銀のビーズでデコレーションされたスマートフォンを取り出した。
「アムネスティに連絡する。」
「Waaait!呼ばれると実際ヤバいからー!」
「アハハ、可笑しい!」
当のクトゥーグァッは腹を抱えて笑い、涙さえこぼして言った。
「じゃあ、サングレさんがお風呂終わったら行きましょうか。」
「どこに?」
「敵の所だ。」
セイント・ジョンがいつになく真剣になったのか、こないだ通販で買ったスターウォーズのコスプレ衣装を着こんでやって来た。
「敵」の一言を聞いてセラフの目付きは変わった。重々しく口を開いた。
「ついて行っていいか?」
「ああ。いいけどまず風呂に入らせろ。」
サングレは言った。




