消化
「食事中ごめんねごめんねー。」
あの冴えない住職(もとい変態坊主)が段ボール箱を抱えて食卓に乱入してきた。豪快に皿を押しやるとテーブルの中心にどっかり据えた。
「おいこら!」
マライアが目の色を変えて怒鳴りつけた。
俺は「押さえて押さえて」とジェスチャーで彼女に示した。爺がそれを見て首をかしげた。
「こき使っちゃってごめんなさいね。」
アナトリアは箱の封を切るのを手伝いながら気遣うように言った。
「いいんです。こういう性分なもんで。」
と頭を掻きながら住職は答えた。
「ひょっとしてお坊さんMですかぁ?」
と代耶が酒が入っているわけでもあるまいにオヤジみたいにはやし立てた。
「代耶!」
俺は思わず激昂した。
「おーすっげー!」
ユピが箱の中身を見て歓喜の声をあげた。俺も続いて中を見ると仰天した。ぎっしり詰まったそれらは黒いプラスチック製のチープなおもちゃかと思いきや重厚感のあるテカりや細部に至る精巧な造りは、実際の殺傷力を備えた本物の銃器であることを示していた。
「リボルバー触んの久しぶりだぜー。」
ユピは一つを手に取り、クルクルと回してから天井に向け何のためらいもなく引き金を引いた。
鼓膜をつんざく轟音が鳴り響いてしばらく放心状態となった。
「くるぁあ!持ってくる前にちゃんと確認しとけぇ!」
マライアが住職の服の襟をひっ掴んで怒鳴り散らした。
「ごめんよぉ許して…。」
涙ぐみながら彼は謝罪した。
「やれやれ…」
俺はため息をつき、箱の中身をもう一度改めた。これで闇の帝王に立ち向かえってか?
何かが中でうごめいていた。黒と黄色のまだら模様、オオサンショウウオの精霊が再び姿を現していた。ハンバーガーみたいなガマ口をこじ開け、自動式小銃をまるかじりしていた。
「うごごご…」
どういう構造をしているのか頭の後ろ側に銃口の形が飛び出していた。
「危ない危ない、」
シャムスが代耶を庇って後ずさった。
バリバリと咀嚼する音が聞かれ、飲み込んでしまったのか大口を開けてニタニタした。
「サラマンダーだね。珍しい。」
住職がようやくマライアのヘッドロックから逃れて一声を発した。
「サラマンダー?じゃあサラミちゃんですね。美味しそうだし。」
代耶が〆に納豆をかき混ぜながら言った。美味しそうってこいつがか…?
目を引く毒々しい色をした身体はさっきと比べて一回り大きくなっていた。




