奇襲
まだ続くマン(@_@)
「非尚満」と別れ、しばらく店内でくつろいだあと夜まで時間があったので街中を散策することにした。
尚満は年明けのダウンタウンみたいに妙に晴れやかでウキウキしていて正直気持ち悪かった。
「どこかメシ行く?そういえばもう食ったんだっけ?あの緑のパン巻いたやつ。お前緑好きよな~!」
彼の額を上からペーンと叩いて言った。
「つーかスタバ割り勘だったな!」
キョドつくきゃつの面に怒声を浴びせた。
「えー!いや、あそこでおごって欲しかったん…ので?普通に財布出したから…て言うかどうせおごるならこれっていう場所で…」
「なろう小説の主人公みてぇだな!」
再び彼のドタマにツッコミを振り下ろした。
どれだけ気が利かないのか。たぶん系統で言えばハーレム系の奥手タイプの主人公だった。
…とりあえず有名なお城とか、観光スポットを見て回りたかった。この哀れな器用貧乏系恋愛乞食を情報収集の役に任ずることにした。
数分後彼は白い息を吐きながら帰って来た。
「駄目だ代耶!公園の入り口とか色々聞いて回ったんだけど!」
「どうだったんですか?」
「皆に同じく言われた!え!?今の時期?なんも見るものねぇよ!って。」
「……。」
一応調べた限りでは東北屈指の観光都市という感じだったがこういうもんだろうか?
雪もひどくなってきたのでとにかく建物の中に入ることにし、駅前の方まで少し歩いた。
「あそこがいいんじゃないか?」
尚満が差した。かなり古い洋館を手間をかけて改装したと思われる、観光会館だった。
「今日開いてるんですか?」
と私は疑問を口にしたが尚満はどこ吹く風だった。
「何言うてるんだ、開いてるがな。」
確かに門の前には本日開館日の表示が出ていたが扉の片側には板が打ち付けてあった。
「……。」
ズンズンと雪を踏んで歩いていく彼を黙って追っていった。
中は普段は定期的に何らかの催し物をしているらしく、ポスターやパンフレットが山積みだった。
今日は特にイベントもないらしく閑散としていた。
「あったかいな。代耶、ちゃんとドア閉めぇ。」
かなりムッと来て私は、扉を力任せに押した。
ガタン、と何かが落ちるような音がした。
「何だ、カフェがあるのか。」
尚満の視線をたどると大広間の一角に、三角形の看板を出したカフェらしき店があった。
照明がやたらチカチカする薄暗い屋内、かなり明るいのに何故気づかなかったんだろうと思った。
店員は二人でどちらも男、一人はかなり若く右目に眼帯をあて、もう一人はかなりの重量級の体型で右腕を包帯でグルグル巻きにしていた。
ヤバそうな雰囲気はこの鈍感な男にも伝わったのか、一気にこちらへ駆け寄ってきた。
「代耶!何あの人たち怖い!」
「ヘタレか!」
私は扉を押して外に飛び出そうとした。扉は頑として動かなかった。
「ハメられたーーー!」
二人して彼らがただ近づいて来るのを黙って見ているしか出来なかった。




