前哨戦
いつから投稿が午前中だけだと思っていた…?
シスター姿のその少女は、赤い外車のドアを開け予想以上に冷たくなってきた外気にたじろぐ俺達を一瞥すると踵を返して歩き出した。
「ちょっと!」
俺は引き留めようと声を掛けた。
そう言って車から出て、追いかけようとする俺を追い越してユピが猛然とダッシュしていった。
助走をつけてジャンプし、特撮ライダーヒーローさながらに飛び蹴りで少女の後頭部を狙った。
瞬間、彼女は振り返ると左手を突き出しユピの奇襲をなんなくガードした。
「はァァァッッッ!」
女はユピの脚に払いをかけ体勢を崩そうとした。
子供の喧嘩レベルでは決して起こり得ない、高度な格闘技術を駆使した乱闘が繰り広げられた。
ユピは黒い修道着姿の女の頭を肘で地べたに押し付け、そのシスター女は脚でユピの胴を挟み込み、両手で組み合っていた。
「はいはい、止め!止め!」
アナトリアが手を叩いて言った。
二人は立ち上がり、服の汚れを叩き落とすと何事もなかったようにあどけない少女に戻った。顔には傷一つなかった。
しばし握手を交わしたかと思えば、学校帰りの仲良し女子中学生みたいに和やかに言葉を交わしつつ建物内に入っていった。
「何なんだよ!?」俺はたまらずツッコミを入れた。
「尚満君、生きてりゃこういう不可解なことはいくらでもある。」
清川さんが深い声で言った。
「ないよ!」俺は言った。
「早く入りましょう。」
アナトリアは既に赤いコートを脱ぎ、小脇に抱えていた。
代耶は何かlineのメッセージが届いたのか、画面の上でどのスタンプを使おうか指を踊らせていた。
女というのはこれが普通なんだろうか…?
清川刑事が俺の肩をポンと叩いた。
アナトリアに続いて、歴史を感じる古びた寺院の中へ足を踏み入れて行った。




