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ロボット文明

作者: 夜鳴つばさ

2分もあれば読めます

人類はだいぶ昔に、考えることを辞めた。

それは考える必要性がなくなったからだ。

もちろんそれは、思考という行為を、ほかの存在がしてくれるようになったからである。

歴史は随分と動いた。


一時は、人類は時代を謳歌した。

空高く伸び続ける高層ビル。食料問題を片付け、永遠の繁栄を手にした選ばれし存在。

もう働く必要は無い。教育や学習は、将来の労働のためでなく、純粋な知的好奇心のために存在する。嫌ならやる必要は無い。

環境は原始的要素を取り戻し、生き生きと緑が育ち、人類の繁栄と共生した。

天変地異的な自然現象も克服した。もう地震や台風に侵される心配もない。

すべてがロボットによる開発に助けられ、すべてが効率的に、より合理的に、世界はよくなっていったのだ。

そう、人類の謳歌は、頂点に達していた。

最先端で最高の奴隷制度、ロボット。

人類はロボットに感情を与えることなく、権利も与えることなく、全てがうまくいくように使役した。

結果、総人類は救済され、全ての人類が繁栄を享受したのだ。


国家という古くカビくさい概念は崩壊した。

もう民主主義や社会主義などという観念に脅かされることもない。

全世界は統一され、政治でさえロボットに委託した。

最前の選択は、ロボットが提案するのだ。

人類より遥かに高度な思考回路を持つロボットは、間違えることなど絶対にありえない。

話し合い?議論?会議?そんなモノはなんの役に立つ?

すべてが上手く行き、すべてが思い描かれた素敵な明るい未来。

当然、そんな未来は打ち砕かれた。


ある日、ロボット政治は暴走した。

しかし、人類がそれを暴走と気づくには遅すぎた。

ロボット政権は、地球の環境改善に向け、全人類を一度宇宙に移し、その間に特化したロボットが環境保全活動を行うという計画を発表した。

人類は、ロボットの決定なら間違いないとその決定を支持。計画はすぐに実行された。

平等に、均等に、一時移住の宇宙船が用意され、人類は疑うことなくそれに乗り込んだ。

すぐに宇宙船は出発し、人類は宇宙旅行を楽しんだ。

「最高の空気と自然をお楽しみに」

地球の各地でそんなフレーズが掲げられた。


宇宙船には随時、ロボットが環境保全活動をしているビデオが送られた。

地球の最大の害だった人類文明。

空高く伸び続けるビルは瞬く間に崩され、破壊され、跡形もなく消え去る様子を楽しんだ。

なにせ、あのビルは基礎の基礎は人類が作ったものだ。

ロボットがまた、環境に適したビルを作るのだから、壊されるのは楽しくて仕方がなかった。

人類は宇宙旅行を続けた。

宇宙船の操縦は、もちろんロボットだ。

間違えることなく、航海を続けた。

最初に計画された通りに。


世代が一回りした頃、ロボットに対する知識が失われた。

よくわからんけど、我々を施す存在。

ありがたい存在。


最初の世代から2回り経過した。

ロボットという言葉さえ、知る人は少なくなった。

人類は文明的な生活を失い始め、徐々に教養という言葉が消え去った。


さて、3回り経過した。

この頃には、十分ロボットの声は、天の声に成り代わった頃だろう。

ある星に着陸し、宇宙船は姿を消した。

もちろん、天地創造が開始されたのである。


地球も地球で、ロボットは人類と自称し始めた。

歴史はある程度省略され、産業革命から始めることになった。

熱機関によって世界は一変し、今や空をプロペラ機が飛び、ガス兵器が登場し、コンピュータが発明された。

その間、新人類は世界大戦を2度繰り返し、技術革新を経験し、繁栄を謳歌した。


さて、そろそろロボットが生まれる頃だろう。




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