恐怖の発見
会話文が多くなってきたので行数稼げました(笑)
違う。赤と青の光を瞬かせるそれは人工物ではないことが明らかな「もの」だった。
色がメチャクチャに塗られ、おぞましい狂気と恐怖が実体化したようなそれは全体的な雰囲気が人の顔に似ていた。
俺は「それ」を見上げる格好になっていた。腰が抜けていたからだ。
変な体勢で転んだのが運の尽きだった。絞められるのを待つ鶏みたいに脚が動かなかった。
「それ」は動いた。身体中に広がる模様が斑点になり、花火みたいに沸騰し、分裂して点滅した。
金具で固定されたように瞬きすら出来なかった。
「嫌だ!止めてくれ!」
瞬間空間が裂けた。
「なかなかしぶといですね…」
軽く聞き覚えのある声だということに気が付いたが、声がした方にはただ空虚があった。
「それ」は背後から振り下ろされた何かによって真ん中から凹んで、さっきは気付かなかったが腹部(らしき場所)には赤々した液体を流す穴が開いていた。
「逃がしませんからねー、いやだー何て言ったって…」
「あれ? そう言えば喋れたんですか…?」
抜けた腰を無理矢理嵌め込んで俺はすぐさま声がする方へ回り込み、見えないそれに飛び付き、頭から2番目の粉を被った。
日本人離れした大きな眼が目の前にあった。
「ぎゃあああ!」
「何ですか貴方は!」
つい数時間前常磐代耶と名乗った少女は絶叫して俺を突き飛ばした。「それ」の方に。
「!!!」
「待てまて待て!」
少女は手に持ったバール状のものに手榴弾状のものをくくりつけ始めていた。
「不審者はこいつをやっつけてから…」
「ちょっと待てって!」俺は常磐代耶に声を掛けた。
「何ですか、不審者さん。」
「それでこいつに止めを刺すつもりか? それを使ったらこいつはどうなる?」
「対象が炸裂☆四散します!」
「止めろ!」俺は叫んだ。
「お前この後どうするつもりだ? こいつの破片を部屋中にばらまいたら人が来るまでに処理出来るのか?」
代耶はニヤリと笑い、白い手袋をはめた片手をヒラヒラさせた。指紋は隠していると言いたいのだろうか?
「いやいやいや、そこじゃねえし!」
「お前夕方のニュース見切れてたから! 顔は良く映ってなかったけど!」
代耶の顔からみるみる表情が失せていった。
「あっでも!騙そうったってそうはいきませんよぉ! これを使ってたんですから!」
彼女はスカートのポケットから紙片を取り出した。見覚えのある太陽の意匠が見えた。
そのパッケージは俺が使っている緑のものではなく青だった。
「それ、テレビカメラとかには映っちゃうから。」
代耶はプツーンと糸が切れたようにフラフラと歩いて行くと、手に持ったものを振り回して暴れ始めた。
「うがぁぁぁ!」
「ヤケになんなぁぁぁ!」
その時再び「それ」が動きを見せたので俺は代耶の手を取って走り出した。
「待ってください!まだ人が!」
「案の定の展開じゃねえか! どこ!」
「一応屋上に全員寝かせて置いたんですが…」
「報道ヘリ時々来てるのに!? バカなの?」
凄い殺気を感じながら廊下を引き返した。