ready to die ⑤
男臭ぇな!
…何か凄い悪夢を見た気がして、自室のベッドで目覚めた時には汗グッショリだった。
「風呂…。」
冷却剤と包帯が巻かれた頭部を押さえながらサングレは身体を引きずって行った。
部屋を出ると今すぐに入浴しようという計画を変更せざる負えなくする薫りが漂っていた。
薄暗い半地下に造られたラボ内のお馴染みの研究室兼ロドリゲス家の食卓がある一室に入っていった。
セイント・ジョンが大鍋で「サッポロラーメンみそ」を3~4人分まとめて茹でていた。
「あ、そろそろ起きてくると思ったよ。」
彼は近々100kgオーバーするに違いない巨体を揺すりながらコップを持ってきた。
「コーラ飲む?」
「いや、ビールがいい。」
セイント・ジョンから渡されたコップを持っていると小麦色をした泡立つ液体がゆっくりと注がれた。半分以上も持ちこたえられず、途中で口に運ぶと一気に飲み干した。炭酸がヒリヒリする喉に焼けついて思わずえずいてしまった。
「大丈夫?」
心配する友人をよそに向き合った席にドサッと身を落とし、フォークで直接ヌードルをすくって食べ始めた。塩分とカロリーが見に染みて分かるほど吸収されていった。
「ここまで君を運んだのはセラフだよ。次に会ったときにはちゃんとお礼言わなきゃね。」
「…ああ、そだねー。」
ガンガンする頭であそこで起こったことを説明する文章を創造する気が起こらず、彼はなげやりに言った。
「コンキスタを操縦して運んだのはボクだし。ヒーローが任務中に意識を失うなんて、あったらいけないんだから。まったく。」
みるみるなくなっていくヌードルに慌てて自分の分をかっさらいながらサングレは、あの女は一体どういう説明をしたんだろうと思った。
コンキスタのメンテナンス代はおろか、テキサスかフロリダ辺りで一生食うに困らない悠々自適な生活を送れる程の大金を手にするはずだった証はどこかに行ってしまった。
ビール一杯で顔を真っ赤にしてふらつき始めたセイント・ジョンを見て、サングレは彼に絡んだ。
「ビールでそこまで酔っぱらうなや、ガキか?」
「ああに!?ウイスキーらってろめるぞお!」
ジョンは茶色い液体の入った小瓶を持ってきた。ビールを飲み干したコップにちょろっと注いで、
泡立つコーラを上から一気にぶちまけた。
「Hey!Hey!」
泡が堤防を決壊してテーブルの上にこぼれた。
「ベトつくんだからな、それ!」
サングレの声を一言も聞かず、ジョンは一気に飲み干した。眼をくるんと下から上に廻したかと思うと、ソファーに倒れこんでイビキをかきはじめた。
「まったく…。」
サングレは彼に毛布を掛けた。スキンヘッドでビール腹を剥き出して眠るその姿はヒゲの生えた赤ちゃんみたいで、醜悪を通り越して不気味ですらあった。
背後でバァンと破裂音がした。
振り返ると旧ドイツ軍風軍服を身につけた少女が立っていた。
「あぁ…久し振り、ユピ。」




