Party Hard ②
小刻み投稿になって申し訳ないですm(__)m
神秘的な赤い紋様の浮かび上がった黒い小箱を押しつけあい、押し問答をしているうち狭苦しい半地下の部屋が朱に染まった。
「何!」
時代遅れなパトランプが回転し、耳につく警報音が鳴り響いた。
サングレはデスクに備え付けのコンピューターに飛びついた。
「不正アクセス侵入!?」
彼は画面を見て動転した。
「Hey,セイント・ジョン起きろ!」
セイント・ジョンはカウチポテトよろしく薄手の毛布にくるまりソファーの上でゴロリだった。
「おいおい、なんか良くないもんがアンタらのロボに入って悪さしてるってよ。」
ユピがブヨブヨしたジョンの肩をつねりながら言った。
「…起こさないでよ…今彼女に"入れる"とこなんだ…」
「あ、そう。」
ユピは手を離して「やれやれ」のジェスチャーをした。
「Damn!」
キーボードをガチャガチャ言わせてマウスを放り投げ、サングレは上着を羽織ってラボの外へのほんの数段の階段を登った。
「どこに行くんだよ?」
「外!」
彼は彼女に答えた。
10月のニューアーカム・シティは本格的に冷え込む前だとは言え、夜2時の冷たい風は肌に凍みた。
サングレは無言でついてきたユピを伴ってビルの外を迂回し、人型決戦兵器「コンキスタ」の格納倉庫へと急いだ。
「あいつのシステムに侵入するとすれば倉庫のコンソールから直接アクセスするしかないんだよ。ネットワークからは遮断されてるからな。」
早歩きしながら彼は早口で言った。
「ああ、アレだろ?エロサイト経由でウイルス送られてえらいことンなったから…」
「うるせーバーカ!」
倉庫のシャッターはちょうど屈めば入れるくらい開けられていた。錠前と鎖には何か高温で焼き切られた痕があった。
お先にどうぞと言わんばかりの態度でユピが直立不動で立っていたので、仕方なくサングレは先陣を切って街灯の灯りの届かない倉庫の中へ屈み入ろうとした。
「…………。」
怖いので素直にシャッターを全開することにした。
「逃げられるかもよ?」
「ほっとけ。」
言いながらサングレはささっと物陰に隠れた。
小さいゴミ箱の死角にユピがくっついて入ってくるのにイラっとしながら彼はリモコンを出し、シャッターに向けてスイッチを押した。
格安で発注したどこの国製だかも分からないシャッターが、深夜の街に盛大な騒音を響かせて上がった。
夜の光に艶やかな光沢を反射して光るコンキスタの機体があらわになった。
二人はものも言わずゴミ箱の陰から出て倉庫内に立ち入った。サングレは懐中電灯でコンキスタ脚部の隅に隠れたつもりだったのか、急に入ってきた外気に身を震わせながら縮こまっていた一人の少女を照らした。
その服装はサングレの知りうる限り世界で最も「poor」という単語がしっくり来る印象だった。少女は言った。
「あの…温かいスープ、貰えますか?」




